湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第一節(1998年3月21日)

ベルマーレvsヴェルディー(4-1)

レビュー

 昨日(1998年3月20日)アップデートされた「2002 Japan」のコラムで、アントラーズ、ジュビロ以外で私が注目しているチームの筆頭に、ヴェルディーを挙げました。どうしてなのかについては、そのコラムを参照していただきたいのですが、この試合の内容を見れば、私の予想が間違っていたと認めざるを得ません。まったく〜〜。

 強いチームのベースは「守備」です。そのことについては、これまで何度も述べてきたとおりですが、ヴェルディー大敗の原因は、まさにその「守備」にありました。エンリケ、林、柱谷で構成する、スリーバックの最終守備ラインが、まったくといっていいほど機能していなかったのです。それにはいくつかの原因があります。まず、基本的にはストッパーとなるべき、エンリケ、林のマーキングがあまりにもいい加減だったこと(それでも、後方からどんどんとフリーな選手が上がってきてしまうのですから、仕方なかったと言えないこともありませんがネ)。次に、誰がサイドをケアーするのか、あまりにもファジーだったことで、中田、松川などに、思いっきりそのスペースを活用されてしまったこと(エンリケ、林がサイドに引き出され、中央の守備が薄くなる・・そんな悪循環の繰り返し)。そして、モアシール、ヤスのボランチの守備も、受け身で、うまく機能していなかったことです(簡単に二列目の飛び出しを許していたし、ロングシュートをボンボン打たれてしまっていた)。これでは4点叩き込まれて当然といった守備内容ではありました。

 ニカノール監督についてですが、以前彼が所属していたクラブ関係者の方と話したことがあります。「彼は、守備については確固たるコンセプトはもっていないネ・・」。それがニカノール評だったのですが、正直言って、私はその言葉を信じていませんでした。プロコーチで、「守備のコンセプトを持たない」なんて信じられっこないじゃないですか。それはそうです。チーム作りの基本は守備の組織作りなんです。そのコンセプトを持たずして、どうしてチームを作るんだい・・??

 それでも、今日のヴェルディーの出来を見ていると、(もちろんスリーバックにした、何らかの意図はあったのでしょうが)ホントウにそうかもしれない・・という疑問が湧いてきちゃいました。何といっても、守備がグチャグチャに崩されていたという事実は残りますからネ。もしそうだとしたら、ヴェルディーの来シーズンは「二部?!」。そんなことは考えたくもありませんがネ。それでも・・これでは・・

 対するベルマーレは絶好調です。ヴェルディーとは対照的に、素晴らしくアクティブに機能する中盤守備。攻めに移れば、中田、松川を中心に、イマジネーション溢れるダイナミックプレーです。これでロペスが戻ってきたら・・。とはいっても、今日のヴェルディーの出来では、彼等のホントウの実力を推し量るわけにはいきませんよね。

 中田について一言。とにかく彼の、才能あふれるシンプルプレーは、試合ごとに磨きがかかっているように感じます。学習能力が高いことも「才能」ですから、中田の才能は「全方位」?!まあ、彼のような選手がどんどんと出てこなければ、世界をキャッチアップすること自体、無理ということになってしまうのですが、それにしても彼のプレーは見ていて楽しいことこのうえありません。どうしてヴェルディーは、(途中からでもいいから)彼にマンツーマンマークを付けなかったのでしょう。彼の今日の出来だったら、確実に「オールコートマンマーク」をつける意義はあったと思うのですが・・。

 さてヴェルディー。次の相手は、昨シーズンのグランドチャンピオン、ジュビロです。それまでに、守備をどのくらい立て直せるか。ニカノール監督の手腕に期待したいですネ。

レッズvsジェフ(3-2)

レビュー

 立ち上がりからスーパーペースのレッズ。その勢いが、そのままゴールにつながってしまいます。

 決めたのは、ゴール前の「制空権」を完全に支配した感のある、レッズ、ネイハイス。一点目は直接ヘッド、二点目は、こぼれ球を押し込んだゴールでした。この二点とも、左からの正確なコーナーキックがキッカケでした。キッカーは、「チキ」ことベギリスタイン。チキの出来は、昨シーズンとは見違えるほどアクティブで効果的なものでした。ただその後がいけない。まず、セットプレーから、こぼれたボールを正面から決められ、前半終了間際には、武田に対するファールでPKです。後半は、レッズがペースを握るものの、大柴の勝ち越し点以降は、パタッと動きが止まり、ジェフに攻め込まれ続けてしまいます(まあ、永井が入った最後の時間帯は、また盛り返しましたがネ・・)。

 今期のレッズの課題は、試合のペース配分、つまり、自分たちで試合のペースを「ある程度」コントロールできるようになることです。点を取ったら、相手のエネルギーをコントロールしてしまうくらい、落ちつき、確実なゲームはこびをできることが成功につながります。「ペース」のアップダウンが激しいサッカーでは、「ダウン状態」でのペースが落ち込みすぎてしまうのはどんなチームでも同じ。ただレベルの高いチームは、「ペースアップ」の幅を限りなく高くできる反面、「ペースダウン」の幅を「アンダー・コントロール」という幅に最小限に止め、相手に攻め込まれるような危ない場面を極力抑えてしまうことができるモノなのです。

 レッズの「ラインフォー」最終守備ライン、そして「ダイヤモンド型」の中盤システムですが、今日の相手だったジェフの出来がイマイチだったということで、まだ分からないというのが結論です。それでも、ボランチの福永、両サイドハーフの、チキとペトロヴィッチの出来は合格点。特にペトロヴィッチ。勝ち越しゴールでの、大柴へのセンタリングは、まさに職人芸といえるハイレベルのプレーでした。また守備でも、素晴らしいクリエイティビティーを発揮していました。

 さて、注目の小野です。確かに才能は十分です。まだ、「オレがいく!!」という積極的な姿勢にはほど遠かったとはいえ、ボールの受け方、持ち方、「視線フェイント」を駆使した正確で、ベストタイミングのパスなどなど、とにかく素晴らしいプレーヤーであることだけは確かです。ゲームに慣れていくにしたがって、パスだけではなく、「タメの演出」、「ドリブル突破」など、「自分主体のクリエイティブプレー」も出てくるに違いありません。もう一つの彼の課題は、守備です。確かに「参加する意志」は見せますが、読みをベースにした「本格参加」というレベルとはほど遠いものでした。モダンサッカーは、全員守備、全員攻撃がアタリマエ。ベルマーレ、中田の「クリエイティブで積極的な守備」を参考にしましょう。どちらにせよ、中田とは、良い意味でのライバル関係になるに違いない逸材なのですから・・。



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