湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第11節((2005年5月8日、日曜日)

 

完璧にオシムロジックにはまり込んでしまったレッズ(レッズ対ジェフ、0-0)

 

レビュー
 
 「レッズがドリブルで仕掛けてくるのは分かっていた・・それに対して特別なコトをやったわけじゃない・・」。試合後の記者会見で、イビチャ・オシムさんが微笑みを浮かべながら余裕のコメントをしていました。

 とにかくこの試合は、浦和レッズが「オシム・マジック」に呑み込まれたといった内容でした。それについてはギド・ブッフヴァルト監督も、「ジェフは素晴らしいサッカーを展開した・・もちろん我々もチャンスは作り出したけれど、全体として見た場合、このゲームに負けなかったのはラッキーだった・・」とまで言っていましたからね。ギドは、グラウンド上の現象をしっかりと冷静に理解・把握していると思います。試合後の記者会見での彼のゲーム分析は、常に正確そのものなのですよ。

 レッズにとってこの試合は、久しぶりに決定的チャンスの量と質で相手に凌駕されたといったゲームになってしまいました。レッズの仕掛けで、チャンスと呼べるのは、後半11分の田中達也のシュートシーンと、後半38分にエメルソンが放ったシュートくらい。それに対してジェフは、バーやポスト直撃シュートも含め、決定的チャンスと呼べるシーンが少なくとも6本はありましたからネ。いや、本当にレッズは負けなくてよかった・・。

 とはいっても、レッズは悲観してはいけません。後半15分あたりで二人同時に交代してからは(アレックスに代わって平川忠亮が左サイドに入り、永井雄一郎に代わって岡野雅行が右サイドへ・・そして山田暢久が二列目センターに入る)、やっと攻撃のリズムが良くなってきたのですよ。その背景要因は、人とボールがうまく動きはじめたこと。やはりサッカーの基本はパスゲームなのです。

 特に前半のように、ごり押しのドリブル勝負ばかりでは、その仕掛けを明確にイメージしているジェフの守備ブロックに「集中」されて潰されるのは当然の成りゆき。まあ、ドツボにはまってしまったレッズという体たらくだったのですよ。そこで展開されたサッカー内容は、まさに心理的な悪魔のサイクルにはまり込んだと言えるものでした。うまくチャンスを演出できないし、後方からのバックアップの鈍い・・だからドリブル勝負ばかりに頼るようになってしまう・・もちろんそれは、シンプルなパスとは正反対だから、後方からのサポートも上がっていけない・・そして孤立した前線選手たちがドリブル勝負ばかりをイメージして仕掛けていく・・ってな具合ですかネ。

 そんなレッズに対し、ジェフが魅せつけたサッカーは、本当に素晴らしいの一言でした。それについては、前節のレポートも参照して欲しいのですが、とにかくシンプルなパスリズムだから、周りのサポートの動きも活性化しづづけるということです。特筆なのは、例外なくパス&ムーブを忠実に実行しつづけるプレー姿勢。そのように人とボールがシンプルなリズムで動きつづければ、スパッ、スパッとスペースを突いていけるのも道理。

 とにかくジェフは、いまの「J」のなかでは、もっともスペース活用が上手いチームだと思っている湯浅なのです。消えては生み出され、出現したと思った次の瞬間には消えてしまうスペース。それは、相手守備の薄い部分と同義のケースが多い。そこを効果的に突いていくために人とボールを、素早いリズムで動かしつづけるジェフ。ボールがないところでのパスレシーブの動き(スペースを生み出す動きも含む!)が活性化されるハズだ・・。

 さてレッズですが、どうして「ドツボ」にはまってしまったのか・・。ジュビロ戦やグランパス戦での好調サッカーからは考えられない停滞サッカー。もちろん要因のなかでもっとも大きなところは、ジェフが素晴らしくクレバーなサッカーを展開したということでしょう。それは確かな事実です。それではレッズのなかの要因は・・? 私は、そのもっとも大きなところが永井雄一郎の低級パフォーマンスにあったと思っています。前節のヴィッセル戦と同様に、この試合でも永井雄一郎のパフォーマンスには大いなる疑問符を付けざるを得ません。とにかく守備が「お座なり」なのが気に掛かる。もちろんマークはするし、次のパスコースを消すような動きもたまにはするけれど、全体的な参加意識は、まさにパッシブの極み。特にボール奪取勝負シーンでの「緩いプレー」には怒りさえ覚えていました。全力ダッシュで勝負に入っていけば、少なくともルーズボールにはできたハズなのに・・。そんな緩いディフェンスでは、チームメイトたちに信頼されるはずがない。またパスを受けても、ごり押しのドリブル勝負を仕掛けて簡単にボールを奪い返されてしまうだけではなく、すぐにチェイシングに入るのではなく、そのままボールを奪われた地点で止まってしまうのだから何をかいわんやじゃありませんか・・。

 いまの永井は、とにかくプレーイメージがおかしくなっていると感じます。原点に戻り、動きの量と質を見つめなおさなけばいけません。この試合での永井は、確実に「二列目のフタ」に成り下がっていました。アレじゃ、長谷部や鈴木啓太にしても、追い越しフリーランニングで仕掛けていけるはずがない・・。あの才能が、アレで終わっちゃうの・・?? そんなことは、許されるハズがありません。

 そんな「フタ」に対し、後半の残り30分間、二列目に入った山田のパフォーマンスは良かったですよ。でも私は、前節での長谷部のプレー内容に「明るい兆し」を感じているから、長谷部にも「そこ」でプレーするためのイメージを与えておくことは必要だと思っています。

 あっと・・エメルソンのプレーコンテンツにも触れておかなければ・・。この試合では、とにかく持ち過ぎシーンとごり押しドリブル勝負のオンパレードでした。あれじゃ、後方からのサポートがうまく機能しないのも道理です。いや・・。もしかしたら彼には、「後方からのサポートが遅いし、パスレシーブのコース取りが悪いから、仕方なくタメているんじゃないか・・」という主張があるかもしれません。

 だからこそ、チーム内でしっかりとビデオを観察し、話し合う必要があるのです(=イメージシンクロ作業!)。決して相手を非難したり否定するのではなく、「・・の方がいいかもしれないと思うのだけれど、どう思う?」とか、あくまでも冷静なディベートをするのです。創造的な話し合いの原点は、何といっても相手に対するレスペクト(敬意をはらうこと!・・まず相手のハナシを聞き、理解しようと努力すること)がスタートラインになるのですよ。まあ、言うまでもないことだけれどネ・・。

 最後に、ものすごく正しい普遍的な概念をイッパツ。脅威と機会は常に背中あわせ・・。

 



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