湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2009年4月18日、土曜日)

 

個のチカラの差!?・・(レイソルvsグランパス, 1-2)

 

レビュー
 
 まずレイソル対グランパス戦を簡単に振り返っておきます。

 両チームともに、しっかりとした中盤での組織(協力)プレスから素早く攻守を切り替えて仕掛けていく(スペースを突いていく・・)というイメージ。もちろん理想は効果的なショートカウンターでしょ。要は、相手が前へ重心が掛かっている状況で(攻め上がろうとしている状況で)ボールを奪い返し、薄くなった相手守備を振り回して直接的に相手ゴールに迫るようなカウンター攻撃です。

 そんな両チームだったけれど、実質的な内容では、やはりグランパスに一日の長があったというのがフェアな評価になるでしょうかね。全体的なシュート数には差が出なかったけれど、仕掛けの内容、そしてチャンスの量と「質」については個のチカラの差が出ていたということです。

 レイソルでは、個人勝負でチャンスメイクできるのはポポくらい。それに対してグランパスには、ダヴィがいるわ、マギヌンがいるわ(それに普通だったら玉田もいる)。

 たしかにサイドからの仕掛け(クロスでのチャンスメイク)や中央ゾーンからのコンビネーションなど、組織的な仕掛けでは互角だったけれど、そのような場合は、やはり最後母「個の才能」がモノを言うというわけです。

 この試合は、イギリス人ジャーナリスト、ジェレミー・ウォーカーと話しながら観ていた。ホントに彼はサッカーをよく知っている。それに、オレよりもよく喋るかも・・あははっ。そんな彼との会話の中で出てきた「ペネトレーション」という表現が興味深かった。

 彼も、ジェフのアレックス・ミラーを追いかけているのだけれど、分かり難いスコティッシュ訛りの発言のなかで、ミラー監督が、その表現をよく使うという話題になったのですよ。

 ペネトレーション。要は、相手守備ブロックの内部に深く侵入し、効果的な(守備にとっては危険な)仕掛けプロセスを繰り出すという意味です。まあ、ある程度フリーでボールを持つ「攻撃の起点」をベースに、決定的スペースを攻略していくなんていう表現もありですかね。

 そのペネトレーション状況を効果的に演出していくためには、大きく分けて、二つの手段・方法がある。

 一つは、パスを主体にした(ボールと人を動かす)組織プレー。そしてもう一つが、個の才能ベースの個人勝負プレー(勝負ドリブル、タメなどなど)。もちろん理想は、その二つを、うまくバランスさせたカタチで組み合わせていくこと。それがあれば、攻撃での最も重要なコンセプト(追求すべきイメージ目標)である、効果的な攻撃の変化もうまく演出できるようになるでしょう。そう、この試合でのグランパスのようにネ。

 前節のレッズ戦では、あまり良いところなく負けてしまったグランパスだったけれど(この試合でも立ち上がりの10分は、かなりレイソルにゲームを支配されチャンスも作られた!)徐々に持ち直していった。

 そこでもっとも大切だったのは、やはり何といっても守備意識の(要は意志のポテンシャルの)高揚ですかね。守備に対する意識が高揚したからこそ選手相互の信頼関係も深まり、だからこそ次の攻撃にも人数を掛けていけた。だからこそ、組織パスプレーが活性化し、だからこそ、個の勝負も、より有利なカタチで仕掛けていけた(そのような状況を、より頻繁に演出できた!)。だからこそ・・

 そんな、攻守にわたる優れたチームプレー(有機的なプレー連鎖)は、何といっても、優れた守備意識が絶対的なベースなのです。

 ゲーム立ち上がりのネガティブな流れを、選手一人ひとりが何とかしようと(!?)しっかりと守備での仕事を探しつづけることで、その「深み」から主体的に抜け出していったグランパス。それこそが、ホンモノの成功体感。彼らは、これからもっと良くなるに違いない。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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