湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第7節(2006年4月9日、日曜日)

 

レッズにとっては、強化守備ブロックに対抗するイメージトレーニングが重要でしょう・・(アビスパ対レッズ、0-1)

 

レビュー
 
 とにかく、これからもレッズは、この試合のような「厳しいイバラの道」と対峙しつづけ、それを乗り越えていかなければなりません。この試合でレッズ選手たちが体感した、ネガティブ&ポジティブな「サッカー的現象」は、これからの厳しい闘いを具体的に見つめるという意味でも、大変に貴重な学習機械になったに違いない・・。

 それにしてもトゥーリオの一発は、レッズを支持する人々にとって、そんな厳しい現実を忘却の彼方へ押しやってしまうほどの強烈な歓喜を喚起したに違いありません(ツマラナイ語呂合わせ・・ゴメン!)。そんな爆発エモーションは、日本社会の日常ではほとんど味わうことができないものでしょう。もちろん、その対極にある(レッズファンが今までに何度も体感させられた)奈落の底に突き落とされるような落胆にしても同じ。その視点で、「際のプロビジネス」の一端を担うレッズは、生活者に対して素晴らしい「生活文化価値」を提供しているということです。そこでの「刺激」は非日常の極みだし、それがあるからこそ、日常に「色を添える」ことができる?! とにかく浦和では、本当の意味のサッカー文化が、深く、深く浸透しつづけていると思いますよ。

 ところでトゥーリオのスーパーヘディングゴール。ジリ貧の状況で飛び出した起死回生の一発でした。岡野が送り込んだ素晴らしいタイミングとコースのクロスも含め、何かこの・・、そこに、適切な選手交代(優れたベンチワーク)という戦術的なロジック以上のモノを感じていた湯浅だったのです。サッカーの神様の気まぐれ?! そうさ・・サッカーは、偶然と必然が(そこに神様の気まぐれもミックスしながら)究極の状態で交錯するボールゲームなのさ・・なんてネ。

 さて、ゲームを簡単に総括しておきましょうか。まず、素晴らしくダイナミックな(守備の)戦術サッカーを最後までやり通したアビスパ。

 彼らは、最初から最後まで、グラウンド全面にわたって、ねばり強く忠実、そしてクレバーでダイナミックなディフェンスを展開しました。その強い意志に対して心からの拍手を捧げます。最初の抑え(守備の起点プレー)だけではなく、それに効果的に連鎖する協力プレスや次のパスレシーバーを意識したインターセプト狙い、また、ボールがないところでの忠実マークなど、とにかく素晴らしい機能性を魅せつづけていたのです。

 まあ、最初アビスパの選手たちは、ボールを奪い返されてからの、小野やポンテ、はたまた長谷部といった才能たちが繰り出すレッズの素早いカウンターをケアーするイメージでゲームに入っていったのだろうけれど、時間の経過とともに、守備での高い機能性が自信となり、彼らの次の攻撃をも大きく活性化していったと感じました。

 そんなアビスパに対し、確かに前半は、チャンスの量と質で優位に立っていたレッズだったけれど、前述したように、時間の経過とともに、アビスパが仕掛ける守備のゲーム戦術に「はまり込んで」いってしまう・・相手の守備エネルギーを受け止め、それに抗して押し上げていくためのパワーが減退していくレッズ・・それでは、仕掛けゾーンでの人数が足りなくなるのも道理・・そして個人勝負ばかりに頼るようになっていく・・サポートも遅れ気味だから、どうしても悪いカタチでボールを奪い返されてしまうシーンが増える・・そして、そのようなネガティブ現象が、後方からのサポートを再構築するための意志のチカラをも奪い去っていく・・心理的な悪魔のサイクル・・。

 前半ではチャンスを作り出したのに、後半は寸詰まりになって悪魔のサイクルへ・・。そこでの心理プロセスには、前節のグランパス戦にも相通じるモノ(過信?!)があったと感じていた湯浅でした。「この流れだったら大丈夫・・いつかはゴールを決められるサ・・」。そんなイージーな心理が、逆に、攻守にわたるボールがないところでのアクションの量と質を(それに対する積極的な意志を)蝕んでいったということなのかもしれない。もちろんその背景では、アビスパの粘りディフェンスに、レッズ選手たちの「いら立ち」が高じていったということもあるだろうしネ。逆に、そんなレッズの減退傾向が、アビスパ選手たちに勇気を与え、アクションの量と質を高揚させていった・・?! まあ、そういうことなんだろうね。まさに、前節のグランパス戦のようにネ。

 レッズのサッカー内容だけれど、グランパス戦と比べて、サイド攻撃と中央突破のバランスは良くなったと思います。とはいっても、この試合で「も」、相手の守備ブロック強化ゲーム戦術に対して、ポンテやワシントンのボールキープ、小野やアレックス、はたまた山田や長谷部が絡んだ「小さなコンビネーション」など、最終勝負へ向かうためのキッカケとなる「仕掛けの起点プレー」がうまく機能しなかった。

 それは、人数をかけるタイミング(イメージ)がうまくリンクしていなかったということだろうね。やはり、もっと「イメージトレーニング」が必要だと思いますよ。闘う意志を高揚させるようなマインドトレーニングじゃなく、仕掛けシーンでの「有機的なプレー連鎖」を瞬間的にイメージ描写しつづけるようなトレーニング。そこでは、相手の強化守備のウラを一発で突くような「勝負ロングパス」や、中距離シュート、はたまた、限りなく放り込みに近いような「アーリークロス」などといった単純な仕掛けのイメージも描写させるのも効果的だと思います。何しろレッズの前線には上手い選手たちが揃っているからね。だからどうしても「きれいな仕掛けシーン」ばかりをイメージしちゃうんだろうね。もっと「泥臭い」仕掛けも必要。彼らに才能が備わっているからこそ、そのことが、大いなる「攻撃の変化」として機能するはずだからネ。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]