湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2009年8月22日、土曜日)

 

それにしても山瀬功治の退場劇は、いただけなかった・・(RSvsM、1-1)

 

レビュー
 
 最後は、両チームがまさに全員守備&全員攻撃というダイナミックサッカーを展開する、素晴らしくエキサイティングな攻め合いになった。観ていて、ホントに、手に汗にぎっていた。

 エキサイティングな仕掛け合い・・!? まあ、とはいっても、山瀬功治が(レフェリーが下した信じられないジャッジで!)退場させられたことでマリノスは!0人で戦っていたし(マリノスが一点リードしていたこともあって)降格圏内のレイソルも必死に攻め上がっていたから、基本的にイニシアチブはレイソルが握ってはいたけれど・・ネ。

 「わたしは、レフェリングについて文句を言ったことはない・・ただ、この試合についてだけは、非常に憤っている・・」

 そんな木村浩吉監督のコメントがあったわけだけれど、彼のコメントが終わった直後に質問した。もちろん山瀬功治を退場させたレフェリングについてではなく、まったく違うテーマについての質問。でも、実質的な質問をはじめる前の接頭辞的な意味合いで、冒頭に、こんなことを言った(言ってしまった・・!?)。

 「レフェリーに関する木村監督のコメントには、まったくもってアグリーだし、私も怒りを感じている・・ただ、これから質問することは、それとは全く関係のないことなので、冷静に答えていただければ幸いだ・・」

 そのとき木村浩吉監督は、耐えるように目を閉じていた。そんな彼の表情を見ながら、アッ・・と心のなかで舌打ちした。「冷静に答えていただければ・・」といった最後の部分は、彼の怒りに(火に)油を注いでしまうということになったったのかもしれない・・いや、そうに違いない。レフェリングについて、観ているこちらも憤っていた・・ということが言いたかったのですが、ちょっと軽率で無神経な言い回しになってしまった。スミマセン・・。にもかかわらず、木村浩吉監督は、大変「冷静」に私の質問に答えてくれました。感謝です。

 私の実質的な質問は後回しにするとして、ここでは、今日のレフェリングについて(私のコラムでもレフェリーを話題にするのは異例だけれど・・)ちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。まず一言。とにかく、笛を吹かないレフェリーだった。どちらかのチームに荷担しているというのではなく、とにかく、明らかなファールを「イージーに(無責任に)流し過ぎ」たと思うのですよ。

 私が確認しただけでも、すくなくとも10回ちかくはあったですかね、「エッ・・どうしてアレがファールじゃないの???」っていう感じのシーンが・・。よくあれでゲームが荒れなかった。まあ、両チームともに、「総体的には両チームに五分五分のジャッジ・・」だと冷静だったのかもしれないね。

 もしかしたらこのレフェリーは、ゲームの立ち上がりに、ファールの取り方で、自分がミスをしたと感じ、その後のジャッジで二の足を踏みつづけたということだったのかもしれない(ジャッジ基準をセットするスタートラインでつまづいてしまった!?)。だから、うまくホイッスルが吹けなくなってしまった!? さて・・

 とにかく、ビデオを見直すことで「現象(ジャッジ内容)」を、自分も納得するカタチでしっかりと確認し、(そのレフェリーの方だけではなく、審判委員会全体が)次の進歩のためのイメージトレーニング素材(クリエイティブな学習機会)にすることを願って止みません。

 ただ、ゲームを観ているこちらは、ホントにガッカリさせられてしまった。やっと試合が盛り上がりはじめたタイミングで、ゲーム展開にとって、とても重要な役割を演じていた山瀬功治が、バカげたミスジャッジで二枚目のイエローを喰らって退場させられてしまったんだからネ。

 そのシーンは、もう火を見るよりも明らかでしたよ。抜け出そうとした山瀬功治が、相手に身体を押さえられて転んだ・・誰もがファールだと思ったけれど、レフェリーは、そのファールにはまったく反応せず、逆に、倒れた山瀬功治がシミュレーションだとイエローを突きつけた・・フ〜〜・・

 木村浩吉監督も言っていたけれど、まさに、その退場がゲームを壊したと言っても過言じゃないね。まあ・・このテーマをこれ以上突っ込んでも、何も生まれないよな〜・・

 ゲームだけれど、両チームともに、素晴らしいディフェンスをベースにした優れた組織サッカーを展開した。そこでは、クリエイティブで忠実な追い込みをベースにした効果的なボール奪取勝負のオンパレード。

 でも、やはり局面の勝負では(個のチカラで僅かに上の!?)マリノスに一日の長がある。だから、全体的なイニシアチブは徐々にマリノスが握るようになっていった。そして(誰もがイメージしていたように!?)マリノスが攻め、しっかりと守りを固めた(消極的に下がるのではなく、猛禽類の鋭さで、高い位置でのボール奪取を狙いつづける!)レイソルが、蜂の一刺しのカウンター繰り出していく・・という緊迫したゲーム展開になっていく。

 前半では、シンプルなクロスを送り込んだり、勇気をもったドリブルシュートにトライするなど、マリノスの攻めには活気があったし、そんな危険な攻めを受け止めたレイソルも、負けじと必殺のカウンターを繰り出していった。

 レイソルのカウンターだけれど、それは、「優れたイメージ・シンクロ」という、明確に筋の通ったものだった。

 ボールホルダーは、明確に「マリノス守備ブロックの背後に広がる決定的スペース」をイメージし、最前線も「そこ」での決定的なパスレシーブを明確にイメージして飛び出していく。だから、二度ほど、カウンターから、まさに決定的と言えるチャンスを作り出した。ネルシーニョ監督の面目躍如といったところか・・

 そんな流れのなかで、ハーフタイムに(前半の出来に十分に満足していなかった!?)マリノス木村浩吉監督から、「誰かが、どこかで無理をしないと点が取れない・・どんどん仕掛けていこう・・」という檄(ゲキ)が飛んだという情報が入ってきた。そのことが、私の実質的な質問のテーマだったのですよ。

 「後半立ち上がりには、二本もつづけて、山瀬功治の決定的なドリブルシュートが飛び出した・・また(それが決勝ゴールになるはずだった!?)小宮山尊信のドリブルシュート&ゴールもあった・・ハーフタイムの、無理をしなければ・・という木村さんのゲキの意味は、そういうことをイメージした表現だったのだろうか・・?」
それに対して木村監督が、こんなニュアンスのことを言っていた。

 攻撃では変化が大事・・だからパターン的な練習はしない・・チャンスとなったら、それぞれが様々なアイデアを(勇気をもって)実現していかなければならない・・リスクにもチャレンジするなど、無理をしていかなければならない・・前半も、よく仕掛けていたが、ギリギリの限界までいったわけではない(最後のところで安全優先という守りの心理がはたらいていた!?)・・タテのポジションチェンジも出来ていなかった・・厳しいことは分かっているが、とにかく、三人目、四人目が、最前線を追い越していくようなシーンをもっと作らなければ、ホンモノのチャンスを作り出すことは出来ない・・そんな無理プレーのなかに、もちろん、危険を承知のドリブル勝負も含まれる・・もちろん無理が効かない選手には、そんなことは要求しない・・などなど・・

 後半の立ち上がりは、そんなゲキが効き、マリノスが、本当の意味でイニシアチブを握りはじめたのですよ。でも、そんなタイミングで・・山瀬功治に対するミスジャッジが・・。フ〜〜・・

 もちろんレイソルも、ものすごく気合いの乗った攻めを展開しましたよ。数的に優位に立つと、とたんに(気が緩んで!?)ダイナミズムが減退してしまうケースも多いのだけれど、この試合でのレイソルは、一人だけじゃなく、二人以上マリノスよりも多いのでは??・・なんて感じさせるくらいダイナミックな攻めを展開した(短い)時間帯もあった。

 今日は、このあたりで締めますが、レイソルは、「天才フランサ」というテーマも内包しているから興味深い。

 この試合では、最後の(勝負の)時間帯ではなく、後半のスタートからグラウンドに登場した。ちょっとビックリし、心配になった。それも、スピードがあり(攻守にわたって)運動量が豊富な田中順也に代わってだからネ。それまでのスピーディーなカウンターの流れが阻害されたり、組織プレーが停滞したりしてしまうんじゃないだろうか・・!?

 でもレイソルのプレーを観ていて、彼らは、フランサが「いないときの仕掛けの流れ」と、フランサが「いるときの仕掛けフロー」に関するイメージを、とてもうまく使い分けていると感じるようになりました。

 まあ、具体的にはまた今度・・ということにしたいけれど、とにかく、降格争いという厳しい状況から指揮を執ることになったネルシーニョ監督のウデに期待しましょう(彼の仕事内容は、とても魅力的な学習機会に違いない!)。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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