湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第1節(2007年3月3日、土曜日)

 

組織プレーが基盤にない個人勝負をいくら積み重ねたって・・(レッズvs横浜FC、2-1)

 

レビュー
 
 レッズは、まだまだ時間がかかりそうだね。ゲームを観ながらメモした内容は、こんな感じだった。

 守備での「有機連鎖のダイナミズム」が減退している・・だから、横浜FCを押し込んではいるけれど、完全にゲームを掌握しているという状況からはほど遠い・・だから攻撃でも、ボールがないところでの動きがとても鈍くなってしまっている・・守備でのダイナミズムは、攻撃でのエネルギー源なのだ・・

 ・・たしかに個のチカラで上回っているから、局面勝負は有利に運んでいるけれど、結局は、そんな単独勝負を積み重ねていく「ツギハギ」のサッカーになってしまっている・・要は、個人勝負頼りの偏ったサッカーということ・・まあ昨シーズンもその傾向はあったけれど、この二試合を観たかぎりでは、昨シーズンのもっとも悪いときの流れに酷似していると感じた・・

 ・・とにかく、守備でも、攻撃でも、コンビネーションプレー(複数プレイヤーの勝負イメージが有機的に連鎖した協力プレー)がほとんど出てこない・・もちろんそれは、ボールがないところでの動きやパス&ムーブが怠慢だからに他ならない・・走るとしたら、絶対に決定的チャンスになるという状況において「だけ」・・フ〜〜!!・・これでは、強化された横浜FCのディフェンスブロックのウラのスペースを攻略できないのも道理・・等々。

 そんなレッズのサッカーを観ていて、危機的な状態とは言わないけれど、これからやらなければならないことが山積みだと感じていました。オジェック監督も、戦術的な部分では、まだまだやらなければならないことが多いと言っていた。

 とにかく、ボールがないところでの動きが鈍重なのには閉口しました。いや、まったく動いてなかったとも言える。そして、止まった味方への足許パスを積み重ねるのですよ。横浜ディフェンスにとってそれは、まさに、自分たちの眼前で繰り広げられるスタンディングサッカー。次のパスを狙うことで、簡単にボール奪取勝負を仕掛けられるのも当たり前なのです。

 これではスペースを使えるはずがない。たしかに、9人で守備ブロックを作る横浜FCが相手だから、攻め込んでいくのは難しかったに違いない。でも、あんな単純な個人勝負を仕掛けていくばかりじゃ、まさに悪循環そのものではないか。

 そうではなく、あくまでも、人とボールを、広く、素早く動かしつづける組織パスプレーを基盤にしなければならないのですよ。縦横にポジションチェンジを繰り返しながら(ボールがないところでの人の動きをベースに!)活発にボールを動かせば、必ず守備ブロックに穴が空くものです。それがあってはじめて、レッズが有する個のチカラの実効レベルを何倍にも増幅させられるのです。

 そのような「クリエイティブなムダ走り」を積み重ねることでしかサッカーの質を高められないことは、レッズの選手自身がよく分かっているはずです。

 でも、組織プレーを機能させるためには、複数の選手のイメージとアクションを「有機的に連鎖」させなければならないという難しい課題があるからね。一人でも反応しなかったり動かなかったら、すぐにでもアクション連鎖が分断され、周りの選手の足が止まってしまうものなのです。

 そして一度でも、組織プレーの勢いが減退したら、「複合するアクション連鎖」を再び活発に機能させるのは、ものすごく大変な作業になる。何せ、組織プレーを有機的に連鎖させるには大変なエネルギーが必要になってくるからね。要は、選手が、強烈な意志をベースに、しっかりと走らなければならないということです。

 そう・・意志。いまのレッズは、3年前の、もっとも良かったときのサッカーを思い出す必要があるかもしれないね。クレバーに編集されたビデオを活用したイメージトレーニング。それによって、良いサッカーのイメージを思い出せば、おのずと「意志のレベル」も高揚して行くに違いない。

 まあ、トゥーリオや長谷部が戻ってくれば、昨シーズンの後半に花開いた、中盤での「ダイナミック・トライアングル」が復活するかもしれないしね。期待しましょう。

 さて、横浜FC。高木監督は、「本当に悔しい」という言葉を繰り返していた。たしかに横浜は、自信をもってプレーする選手たちがレッズの良さを封印することで、勝ち点「1」に手が届くところまで頑張っていた。高木さんは、自分たちのゲームプランがうまく機能していたという手応えを感じていたということでしょう。

 横浜FCは、自力に優るレッズが相手だから、どうしても対処ゲーム戦術を徹底するしか活路を見いだすことは難しかったということです。守備を固め、機を見計らったカウンターで蜂の一刺しを見舞う。

 たしかに攻撃では明らかな限界が見えていたけれど(久保だけは強烈な存在感を誇示していた!)、選手は、そのゲームプランを最後の最後まで徹底していた。そんな彼らを見ていて、チーム戦術を徹底してやり抜く「意志のチカラ」は相当なものだと感じました。それこそが、昨シーズンの「J2」での成功のバックボーンだったんでしょう。高木監督のウデを感じます。

 これからも、自力で上の相手との対峙がつづく横浜FC。ゲーム戦術の「徹底度のさらなる高揚」が求められます。それでも、この試合内容からは、彼らのポジティブな未来が見えるように感じましたよ。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]