湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2007年4月8日、日曜日)

 

継続こそチカラなり・・(ジェフ対横浜FC、4-0)

 

レビュー
 
 「忍耐力が大事になってくる・・それと、ボールを早く、確実に動かしつづけることが肝心だ・・」。

 「相手が(事前に予測されたように)守備ブロックを固めてきたわけだが、それに対してどのような具体策を準備したか?」。そんな質問に対してアマル・オシム監督が、上記のように答えていました。

 まあそういうことだけれど、ちょっと「意訳」すれば、こうなるだろうね。何度失敗しても決してフラストレーションを溜めることなく、自分たちのサッカーをクールにつづけることが大事だ・・そこでは、ボールがないところで動き回ってスペースを活用し、しっかりとボールを走らせなければならない・・そんな基本を粘り強くつづけていけば、かならず相手ディフェンスラインの背後に広がる決定的スペースを攻略できる・・そこからラストパスやラストクロスを中央へ送り込む・・そんな仕掛けが機能すれば、必ずチャンスをモノにできる・・等々。

 「守備ブロックをしっかりと組織してはいたけれど、サイドや中央ゾーンをどんどんと(組織的に!?)突いてくるジェフの仕掛けにやられた・・そこでは、工藤浩平や羽生直剛が繰り出す斜めのフリーランニングが効果的だった・・そしてウラの決定的スペースを突かれて崩されてしまった・・」。横浜FC高木監督の談話です。まあ・・そういうことだよね。

 この試合でのジェフについては、一ヶ月前のエスパルス戦でアップした「このコラム」も参照してください。その最後を、『継続こそチカラなり。今のサッカーベクトルを維持し、そのなかで、闘う意志と集中力を高揚させることで、偶然と必然のファクターバランスを必然の方向へ引き寄せていく努力をつづけていく。アマル・オシム監督のウデに期待しましょう・・』というふうに締めました。

 その締めに入るまでの主なニュアンスは、「全体としては、組織マインドが充実した優れたコレクティブサッカーなのに、(昨シーズン同様に)結果につながらない確率がちょっと高すぎる・・要は、最終勝負シーンでの、ココゾの集中に欠けているところがあるということなのだろう・・というものでした。ただこの試合では、着実に、『目立たない小さなところ』での修正が為されていることを実感しました。だからこそ、全体としての良いサッカーを継続・発展させることで、それが結果に反映されはじめたということです。

 数日前の、ガンバとのナビスコカップ戦。テレビ観戦だったけれど、素晴らしいサッカー内容で勝利を収めたじゃないですか。

 私は、ジェフが展開するサッカーを高く評価しています。正直、そのダイナミックなサッカーには常にワクワクさせられますよ。ボールがないところで勝負が決まるという普遍的なコンセプト。それを「全力」で体現しようとするジェフ選手のプレー内容には、サッカー本来の魅力が詰め込まれていると感じます。だからこそ、アマル・オシム監督のウデを高く評価するのです。

 サッカーの絶対的(戦術)コンセプトは、プレー(仕掛けイメージ)を有機的に連鎖させること。もちろんそのスタートラインは、ボールがないところでの人の動きなのですが、しっかりと仕掛けイメージが共有されているからこそ、人の動きにリンクするようにボールもしっかりと動かすことができるというわけです。そして結果として、人とボールをしっかりと動かしつづけるような優れた組織サッカーを形づくることができるというわけです。

 ジェフのサッカーでは、横浜FC高木監督が言っていたように、とにかく選手たちの動きが複合してリンクしつづけていると感じます。一人が大きく動き、できたスペースを後方から押し上げてきた味方が埋める・・そこへパスが通され、そこからダイレクトで次のスペースへボールが走る・・もちろん、ボールをプレーした選手は、間髪を入れないパス&ムーブで次のスペースへ移動しつづける・・等々。ジェフの仕掛けでは、三人目、四人目の動きが見事にかみ合いつづけていました。

 そのフリーランニングだけれど、やはり何といっても、羽生の「飛び出し」が強烈に印象に残っています。前半37分のこと。ハーフウェイライン付近でストヤノフがボールを持つ・・最前線では、何人もの味方選手が戻りきれずにオフサイドのポジションにいるからストヤノフはタテパスを出すことができない・・その瞬間、中盤から飛び出していく黄色い稲妻・・羽生直剛・・そしてストヤノフから、ピタリのタテパスが飛ぶ・・ってな具合。

 そんな羽生の飛び出しの勢いは、後半も衰えることを知りません。右サイドや左サイドで、まさに縦横無尽のフリーランニングを仕掛けつづけるのですよ。

 オシム日本代表でも、これまでに何試合も、交代出場した羽生直剛が繰り出しつづける爆発フリーランニング(強烈な刺激!)によって、それまでの「停滞サッカー」が見違えるほど活性化していくプロセスに舌鼓を打ったことを覚えています。

 羽生直剛は、日本代表にとっても、欠かせない「刺激プレイヤー」なのです。本当に、彼の汗かき(組織プレー)マインドには脱帽です。

 やっとエンジンが掛かりはじめたアマル・ジェフ。今後の発展に期待が高まります。

 



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