湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第3節(2007年3月17日、土曜日)

 

レッズでは、まだまだ攻守にわたる組織プレーに課題が・・サッカー内容と勝負強さの相克!?・・(レッズvsヴァンフォーレ、2-0)

 

レビュー
 
 さて、何から書きはじめようか・・。まあ、レッズが繰り出しつづけた素早く危険な仕掛けというテーマしかないよな。何せ、何度も、何度も、素早い攻めから目の覚めるような決定機を演出しつづけたわけだからね。レッズは、ボールポゼッションとは関係なく、決定的なチャンスの量と質では完全にヴァンフォーレを凌駕していました。

 表面的には、こんな印象になるだろうか。相手に攻めさせて(相手の守備ブロックを薄くして)、中盤高い位置での一発インターセプトやボール奪取から、(カウンター気味に)スペースを活用して素早く相手ゴールへ迫るというイメージ・・そこでは、前線の「才能」たちのイメージが、シンプルにボールを走らせるということで統一されていた・・。

 現象的には、ボールポゼッションとシュートの量と質が「逆転」するようなゲーム展開になったわけだけれど、「相手に攻めさせた」というのは、ちょっと大袈裟な表現だろうね。それは、レッズが様子見になる時間帯が多く、逆にヴァンフォーレがしっかりと前からボール奪取勝負を仕掛けてきたといった方が正しい見方だろうね。

 レッズの様子見。要は、以前のように、自分たちが主体になって前からガツガツとボールを奪いにいくというプレー姿勢ではないということです。そんな「前から仕掛けていくディフェンス」をやる場合、とにかく全員が、その流れに参加しなければ、ボール奪取勝負のプロセスを「有機的に連鎖」させられないからね。いまのレッズでは、それぞれの選手が持つプレッシングイメージを有機的にリンクさせるのは難しいよね。

 それでも、様子見でも、うまく狙いが定まったら、強烈な協力プレスを仕掛けてズバッとボールを奪い返してしまうのですよ。やはりレッズの守備ブロックは強い。ヴァンフォーレの攻撃を、余裕をもってコントロールし、追い込んで、タイミングよくボール奪取勝負を仕掛けていくのです。まあ、見方によっては、ボール奪取プロセスが、より効率的になったとも言える!? さて・・。

 そして、高い位置で(それも、相手が前に重心が掛かっている状況で)ボールを奪い返した次の瞬間には、まさに蜂の一刺しという、素早く危険な仕掛けを繰り出していくのです。ポンテ、永井、ワシントン、そしてボール奪取勝負で主役を演じた「もう一人」が、爆発ダッシュで、その仕掛けの流れに参加していくのですよ。

 彼らは、実際にボールを奪い返す「前のタイミング」で既にボール奪取シーンを脳裏に描き、次の仕掛けアクションの準備に入っているということです。

 前半8分の、ポンテから永井へ通されたスルーバスの場面(ピタリと永井に合い、そのままGKまでかわしてシュート!)や、つづく11分にインターセプトから一発タテパスがワシントンに通った場面などなど・・。それ以外にも、阿部勇樹や鈴木啓太だけではなく、最終ラインのネネやトゥーリオも、ボールをインターセプトした次の瞬間には、後ろ髪を引かれることなく最前線まで飛び出していくのです。あっと、両サイドの小野と山田は、もちろん常に攻撃参加をイメージしているけれどね。

 要は、昨年同様、レッズの守備ブロックは、素晴らしく機能しているということです。誰が上がっても、他の選手が、確実にカバーに入るからね。そんな相互信頼があるからこそ、ドカン!と前へ突っ掛けていけるというわけです。

 そんな、強力なディフェンスブロックを基盤にしたカウンター気味の仕掛けは、ホントに迫力満点だし、見ていてワクワクさせられますよ。でもね・・。

 ということで、ここからは、サッカーの本質的な魅力の基盤となるサッカーの内容と勝負強さのバランスというテーマに、ちょっとだけ入ることになるわけです。

 優れた(魅力的な)サッカーは、人とボールが良く動く組織プレーと、優れた才能が繰り広げる個人プレーがうまく噛み合ったときに演出されます。そこでは、「才能」連中も、シンプルな組織プレーと個人勝負を、メリハリ良く使い分けるのです。その視点では、(このところ常に書いていることだけれど)いまのレッズが展開しているサッカーは、組織プレーの部分で、まだまだだということです。もちろんその要因の大きなところは、前述したように、守備のやり方にありということなんだけれどネ・・。

 だから、組み立てベースで攻めなければならないケースでは、どうしても仕掛けの流れが沈滞してしまう。ボールがないところでの動きがうまく有機的に連鎖しないからね。だから人とボールをうまく動かすことができない。

 組織プレーのレベルを上げるためには、まず、一人の例外もなく全員が、流れのなかで、汗かきプレーも含む効果的なディフェンスをやらなければなりません。そして攻撃では、ボールがないところでもしっかりと走らなければならない(パスレシーブだけではなく、相手を引き連れていくことで味方にスペースを作り出す動き!)。それがあってはじめて、ダイナミックな(つねに動きつづける活動的な)仕掛けを演出できるのですよ。そう、ガンバのようにね。

 ガンバの攻撃陣は、活動的なタイプばかりです。マグノ・アウベス、播戸、二川、遠藤ヤット、橋本に明神、そして両サイドの安田(家長)と加地。彼らは、おしなべて守備意識が高く、攻撃でも、ボールがないところでしっかりと仕掛けていけるだけの意図と強い意志を持ち合わせています。だからこそ、互いの信頼関係を発展させることができる。だからこそ、縦横無尽のポジションチェンジを仕掛けていける。まあ、それが空回りしたり、一人がサボることで、急に機能性が地に落ちてしまうといった場面も多々あるけれどネ。

 もちろん、このテーマは、選手のタイプによるわけですよ。例えば、ワシントン。彼は、積極的にディフェンスに参加したり(積極的なチェイス&チェックこそがスタートラインなのだけれど・・)、攻撃でボールがないところで大きく動くというタイプじゃない。でも、ゴールを挙げる能力では他を圧倒している。フムフム・・。

 様々なプラス&マイナスのファクターがせめぎ合うレッズっちゅうわけです。まあ、私にとっては、またまた素晴らしい学習機会にめぐり会えたということだけれどね。

 昨シーズンの勝負所では、ワシントンをワントップに、それを後方から上手く活用するダイナミック・トライアングル(鈴木、長谷部、山田)が、攻守にわたって素晴らしく機能した。そこでは、ポンテも、効果的に、そしてシンプルに、そのダイナミズムの輪に加わっていた。だからこそ、リーグ終盤の勝負所を乗り切れたのです。

 今のサッカーで、対戦相手が強くなったらどうなるだろうか・・。ゼロックス(対ガンバ)のときのように力負けしてしまう可能性は否定できないよね。

 攻守にわたる、組織プレーと個人プレーのハイレベルなバランス。とにかく、ホルガー・オジェック監督の手腕に期待しましょう。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]