湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第10節(2007年5月6日、日曜日)

 

アルディージャのダイナミックサッカーに乾杯!・・レッズは、もう少し時間がかかる!?・・(アルディージャ対レッズ、1-1)

 

レビュー
 
 まあ、この試合については、アルディージャが素晴らしかったというのが基本的な視点だということでしょう。もちろん、レッズが相手を甘く見ていたという側面も否めないけれどね。

 とにかくアルディージャが魅せた、ディフェンスでの素晴らしいハードワークは感動的でさえありました。忠実で爆発的なチェイス&チェック、次のマーキング、協力プレスへの寄りの早さ、インターセプト狙い・・等々。まさに、有機的なプレー連鎖の集合体という表現がピタリと当てはまるような素晴らしくクリエイティブな組織ディフェンス。特筆だったのは、最後の最後まで、その守備の勢いが減退しなかったという事実です。

 そんな流れのなか、レッズが同点ゴールをゲットできるとはまったく思えなかった。それほど、アルディージャの守備が充実していたし、レッズの攻めにも、組織と個のバランスという視点で大きな問題があったのですよ。

 「前節のサンフレッチェ戦は、本当に悔しかった(内容では優っていたのに、後半ロスタイムに決勝ゴールを奪われて敗戦を喫した!)・・それでも、次の日に藤本主税が寄ってきて、負けはしたけれど、プレーをエンジョイできたと言ってくれた・・そのことは本当に嬉しかった・・この試合でも、選手たちが存分にゲームを楽しんだと確信している・・内容的には、我々が勝ってもおかしくなかった・・」。試合後の監督会見。アルディージャのロバート監督が、満足げな表情を浮かべながら穏やかに話していました。

 まさに、そういうことだよね。とにかくこの試合については、アルディージャが魅せつづけた、攻守にわたる解放されたダイナミックサッカーに対して敬意を表さなければなりません。ということで、そのニュアンスからコラムをスタートすることにした次第。

 さて、レッズ。たしかに、ACLでの連戦や移動の疲れが蓄積しているということもあるんだろうね。だから、ボールがないところで忠実に動きつづけなければ機能しない組織プレーではなく、個の勝負に偏る(頼る)という悪い癖(クセ)の方が目立ってしまった。

 たしかに後半はアルディージャを押し込んではいたけれど、組織的なコンビネーションがうまく機能しないことで、結局は(最終ラインとGKの間にある)決定的スペースを攻略するところまでいけず仕舞いだった。アルディージャ最終ラインの眼前で、いくら足許パスを回したって何も起きないよ。もちろん、同点ゴールシーンを筆頭に、サイドから効果的なクロスを送り込むチャンスメイクシーンもあることはあったけれどネ。

 ワシントンにしても、キープミスの方が目立っていたし、失敗すればするほど意固地になって、より個人プレーに奔るといった悪循環に落ち込んでいた。たしかに同点ゴール場面では、マークする相手を身体で押さえ、スッとGKの眼前スペースへ入り込むといったサスガのシュート感覚は魅せてくれたけれど、全体的には、大いなるフラストレーションが溜まるような鈍重なプレーに終始していたと言わざるを得ない。

 要は、個人勝負を前面に押し出し過ぎるような「チカラまかせ」の仕掛けばかりが目立つ攻撃だったということです。まあそれについては、昨年も「大きな流れ」では同じような傾向に陥っていた時期もあったけれど(そんな内容のゲームも多かったけれど)、肝心なところではしっかりと立て直し、うまく組織的に仕掛けられていたからね。

 とはいっても、今シーズンも、ここまでの大きな流れとして、組織的なプレーが徐々に改善していることも確かな事実だと思っています。前節のジェフ戦でも、その後半には、タテのポジションチェンジがてんこ盛りの素晴らしい組織コンビネーションをベースに仕掛けていったからね。たしかに決勝ゴールは挙げられなかったけれど、内容的には、確実に発展ベクトル上に乗っていたと思うのですよ。

 レッズが良い傾向に向いはじめていることの証明として、この何試合で、決定的な仕掛けの仕事を「あの」鈴木啓太が魅せたという事実や、阿部や長谷部といったシャドー二列目プレイヤーの、攻撃での決定的仕事が目立ちはじめているという事実があります。

 最後に、この試合でスリーバックに戻したことについて一言。相手はサーレスのワントップだったのだから、どうしてフォーバックに変更しなかったのだろうか・・。前節のジェフ戦では、フォーバックの前に組織された、鈴木啓太、長谷部誠、阿部勇気による「ボランチ・トリオ」が素晴らしい機能性を魅せていたから、てっきりこの試合でも、それをつづけるのかと思っていた。たしかにジェフ戦は引き分けたけれど、内容的には、確実にウイニングチームだったわけだからね。まあ、後半には柔軟に対処してはいたけれど。さて・・。

 とにかく、もう少し時間が必要なレッズということです。でも次はガンバ戦(ホーム)。そして、アウェーでのグランパス戦、抜群のフォームアップを魅せる絶好調マリノス戦とつづく。厳しい三連戦。まあ、だからこそ絶好の発展機会(学習機会)ということだけれどね。ホルガー・オジェック監督のウデに期待しましょう。

 



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