湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第2節(2004年8月21日、土曜日)

 

発展をつづけるレッズに乾杯!・・(レッズ対ヴェルディー、7-2)

 

レビュー

 

 「私は、今日ゲームを観に来られた観客の皆さんが気持ちよく家路につき、家族や友人たちと、今日のゲームについて盛り上がりながら語り合ってくれるものと確信しています・・」。試合後の記者会見で、ギドが、誇らしげに語っていました。たしかに、レッズファンの方々には堪えられないゲーム内容。私も、大いに満足しました。もちろんそこでの「満足のニュアンス」はかなり違うでしょうけれどネ・・。

 私は、発展をつづけるレッズが、才能に恵まれているが故に怠慢なヴェルディーのサッカーに鉄槌を下してくれることを期待して埼玉スタジアムまで単車を飛ばしたのですよ。そして、まさに私の期待どおりのゲーム内容になったというわけです。

 ヴェルディー選手たちのいい加減なディフェンスについては、対戦相手のチカラが及ばないケースが多いことで、それが白日の下にさらされることは少なかった・・でも今のレッズだったら、必ずヤツらの怠慢ディフェンスの穴を活用し、ヴェルディーに欠けている根本的なプレー姿勢の問題点を際立たせてくれるに違いない・・。

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 「我々は、注意していたにもかかわらず、レッズのカウンターにやられてしまった・・」。ヴェルディーのオジー・アルディレス監督がそう述べていました。たしにか、カウンターを仕掛けられたシーンも多かったですよね。逆に、ギド・ブッフヴァルト監督は、「第一節のヴェルディーのゲームを観て、彼らの場合、攻撃から守備への切り換えが特に遅いことに気付いた・・だから、そのポイントを突くことを選手たちに意識付けした・・要は、守備から攻撃への切り換えを早く、そして積極的に仕掛けていくという意識だ・・もちろんそこでは、チャンスがあるプレイヤー全員が吹っ切れて押し上げなければならない・・」と言っていました。面白い、コメントの対比ですよね。要は、ギドのゲーム戦術が、まさにピタリとツボにはまったということです。

 その言葉どおり、何度も、カウンター状況で(最終的に)ヴェルディーゴール前で数的優位を演出したシーンを目撃しました。そこでは、何度も「タテのポジションチェンジ」を目撃しましたよ。そのベースは、言わずと知れた、選手全員に深く浸透しているハイレベルな守備意識。それに対する深い相互信頼があるからこそ、オーバーラップにも吹っ切れた勢いを乗せられる・・。まあ、これまで何度も繰り返し書いてきたことです。

 でも私は、レッズがカウンターだけでチャンスメイクしていたとは思っていません。組み立てからの仕掛けでも、レッズの選手たちは、存分にヴェルディー守備ブロックを振り回していたのですよ。だからオジーの発言には、全面的には同意できない。まあ、それには、レッズの組織的な仕掛けがレベルアップしているということもあるし、逆に、ヴェルディー守備ブロックのプレーイメージが首尾一貫していないということもある・・。

 例えば前半4分。レッズが、組み立てから仕掛けていこうとしている状況で、右サイドを駆け上がる永井に対し、三浦淳宏がまったくマークに付いて戻らず「パスカットポジション」に留まってしまったというシーンがありました。そこで山田が、すかさず永井へのスルーパスを決めてしまいます。ヴェルディーは、ディフェンダーの怠慢マークによって決定的ピンチを招いてしまったというわけです。マークを受けわたし、美しいインターセプトを決めようとするイメージはいいのだけれど、そんな美しいディフェンスプレーが出来るためにも、周りでの汗かきプレーが必要になってくる・・でもヴェルディー選手たちは、全員が、スマートに(効率的に・・楽に・・)プレーしようとしている・・これでは・・。

 そんなプレー姿勢を観ながら、要は、ヴェルディーの「効率プレーを意識する」という悪しき体質(基本的なプレー姿勢)は、まったく改善していないということだな・・こんな怠慢サッカーをやるチームを上位に行かせてしまったら、確実に日本サッカー界にとって大きなマイナスになる・・なんてことまで考えていたものです。

 そんなプレー姿勢のヴェルディー守備ブロックを、レッズ選手たちが、素早く、広い組織パスプレーによって(ボールがないところでの選手たちの動きが=素早く、広い人とボールの動きによって)振り回し、その「ウラスペース」を突いていくのですよ。だから、このゲームに関する私の満足度も高かったというわけです。

 こんなことを書くと、またまたヴェルディーファンの方々から強烈なクレームメールが送り付けられてくるでしょう。それでも私は、彼らの天賦の才が惜しいからこそ、誤解を承知でネガティブコメントを書きつづけるのです。彼らがクリエイティブなムダ走りにも精進すれば、必ずいまの何倍も優れたサッカーが展開できると確信し、期待しているからこそ、怒りのレポートを書きつづける湯浅・・。私は、とことんサッカーが好きなのです。

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 この日のレッズは、カウンターだけではなく組み立てでも、素晴らしいサッカーを展開しました。忠実な汗かきプレーとクリエイティブなプレーが有機的に連鎖しつづける組織的なボール奪取(ディフェンス)。そして、守備から攻撃への素早い切り換えをベースにした、人とボールがよく動くダイナミックサッカー・・。もっと新しい「形容句」を考案しなければならないかも・・。

 この試合でも、長谷部と山瀬のハイパフォーマンスが目立ちに目立っていました。特に長谷部が展開した、攻守にわたる、目立たないところでの極限の実効プレー。インプレッシブそのものでした。もちろんハットトリックを完成させた山瀬の、ボールがないところでの汗かき(クリエイティブ)プレーも特筆でしたね。

 特に、彼がたたき込んだ7点目が深く印象に残っています。それは、見事な、本当に見事な「複合」コンビネーションプレーから生まれたゴール。左サイドから、アレックスがドリブルで持ち込む・・次の瞬間、後方にポジショニングしていた山瀬が爆発した・・全力フリーランニングをスタートしたのだ・・その山瀬の勝負の動きを明確にイメージしているアレックスは、最前線のエメルソンの足許へ正確で強いパスを送り込む・・次の瞬間、エメルソンから「チョン!」という、ダイレクトの「ラスト落とし」がピタリと山瀬に合ったことは言うまでもない・・素晴らしいワン・ツー・スリーのコンビネーション・・というわけです。

 また永井雄一郎も、ハットトリックを完成させたことも含め、抜群の存在感をアピールしていましたよ。前半14分に挙げた彼の一点目のシーン。エメルソンからのクロスが、ニアポストに走り込む永井にピタリと合ったのですが、そこでのキーポイントは、永井が魅せた「決定的パスを呼び込む爆発フリーランニング」でした。まさに、ボールがないところで勝負を決めた永井・・。まあ、後半19分に飛び出した「爆発ドリブル&冷静ゴール」についてはコメントの必要なんてないでしょう。ヴェルディーの三人を完璧に抜き去りにし、そのまま持ち込んで、落ち着いてヴェルディーGKを外したシュートを決めたスーパープレー。もう完璧な「マラドーナゴール」でした。

 その他にも、まだまだ多くのメモをしていました。でも今日は、このあたりにしましょう。(課題と捉えるべき時間帯もあったけれど・・)全体的には、まさにスーパーと呼べるダイナミックサッカーを展開したレッズに乾杯!!

 



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