湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2010年4月3日、土曜日)

 

疲れているのに、またまた長いコラムになってしまった(二ゲーム分です!)・・(MvsSP, 1-2)(RvsB, 2-1)

 

レビュー
 
 今日は、横浜から埼玉へと連チャン観戦しました。正直、とても疲れた。いまは、2230PMを少しまわったところだけれど、どこまで気力が維持できるか分からないから、とにかく、ポイントだけ、ショート、ショートで、まとめます。

 まず、マリノス対エスパルス。

 「もっと我々も自分たちのベースでサッカーをやりたかったが・・今シーズンのマリノスは好調だし、とてもタフで素晴らしいチームになっている・・」

 そんな長谷川健太監督のコメントが如実に物語っていたように、ゲームは、マリノスが終始イニシアチブを握りつづけました。シュート数で、マリノスの19本に対し、エスパルスは8本。もちろんそんなゲーム展開の背景には、前半5分にエスパルスの岡崎慎司が先制ゴールをブチ込んだという要因もあるけれど、私は、そのこと以上に、マリノスが「必然的に」エスパルスを圧倒したと思っているのですよ。

 それでもマリノスは、フリーキックからの一点しか返せなかった。マリノスのゲーム支配だけれど、彼らがイニシアチブを掌握するというゲームの流れは、岡?が挙げた先制ゴールの直後からタイムアップまで変わることはなかった。それでも彼らは、残り15分あたりまで、ほとんどと言っていいほど、決定的なチャンスを作り出せなかった。それは確かな事実。

 「・・そんなマリノスだったけれど、最後の15分あたりから、やっと決定的なチャンスを作り出せるようになったと思う・・もし木村さんが、私の見立てにアグリーならば、そのチャンスメイク内容の違いのバックボーンについて、どのように考えるか、お聞かせいただきたい・・もちろん、残り15分だし、負けているから、選手たちの全体的な運動量がアップするのは当然の成り行きでしょう・・だから、それ以外の要素についてコメントをいただければと思うのですが・・」

 そんな私の質問に対して、木村和司監督が、こんなニュアンスのことを言った。「そりゃ・・もう・・勝ちたい気持ちが出たということだと思う・・」

 それ以外にも、いろいろなことを言っていたけれど、骨子は、やはり「意志のチカラ」。要は、全体的な運動量のアップもさることながら、やはり「最後の半歩が出た」ということです。

 ・・最終シーンでの個人勝負でも、吹っ切れ方のレベルが違った・・だから、より高い確率で相手守備ブロックのスペースを効果的に攻略することが出来た・・そんなボール絡みの勝負プレーに連動するように、ボールがないところでの動きも、より多くのプレイヤーが、より思い切って『最後まで走り切る』ようなフリーランニングを繰り出していた・・また、三人目、四人目といった「相手の視野から消えるプレー」も、より多く繰り出していた・・そんなだから、チャンスの量と質がアップするのも当然の帰結だった・・

 まあ・・そういうことだね。それもまた、サッカーが「ホンモノの心理ゲーム」であることの証左ではありました。

 このゲームでは、もう一つのテーマがあった。エスパルスの二つのゴールを決めた岡崎慎司。

 長谷川健太監督に、こんなことを聞いてみた。「岡崎慎司のゴール・・ 相手ディフェンダーのクリアボールが、正確に彼の足許に転がってきたわけだが、あれは、偶発的なものだったのか、それとも必然的なファクターも内包していたのか・・岡崎慎司については、長谷川さんは熟知しているはずだから、そのことについてコメントをいただきたいのだが・・」

 「岡?のゴールは、決して偶然だけではなかった・・ここでは、それだけは言っておきたいですね・・」

 フムフム・・。実は、わたしもそう思うのですよ。アトランタオリンピックのブラジル戦で決勝ゴールを決めた伊東輝悦。この試合でも、途中交代で出場し、相変わらずの堅実プレーを魅せていたけれど、聞くところによれば、伊東輝悦が、アトランタでのブラジル戦で、決勝ゴールにつながるカウンターの流れに乗ったとき、彼は何か「匂うモノを感じた」のだとか。そう・・この試合での岡崎慎司も、何か「匂うモノ」を感じていたに違いない!? まあ、感覚的なモノ。でも、日本代表にとっては、とても重要なモノ。フムフム・・

 それにしても、岡崎慎司が挙げた二つの得点は、とても唐突だった(要は、それまでのゲームの流れからすれば、まったく想像もできなかった・・)という意味合いで、神様スクリプトのゴールだったと言えるかもしれないネ。あっと・・このニュアンスは、神様が、岡崎慎司の感性に、何らかの刺激を与えた・・ということですよ。

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 さて次は、レッズ対ベルマーレ。この試合は、レッズが完全にゲームを支配するという展開になりました。それでも結果は「2-1」。フムフム・・

 「フォルカーさんがおっしゃるように、とても良い内容のサッカーでゲームを支配し、チャンスも多く作り出した・・シュート数で、レッズの21本に対してベルマーレは6本・・とはいっても、レッズの得点は、PKと、フリーキックだけ・・そのフリーキックにしても、相手に当たってコースが変わるラッキーなモノだった・・これまで、何度も同じ質問をぶつけてきたが、フォルカーさんの分析内容の変化を把握するという意味でも、もう一度、同じ質問をしたい・・どうして日本サッカーは、チャンスをゴールに結びつけられないのだろうか?」

 そんな私の質問に対して・・。・・どんな絶対的チャンスでも、しっかり決める実力があっても、相手GKの読みによって防がれたり、自分自身の(余裕があり過ぎることでの!?)ミスで失敗してしまうこともある・・シュート決定率を高めていくためには、とにかく、成功した経験を積み重ね、自信を着実に深化させることが重要だ・・とにかく、失敗した過去を振り返るのではなく、次は絶対的に決めるといった、ポジティブシンキングで前を向いていくことが大事なのだ・・そんな姿勢があってはじめて、自信を、確固たるレベルへと引き上げることができる・・なんていうニュアンスのことを言っていた・・と思う。フムフム・・

 まあ・・自信というのがキーワードということだね。以前、世紀のゴールハンターと呼ばれたドイツのゲルト・ミュラーが、酒の席で、こんなことを言ったことがある。「シュートを打つ前に、ボールがゴールに吸い込まれているイメージを描けていないんだったら、シュートを決められるはずがネ〜じゃネ〜か!・・」。フムフム・・

 もう一つ。フォルカー・フィンケ監督が、「昨シーズン、私が勝ちたい思っていない等といった記事が多くのメディアで流布された・・それは、まったく正しくない・・わたしは、出来るならば、全てのゲームを勝ちたいと思っているのだ・・」と言った。

 そんな発言を聞いたら、こちらも質問せざるを得ないじゃありませんか。「その発言ですが、全てのゲームを勝ちたいと言われたフォルカーさんは、どのように勝ちたいと思っているのですか?」

 そんな私の質問に対し、フォルカー・フィンケ監督は、すぐに真意を理解し、こんなニュアンスのコメントをくれた。

 ・・我々のやり方については、もうここで詳しく語る必要はないと思う・・とにかく我々は、守備を固めて相手のミスを待つような戦い方ではなく、我々自身がしっかりとチャンスを作り出すという戦い方を志向する・・我々のような戦い方でも、相手のミスを待つような戦い方でも、どちらでも(その確率は、ケースバイケースで変わってくるかもしれないけれど!?)勝ち点を得られるわけだが、我々は、自分たちのやり方で勝つというベクトルを志向するのだ・・

 ナルホド・・。まさに、私が望んでいたコメントが返されてきた。良かった・・

 もう一つ。このゲームからは、レッズの二人の選手をピックアップしたい。一人は、阿部勇樹。そしてもう一人が、山田暢久。

 フォルカー・フィンケ監督も、この試合での阿部勇樹のパフォーマンスについて、特段に高く評価していたけれど、わたしも、このところの阿部勇樹のプレー振りに(その変身ぶりに!?)とても驚かされ、そして好感を持っているのですよ。

 特に、攻撃が積極的になった。積極的なだけではなく、ホンモノの「実効」が伴った効果的な(リスクチャレンジ・マインドに溢れた!)オフェンスプレーが目立つのです。いまは細貝萌と、守備的ハーフコンビを組むことが多いけれど、この二人は、とにかく積極的に攻めに参加していく。もちろん、一人が「行け」ば、もう一人は残るわけだけれど、そのバランスが、イーブンになっていると感じられるのですよ。

 以前の阿部勇樹だったら、とても遠慮がちに、攻めの流れをサポートする役目に徹していた(攻めの本流の陰に隠れていた)けれど、今では、自分が最終勝負の主役に躍り出たりしちゃうのですよ。いや・・ホント・・ビックリ・・です。

 たぶん阿部勇樹は、「闘莉王の呪縛」から解放されたんだろうね。「オイ・・オマエは残っていろ・・」なんて、自分ばかりが攻撃に参加し、阿部をバックアッパーとしてコキ使っていた闘莉王。そんな独裁者がいなくなったことで、様々な意味で「解放された」ということなんだろうね。

 もう一人が、その闘莉王の代わりに、坪井とセンターバックのコンビを組むことになった山田暢久。足が抜群に速いだけではなく(優れたスプリント力=だからジャンプ力も抜群!)、ヘディングの技術が高く、その競り合いでも無類の強さを発揮する山田暢久。局面(地上戦)でのボールの競り合い(駆け引き)など、その守備力は折り紙付きです。もちろん、まだまだ「集中を切らせたポカ」もあるけれど、全体的なパフォーマンスは、『高みで』安定してきたと思います。

 わたしは、以前から、山田暢久のことを「天才・・」と呼び、そのポテンシャルを高く評価してきました。でも、どうしても「集中を切らせたポカ」が目立ってしまうことで、徐々に「天才という形容詞」を使いにくくなってしまった。

 でも、ここにきて、センターバックという新しいタスクに悦びを見出しているように感じるのですよ(まあ以前にも何度も「そこ」で存在感を発揮していたわけだけれど・・)。それは、年齢的にも、まさに「はまり役」かもしれない。局面での勝負では無類の強さを発揮する山田暢久。後は、読みとか、ボールがないところでのマーキングの集中とか、正確なパスとか、プレーを「もっと」安定させれば言うことなしだね。

 



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