湯浅健二の「J」ワンポイント


1997年シーズン・プレビュー

「ナビスコカップ」の試合結果、内容だけを前提に、各チームを分析します。 (チームの掲載順は、過去4年間の「通算勝率(ゲーム数に応じた勝率)」に準じます。また、各チームに関するコメントや予想は、第一ステージを通して変えないことにします。もし予想が当たらなかったとしてもです。ガンコな湯浅でした・・・。

ヴェルディー川崎
今シーズンの新戦力
横浜フリューゲルスから移籍した前園以外、目立った新戦力はないものの、武田、永井などの「出戻り組」に期待がかかる。
見どころ
なんといっても加藤新監督の手腕に注目。それは、カズ、前園などのスターだけではなく、自己主張の強い選手が多いヴェルディーを「闘う集団」にまとめあげることは、そんなに簡単な仕事ではないからです。ナビスコカップでは、「共通の理解をベースにした、チーム一丸サッカー」という意味で大きな課題を残しました。魅力的なサッカーで勝つ、という目的に向かって、チームをまとめることができるか・・注目です。

鹿島アントラーズ
今シーズンの新戦力
何といっても、ヴェルディーから移籍したビスマルクが注目。
見どころ
昨シーズンのチャンピオン。ただナビスコカップでは、まだ昨シーズンの調子を取り戻していない様子。ビスマルクとのコンビネーション(パス出しのタイミングの理解がまだできていない等)、黒崎、長谷川などの中心選手に本来の調子が戻っていないなど問題点もありますが、逆に、柳沢に代表される若手が順調に育っています。今シーズンも確実に優勝争いの中核をなすに違いありません。

横浜マリノス
今シーズンの新戦力
ワールドカップに出場した経験のあるアスカルゴルタ監督の手腕に期待。また元スペイン代表のサリナス、ジェフから移籍の城など、魅力的な新攻撃陣。
見どころ
日本代表GKに定着しそうな川口。井原、小村の全日本センターバックコンビ。今年も強い守備をベースに優勝争いにからんできそうです。また、新加入のサリナス、城を中心に、伸び盛りの安永、切り込み隊長、三浦など、より魅力的な攻撃をみせてくれそうですが、代表組がいなかったナビスコカップでは、守備の不安定さが、そのまま攻撃にも悪影響をおよぼしていました。やはり強いチームの基本は「安定した守備」であり、マリノスの強さのベースもそこにあることは今シーズンも変わりはありません。

清水エスパルス
今シーズンの新戦力
めだった新戦力はなし。逆に、マッサーロが帰国、永井がヴェルディーへ復帰、松原がジェフへ移籍と、はた目には戦力ダウンに見える・・・
見どころ
ナビスコカップ予選では、「戦力ダウン」という心配が的中したのか、予選敗退となってしまいました。それでも智将アルディレス監督のもと、はやいタマ離れからの「ボールをしっかりと動かす」クリエイティブな展開など、サッカーの質自体は上向いてきたとすることができます。私はまだ一試合しか見ていないので、これ以上のコメントは差し控えますが、追々しっかりと観察して、見どころ、弱点などを指摘したいと思います。

ジュビロ磐田
今シーズンの新戦力
なんといっても、南米を代表するディフェンダー、アジウソンの獲得が目立つ。スーパープレーヤー、ファネンブルクが帰国した後を埋める強力な助っ人です。
見どころ
ブラジル、グレミオの監督としてトヨタカップにも参戦したフェリペ監督。ジュビロの「ウリ」である「素早く流れるような展開力」に、より磨きをかけつつあります。昨年までは、「ボールはよく動くけれど、相手の決定的なスペースを突くなど、最後の崩しまでいかない」とよく言われました。今シーズンは、気合いの入り方が違うドゥンガ、スキラッチを中心に、中山、名波などの日本選手達も、より大胆に「リスク」にチャレンジしていくに違いありません。グランパスと並んで、今シーズン、私がイチ押しのチームです。

柏レイソル
今シーズンの新戦力
帰国したカレッカのかわりに入団した新戦力、ジャメーリ。エジウソンがゴールを量産するためには欠かせないキープレーヤーだが、彼自身もゴール感覚に優れている。
見どころ
ナビスコカップを見る限り、今シーズンも台風の目になりそうな予感。それでもエジウソンが抑えられた場合、攻撃が手詰まりになってしまう傾向があります。そこで、日本のサッカーに馴れてきたジャメーリや、若手の酒井、最近、高い次元でプレーが安定してきた加藤などの活躍が重要になってくるというわけです。ともあれ、アントニオを中心に安定してきた守備力をベースに、優勝戦線の一角を担うことだけは確かです。

名古屋グランパス
今シーズンの新戦力
まだ21歳と、若いリカルジーニョが、入団テストを経て新戦力に加わった。それ以外は、基本的に昨シーズンと変更なしだが、攻守両方に非凡な能力を発揮するリカルジーニョは、「世界の」ストイコビッチの心強いパートナーとなり得る存在です。
見どころ
私が考える優勝候補の筆頭です。ナビスコカップ予選の最終戦はともかく、とにかく全般的に試合内容がいいというのがその根拠です。「あの」ベンゲルを引き継ぐことはどんな監督にとっても簡単ではありません。それを十分にこなしたケイロス監督の手腕は大したものです。この、ドイツでも評価の高いポルトガル人プロコーチは、見事にベンゲルの「チーム戦術」を引き継ぎ、そして発展させています。ただ一つ気がかりなのが、押し詰まった、ヨーロッパのワールドカップ予選の日程です。新ユーゴスラビア主将でもあるストイコビッチが抜けた場合の戦力ダウンをどのように穴埋めしていくか。「4-4-2」システムをベースにした「ボックス守備」、全員での積極的な守備と攻撃など、チームプレーに徹することをコンセプトにするグランパスの真価が問われます。

横浜フリューゲルス
今シーズンの新戦力
強力なストライカー、エバイールが抜けた穴を、出戻りのバウベルが埋めることができるか・・・。
見どころ
前園はヴェルディーへ移籍してしまいましたが、それが本当にフリューゲルスにとっての戦力ダウンなのかどうか・・。たしかに前園は「日本を代表する才能」ですが、才能が正しい方向へ伸びない場合、チームにとってはブレーキになってしまいます。そのことは世界のサッカーの歴史が証明しています。サッカーはチームゲーム。それも、一人の「プレーの停滞」がチーム全体のパフォーマンスを落ち込ませてしまうほど、11人全員の、戦術コンセプトに基づいた「一丸プレー」が重要になります。もし前園が、マラドーナのような「10年に一人出るかどうかという世界の才能」ならばハナシは別なのですが・・・。前園が抜けたことはともかく、ナビスコカップを見る限りでは前途多難を感じさせるフリューゲルスでした。

サンフレッチェ広島
今シーズンの新戦力
元オーストラリア代表監督、トムソン氏が連れてきた二人のオーストラリア代表選手、ポポヴィッチとアーノルド。日本のサッカーでどのくらい活躍できるかは未知数。
見どころ
これで、ノ・ジュンユン、サントスを含めて外国人選手は4人になりました。そして監督は、オーストラリアからきたトムソン氏。特に、南米的なマジシャンぶりを発揮するサントスの、チーム内でのポジションが微妙なものになる可能性があります。トムソン氏が、昔のオーストラリアサッカーのように、パワープレーを前面に押し出すようなこと(ボールを取ったらまず前方へ放り込む等)はないとは思いますが・・。サントスが見せた作シーズンのマジックをまた見たいと思っているのは私だけではないに違いありません。とにかく、中盤での組立を省略したサッカーだけはノーサンキューです。

ジェフ市原
今シーズンの新戦力
ユーゴスラビア出身のラデ。エスパルスから移籍の松原。
見どころ
ナビスコカップでは、全員でのチェイシング(ボールを持つ相手の追い込み)、ボールを奪い返してからの、ボールを持たないプレーヤーのフリーランニング(ボールのないところでのパスをもらったり、味方にスペースを作る動き)など、ビックリするほど積極的なサッカーを展開しました。新戦力のラデも、いたるところでクリエイティブで「忠実な」プレー。全員が、フェルシュライエン新監督の「チーム戦術」を理解しようと努力する積極的な姿勢を見せています。監督の手腕が一流だと感じます。今シーズンのジェフは大注目です。

ベルマーレ平塚
今シーズンの新戦力
本田技研から移籍した、JFL得点王、ロペス。ブラジル人センターバック、クラウジオ。
見どころ
なんといっても、日本へ帰化申請中のロペス選手のプレーに注目です。とはいっても、サッカーのベースは守備力。新加入のクラウジオ、元全日本の名塚、定評のあるボランチ、シモン、田坂だけではなく、中盤のキープレーヤーとして期待が大きい中田も積極的に守備参加しなければ、ベルマーレの魅力である「自由奔放な攻撃」が不自由なものになってしまうことは確実。強固な安定守備から、クリエイティブな攻撃を展開する・・、それができなければ、優勝戦線に残ることは難しいかも。

浦和レッズ
今シーズンの新戦力
ガンバから移籍してきた礒貝。元オーストリア代表、バウアー。
見どころ
4年間の「総合勝率」では「まだ下位」のレッズ。それでも最近の2年間は、優勝争いにも顔を出すなど大活躍でした。総合勝率でランクアップするのも時間の問題です。今年は、新監督ケッペル氏のもと、着々とチーム作りが進んでいます。「中には自分の能力を100%発揮していない、発揮しようとしないプレーヤーがいる。私はそのような選手は使わない」と公言してはばからないケッペル氏。その「闘う姿勢」がチームに好影響をもたらさないはずはありません。また彼の、(選手達を大人として扱うような)コミュニケーションを重視する姿勢も選手の「プロ意識」を高めているようです。プロ選手は一人ひとりが「社長さん」。そんなプロ意識が徹底されれば、今シーズンの活躍のベースとなるに違いありません。そんな効果が如実にあらわれたのが、地元、駒場で行われたナビスコカップ予選、対セレッソ戦でした。とにかくその試合では、攻守にわたり、選手全員が最高のパフォーマンスを披露しました。意識が高くなければ決してできないサッカーです。結局グランドで闘うのは選手達なのです。このサッカーを続けていくことができれば優勝も現実的・・、そう感じさせられた試合内容でした。この試合以来、私にとって、レッズも優勝候補の最右翼になってしまいました。

セレッソ大阪
今シーズンの新戦力
韓国代表、コ・ジョンウン。
見どころ
さすがに韓国のスーパースター。ナビスコカップでは「コ・ジョンウン」効果が存分に発揮されました。ただ逆に、彼をハードに抑えるというターゲットにされ始めたことも事実。日本人選手のハードマークにはやく馴れることが必要です。それでもリーグか始まれば森島も帰ってきます。コ・ジョンウンと森島のコンビは破壊力十分です。ナビスコカップでの「アクティブ・サッカー」を続けることができれば、ダークホース的な存在になるかもしれません。

ガンバ大阪
今シーズンの新戦力
カメルーン代表、エムボマ。彼は、「あの」レオナルドが移籍したパリ・サンジェルマンでもエースを張っていました。そして、ユーゴスラビアの技巧派、クルプニ。彼のチャンスメーク能力に期待。
見どころ
とにかく「浪速の黒豹、エムボマ」と「次代のストイコビッチ、クルプニ」。この二人によってチーム全体が自信にあふれるプレーをやり始めました。頼り甲斐のある選手が入った場合の、チーム全体におよぶ「心理的効果」は計り知れないものがあります。サッカーが心理ゲームであることの証明といったところでしょうか。とはいっても、まだ守備など不安要素はあります。また、守備の重鎮ツベイバと、現役クロアチア代表の、ムラデノビッチも退団してしまいました。チームを引き継いで2年目になるクゼ監督。今年は彼にとっても勝負の年になります。

アビスパ福岡
今シーズンの新戦力
アルゼンチン代表、バスケス。アルゼンチンの若手、リエップ。ジェフから移籍の秋葉。
見どころ
今年から監督に就任したパチャメ氏。アルゼンチンの強豪、エスツディアンテスを3年連続で南米チャンピオンに導くなど、監督としての実績は十分です。九州で唯一の「J」チーム、アビスパ。「J」の風を全国に吹きわたらせるためにも非常に重要なチーム。活躍を期待するのは私だけではないはずです。

京都パープルサンガ
今シーズンの新戦力
DFの中心になることを期待される、カポネ。攻撃の核弾頭、クレーベル。
見どころ
昨年は、新記録の連敗がたたり、結局最下位でシーズンを終了しました。それでも、ラモスが加入してからは自信あふれるゲームを展開するだけではなく、勝負強いところも見せるなど、次のシーズンに期待をいだかせる内容でした。ただ今シーズンのナビスコカップ予選では、ラモスがいなかったこともあるのでしょうか、昨シーズンの「自信のなさ」が見えかくれするような内容に終始しました。ペドロ・ローシャ監督も、ラモスのような精神的支柱になる選手がいないと嘆き節。それでは「ネガティブ思考」。とにかくポジティブな発想がなければ決して「積極的なプレー」は出てきません。ポジティブになれば、自分たちの実力の「120%」を発揮してしまうのが人間なのです。

ヴィッセル神戸
今シーズンの新戦力
昨シーズンから目立った補強はなし。
見どころ
ヴィッセルの場合、とにかくラウドルップです。ヨーロッパでの彼の全盛期を知っている私は、いまの彼のパフォーマンスには納得できませんが、それでもヴィッセルの今シーズンのカギを握るのが彼であることは衆目の一致するところ。また、大型ストライカーのジアード、スイスの英雄的ディフェンダー、ビッケル、チームの精神的リーダー、永島など、多彩な才能とパーソナリティーが揃っています。そしてそれをまとめるのが、これまた「スーパーパーソナリティー」のバクスター監督。彼の、理論に裏打ちされたチーム作りには大いなる期待を抱いています。ナビスコカップ最終戦では、非常に良いゲームで勝利したと聞いています。それが「J」開幕へ向けた大きなステップになればいいのですが・・・。



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