湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第7節(2004年9月26日、土曜日)

 

レッズが「深み」にはまらなくて良かった・・(レッズ対ガンバ、2-1)

 

レビュー

 

 今日の試合前ですが、私は、うまく気持を高揚させられる心理・精神状態にはありませんでした。まず何といっても、雨。先週の天気予報では秋晴れのはずが、朝からシトシト。ということで、移動手段を、解放された秋晴れライディングという最高に気持ちいいオートバイから、単なる移動手段にしか過ぎないクルマに変更せざるを得ず(試合の後に所用があったため、どうしても足が必要でした)・・次に、レアル・マドリーというレジェンドチーム(伝説チーム)の崩壊がはじまっていることを認識せざるを得なくなってしまったこと・・そして、山瀬と長谷部が戦線離脱してしまったことで、これまたパフォーマンスダウンが心配されるレッズ・・。まあ、それ以外にも色々とあったのですが、とにかく試合前は、気合いが乗る状態ではなかったのですよ。でも試合後は・・

 まず何といっても、山田暢久の「復活」に心からの拍手を送らなければいけません(決して彼が同点ゴールをたたき込んだからではありませんよ!)。このゲームでの山田は、山瀬の穴を十分に補ったといえる素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれたのですよ。要は、攻守わたり、究極の緊張感をベースに、最後まで自分主体で「仕事を探す」というプレー姿勢を貫きとおしたということです。とにかく、素晴らしいパフォーマンスでした。

 二列目センター・・。それは(通常の場合)、攻守にわたって「限りない自由」を与えられるポジションです。だからこの、そのチャンスを与えられた選手は、セルフモティベーション能力(考えるチカラ=インテリジェンスレベル・・等々)を明確に(厳しく)評価されるというわけです。前節でそのポジションに就いたアレックス。彼には、その視点でのモティベーション(意識付け)が欠けていたのかもしれません。とにかくその「自由」を与えられた選手は、チェイス&チェックなど、最前線からのディフェンスに精進するだけではなく(守備の起点プレー!)、積極的に動いてタテパスのターゲットになったり、積極的に戻ることで(前方にスペースを作り出すことで)後方選手たちがオーバーラップできる可能性を大きくしなければならない(タテのポジションチェンジの演出!)等々、攻守にわたる自分主体のコアプレーで「前線ブロックの実効レベル」を引き上げられなければならないのですよ。だからこそその選手たちは、良いプレーをすれば、チームのなかで一番評価されるし、悪ければ、コテンコテンに叩かれるというわけです。

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 試合は、予想したとおり、ガンバ主導ではじまりました。セカンドステージで勝ち続けるガンバの試合は、ビデオなどで、そのほとんどを観察していました。一言で表現すれば、守備ブロックが素晴らしい機能性を魅せていることで、二川、フェルナンジーニョ、大黒といった選手たちの才能が、組織プレーのなかで「も」最高レベルまで発揮されるようになったということです。以前の、下がり気味で堅い守備ブロックからカウンターを繰り出すという、どちらかといえば「規制」方向へ振れ過ぎていたサッカーではなく、攻守にわたるプレーダイナミズムを、選手たちが主体になって一回り高揚させるという高質サッカー。ガンバは、本当の意味で「自由を謳歌できるチーム」へと発展していると感じます。

 そんなガンバに対して立ち上がりのレッズは、高い位置でのボール奪取がままならないだけではなく、攻撃でも、ガンバの積極ディフェンスに押されて足許パスに終始するなど、まさに「私の心配が的中した」というオドオドサッカー(自信と確信レベルが低落したサッカー)でした。そしてガンバ得意のカウンターからフェルナンジーニョに先制ゴールまで決められてしまう・・。そんな立ち上がりの展開を見ていて、これはホントに大変なことになってしまうのだろうか・・なんて本気で心配しはじめたものです。でも、やはり今年のレッズはひと味もふた味も違った。彼らは、そんなジリ貧の雰囲気から、自分たち主体で這い上がってきたのです。

 その原動力は、何といっても中盤ディフェンス。相手に握られたペースを奪い返すためには、中盤ディフェンスを活性化するしかありませんからね。私は、相手にペースを握られたときなどは、全員が、中盤から「ストリクト・マンマーク」をつづけさせます。そのことで相手の活動性を抑制し(要は、足を止めさせ!)、擬似の心理的な悪魔のサイクルに落とし込めてしまうというわけです。それが選手たちの自信レベルを回復させ、次のダイナミック攻撃の心理・精神的なリソースになる・・。

 同様にレッズも、鈴木啓太、酒井、山田暢久で組む中盤トライアングルだけではなく、両サイドのアレックスと永井雄一郎と、最前線の田中達也までも参加し、チームの守備エネルギーを倍加させていったのです。その立ち直りの心理的なベース(キッカケ)になったのは何だったのだろう・・。爆発的なディフェンスプレーや声での叱咤激励など?! まあそこまでは正確に把握できなかったけれど、例えば、山田が魅せた最前線からの爆発チェイス&チェック、またネネが魅せた前でのボール奪取勝負からの攻め上がりや、鈴木啓太と酒井が協力したダイナミックな追い込み等々、「たぶん・・」なんて思える爆発プレーはありましたよね。まあ・・それらの攻守にわたる「小さな」積極プレーが、徐々に相乗効果を発揮しはじめたということなんだろうな・・。要は、日常トレーニングによって、選手たち全員の意識が高揚しつづけているということでしょう。とはいっても、ガンバもよくトレーニングされたチームだから、決して心理的な悪魔のサイクルにはまることはありませんでしたけれどネ・・。

 とにかくゲームのペース(実質的な攻守のコンテンツ)は、徐々にホームのレッズへと傾くようになっていきました。まあそのゲームペースの好転には、山田のスーパー同点ゴールも大きく貢献したわけですけれどネ。それにしても、同点ゴールと勝ち越しゴールはうまいタイミングで決まりましたね。特に前半16分に同点ゴールを決められたのが大きい。それがあったからこそ、落ち着いて「ペースアップ」させられたということでしょう。

 後半7分に勝ち越しゴールを奪ってからのレッズのディフェンスですが、それをどのように表現したものか・・。ガンバの放り込みによく耐えた?! まあ、そうとも言えるし、トゥーリオやネネのヘディング能力が抜群の存在感を発揮したとも言える。とにかく、全員が最後まで集中を切らすことなく(ボールウォッチャーになることなく)、チェイス&チェック、マーキング、カバーリングなどに主体的に取り組めていたとまとめておきましょう。それにしても、あれだけカウンターチャンスを作り出しながら一点も決めことができなかったことを考えれば、本当によく勝ち切りましたよネ。普通だったら、確実に勝負の流れが相手へ傾くモノなのに・・。

 ところでギド・ブッフヴァルト監督が、後半に、相手ロビングボールがネネの頭上を超えてしまったシーンで(要はネネにポジショニングミスがあり、相手ロビングボールにカブッてしまった!)、その危険を素早く察知して全力ダッシュで戻り、ギリギリのタックルでゴールを防いだアレックスのカバーリングプレーを絶賛していました。そのシーンでは、私も「ヨシッ!!」なんて声を出していましたよ。いや、本当に素晴らしいカバーリングでした。

 くり返しますけれど、アレックスの能力には素晴らしいものがあるのですよ。ただそれをギリギリまで使い切らない・・ギリギリまで発揮するための意識が足りない・・ということなのです。だからこそ、ガンガンとブーイングしなければならないのです。まあ私は文章でブーイングしているわけですけれどネ。その意味では、彼に、二列目の自由度(=チームに対する限りない責任!)を与えつづけた方がいいのかもしれません。それが「天才の覚醒」を促すもっとも効果的な近道でしょうから・・。でもそれでチームが苦況に陥ったら元も子もない・・。ホント、チームマネージメントは難しい。

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 「山田暢久」という才能の覚醒現象もあって、結局レッズは、「深みにはまる」ことはありませんでした。本当に、ホッと胸をなで下ろしている湯浅なのですよ。ウイニングチーム・ネバー・チェンジ!ということで、たぶん次節もこのチームで臨むことになるでしょう。さてヤツらはどこまで突っ走れるか・・。

 例によって、乱筆・乱文・誤字・脱字・・等々、失礼!

 



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