湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第8節(2002年7月13日、土曜日)

レッズ対ジュビロ・・(2-3、Vゴール!)

レビュー

 さて「J」。

 今日は、単車をドック入りさせていることもあって、クルマで移動することにしました。途中、乗用車6台がからむと大事故によって首都高速が通行止めという事態に遭遇してしまいます。仕方なく、渋滞している一般道へ。でも、そのこともあってグランパス対ジェフ戦のラジオ中継をジックリと聞くことができました。ニッポン放送、煙山アナウンサーと、解説をつとめた松木安太郎のコンビ。いや、面白かったですよ(結局グランパスが、ウェズレイのハットトリックもあって大逆転劇を完遂し、4-3でVゴール勝利!)。

 ものすごくエキサイティングなゲーム展開だったようで、その内容がよく伝わってきました。「これは、ワールドカップよりもエキサイティングなマッチだ!! これからはJリーグをスタジアム観戦しましょう。そうすれば、この迫力を生で楽しめるじゃありませんか!」。フムフム・・。

 彼らのダイナミックな実況を聞いていると、本当にスタジアムに行ってみようかナ・・なんて気にさせられるじゃありませんか。とにかく「J」がワールドカップのベースであることは確かな事実ですし、二人のアクティブな掛け合いからは、「J」を盛り上げようという熱気が伝わってきたものです。お疲れさま・・。

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 さて、レッズ対ジュビロ。この試合も、ワールドカップモード(時間を追ったレポート)で書くことにします。

 開始早々の3分。流れのなかでのセンタリングから、まずゴンが、ドカン!とヘディングシュートを放ちます。このシーンでは、最後の瞬間におけるゴンの動きが印象的。スッと、マーカー(多分、内舘)の前へ回り込みました。素晴らしい。

 それは、レッズGK山岸がギリギリのところで防ぎましたが、その後のコーナーキックでも、クリアに合わせて押し上げたところに出されたタテパスで(これこそカウンタータイミング!)、藤田に決定的シュートを打たれてしまいます(左ポスト直撃!)。フムフム・・。このシーンでは、押し上げが中途半端だったのでしょう。後でビデオで確認してみましょう。

 でも先制ゴールはレッズ。6分。福田が蹴った左からのフリーキックが、正確に「一山」を越え、ファーポストゾーンにポジショニングするエメルソンに合います。まあ、この瞬間に「勝負アリ」でしたネ。それは、ジュビロ山西のマークミス。そしてエメルソンのヘディングシュートが左ポストに跳ね返り、それが彼の目の前に返ってきてしまったというわけです。呆然とボールの行方へ追うだけの山西を尻目に、正確にサイドキックでゴールへのパスを決めるエメルソン。

 その直後、またまたレッズが、今度は「流れのなか」からチャンスを作り出します。右からのツゥットのクロスが、これまた「ファーポストゾーン」から走り込むエメルソンに正確に合ったのです。まあこれは、「決定的なサイドチェンジパス」といった方が正しい表現ですかネ。

 ファーポストゾーンへクロスを合わせるのは、トレーニングでの「イメージ調整(イメージのシンクロトレーニング!)」が重要な意味をもちます。それがあったからこそのゴールと、それにつづくチャンスだったと思うのです。フムフム、レッズは、「J再開」に合わせて、よく準備を整えていたようだな・・なんて思っていました。

 とはいっても、ジュビロの流れのなかでの攻撃は鋭い。彼らは、「自分たちのツボ」に対する明確なイメージをもっていると感じます。チャンスになりそうな状況になったら、「ここだ!」と感じた選手たちが、ものすごい勢いで押し上げてきますからネ。そのテンポアップがレベルを超えているんですよ。レッズの「早い段階でのマンマーク」も、何度か振り切られてしまって・・。

 16分のジュビロの攻撃は、まさに危険そのものでした。右サイドを突いていく状況が、他の選手たちの「ツボに対する意識」を刺激したということなんでしょう。そして正確なクロスが送り込まれてくる。

 24分。その後の膠着状態から、またまたジュビロが、カウンター一発で決定的チャンスを作り出してしまいます。ロングボールを高原がヘディングで流し、そこへ、例によって、ゴンが「走り抜けて」いたというわけです。その「背景」にある、ゴンの意識の高さ(素早いタイミングのフリーランニングスタートが秀逸!)、そして高原も描いていたに違いない、明確な「最終勝負イメージ」が素晴らしいハーモニーを奏でた瞬間でした。ゴールに結びつけられなかったとはいえ、流れのなかでレッズ守備を崩し切った、目の覚めるような攻撃でした。

 そして徐々に、ジュビロが試合を制圧していく・・。とはいっても、レッズの「マンマーク守備システム」が忠実さを維持できていたために、それ以降はジュビロもチャンスを作り出すことができない。ということで、「拮抗」という表現の方が正確だという展開になってきます。攻め込もうとするジュビロですが、ボールがないところの動きとパスが、うまく連動せず、どうも消化不良気味。どうしてもレッズ守備ブロックの「ウラ」を突けないのです。

 ジュビロのサッカーからは、全盛期のハーモニーが感じられなくなっています。服部、福西、名波、藤田、そして奥という中盤メンバーが奏でていた夢のようなハーモニーが・・。

 もちろん、ジュビロの攻撃が、互いにシンクロする「意図のラディウス(半径)」が広いことも含め、まだまだハイレベルだとは感じるのですがネ・・。

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 さて後半。相変わらずジュビロが支配はするけれど、どうしても決定的スペースを突くことができないという展開がつづきます。でも6分。セットプレー(フリーキック)から、ジュビロが同点ゴールを挙げます。一ボールに飛びついたのは、やはりゴン。素晴らしい同点ゴールでした。

 レッズが展開する、忠実な「マン・オリエンテッド守備(「人」へのマンマークに移行するタイミングが早く、そして最後まで忠実にマークしつづけるという発想!)」は、全体としてはうまく機能しているとは思うのですが、どうも「ここ一番」という決定的状況(最終勝負)では、マークを外されてしまうシーンが・・。

 どんな守備システムでも、最終勝負シーンでのマークは難しいものです。それもセットプレーが危険。だからこそディフェンダーは、「勝負スポット」を明確にイメージできていなければならないというわけです。世界のトップでは、相手が決まったら、その動きを制圧するだけではなく、常に「最終勝負のスポット」を明確にイメージしているものなのです。このジュビロ同点のシーンで中山ゴンをマークしていたのは内舘だと思うのですが、彼は、ゴン「しか」見ていなかった・・!?

 同点にされてからのレッズは、それまでの、カウンター狙い「だけ」というペースを引きずってしまい、攻撃を「組み立てる」ことがままなりません。そのとき私は、「やっと」ベストパフォーマンスを魅せはじめたアリソンの「穴」を明確に感じていました。

 アリソンの出来については、ワールドカップ前に行われていた「ナビスコカップ」をビデオで確認していました。活動半径の広い、攻守にわたるダイナミックプレーは称賛に値する・・なんて心強く思ったものです。その彼が、この試合では出場停止。彼の「穴」を感じます。

 「あの」まま逃げ切ろうとしていた!? レッズのサッカーを見ていて、そんなことまで勘ぐりたくなったものです。そんな「低調リズム」から、再びペースアップすることほど難しいことはないのですよ。それも、サッカーが「本物のチームゲームだ」と言われる所以なのです。だからこそ、グラウンド上でのリーダーの存在が欠かせない。でも、この試合でのレッズには・・。

 10分。ジュビロ左サイドの金沢が、見事なドリブルで抜け出し、決定的なクロスを上げます。狙うのは「ファーポスト・スペース」。そして、そこにいたゴンからの折り返しを、高原がダイレクトシュートを放ちます。ボールが浮いてしまったとはいえ、カタチとしては決定的。これは、レッズは大変なことになってしまうかも・・なんて思ったものです。でもその後は、鈍重ながら、レッズのペースも上がってはきます。もちろん忠実な中盤守備を通して・・。そしてゲームは、またまた拮抗状態へ・・。

 そんな展開がつづいていた33分、ジュビロの鈴木が、二枚目のイエローで退場になってしまいます。もちろんレッズのフリーキック。ゴール正面、16メートル。そしてそれを、エメルソンが、ドカン!と蹴り込んでしまうのです。レッズの勝ち越しゴール! 後半34分のことでした。

 でもその2分後には、またまたセットプレーから、ゴンが同点ゴールを決めてしまいます。素晴らしい「ゴンゴール」。でも、マークしていた内舘(だと思ったのですが)よりも「身体半分リード」しての、ゴンの爆発的なヘディングシュートを見ていて、やはり最終勝負シーンでのマンマークが甘い・・トレーニングが徹底されていない(!?)・・と感じさせられてしまった次第。

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 そして入った延長2分。藤田が、素晴らしいフリーランニングスタートから福西のラストパスを受け、ジュビロに勝利を呼び込むVゴールを決めました。

 彼については、前半から、決定的スペースへの「飛び出し」を何度も目撃していました。そのうちの半分は、ボールさえ出れば、決定的スペースで完璧にフリーになれるというタイミング。でも、パスは来ない・・。

 藤田のフリーランニングスタートは、常にマーカーの「視線を盗み」ます。素晴らしくクレバー。それでもパスは来ない。私は、諦めずに何度も、何度も決定的な動きを繰り返す藤田の「忍耐」に脱帽していました。

 そして、その忍耐が報われるときが来たのです。それも、素晴らしい結果とともに・・。藤田の、諦めない姿勢と、ボールがないところでの「イメージ」に対して心からの拍手を送っていた湯浅でした。



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