今回は、昨年とは違って「ドライコンディション」ですから、本当に面白いドラマが展開されました。まず250ccクラス。そこでは、シーズンポイントで首位をいくオリビエ・ジャックを後目に、日本人ライダーの加藤(前戦のブラジルGPで優勝!)と、ポイントではまだ「自力での年間チャンプ」の可能性を残している中野が、最後の最後まで、ギリギリの優勝バトルを展開しました。そんな緊迫した状況でも、交互に「コースレコード」を塗り替えてしまう二人。「リスク・チャレンジ姿勢」がバリバリではありませんか。それはもう、手に汗握る闘いではありました(最後は、ホンダの加藤が逃げ切って年間チャンプへの望みをつなぐ・・彼は二連勝!)。
そして500ccクラス。今回の「もてぎグランプリ」では、既に年間チャンプを決めているケニー・ロバーツが、安定した走りで、ブッチ切りの優勝を飾ったのですが、面白かったのが「イタリア人同士のライバル対決」・・。ヤマハのビアッジと、ホンダの天才ライダー、ロッシとの、二位を争う一騎打ちでした。彼らは、最後の最後まで抜きつ抜かれつの大バトルを展開したのです(最終ラップには、二度も順位が入れ替わってしまって・・)。そして最終コーナーの手前で、再びリードを奪ったロッシが、そのまま「二位」でチェッカーを受けます。素晴らしいエキサイティングレース。しばし疲れを忘れ、モーターレースでの「プロたち」の肉を切らせて骨を断つ闘いに没頭してしまった湯浅でした。
アッ、そうそう、このコラムではサウジ戦のことを書くんだっけ・・。
昨日は、というか今朝(15日の日曜日)は、あまりにも疲れていたために詳しく取り上げることができなかったように思うのですが、オートバイGPから帰宅し、昨日のビデオを見返してみて、改めて名波の「チームへの貢献度の高さ」を確認しました。
たしかに守備における「一対一」での強さ(フィジカル&ボールを奪いかえす技術)では課題を抱えています。それでも「読みベース」のクリエイティブな積極守備の姿勢は頼もしい限り。至る所に顔を出しては、守備で抜群の貢献を魅せます。それが、彼のプレーにおける「発想のスタートライン」ということなのでしょう。まず相手からボールを奪いかえすこと(相手の攻撃を遅らせたり、味方に「次」でボールを奪いかえさせる守備プレー)に全精力を傾ける・・、そして自分のところでボールを奪いかえせたら、すぐに起点になり(素早く・広い)効果的な攻めを演出する・・それです。
また攻撃では、自らが組み立ての起点になるだけではなく、常に「ボールがないところでのクリエイティブプレー(クリエイティブなムダ走り!)」にも積極的に取り組みます。サスガにセリエで鍛えられた選手。中盤における「自ら仕事を探す姿勢」というか、チームメイトとの「使い・使われる」というメカニズムを心底理解した「チーム貢献プレー」ではあります。
彼は、中村と頻繁にポジションをチェンジしていたのですが、そんな名波の、攻守にわたる「積極姿勢」に、若い中村が刺激されないはずがありません。たしかに基本的なポジションは左ウイングバックでしたが、その基本的なタスク(守備)を忠実にこなしながら、そこからの積極的な飛び出し、そこを基点にした組み立てへ積極的に参加しようとする姿勢に、中村の才能がどんどんと大輪の花を咲かせつつあることを感じます。
まず積極的な守備からゲームに入っていく・・、そのことで逆に「攻撃の才能」を何倍にも発展させることができる・・。そんな「世界の常識」を忠実に実践する名波からの「刺激」。彼らの「相互に刺激し合う関係」こそ、チームメイト同士の理想的な切磋琢磨・・ということです。
さて最後に、フラットスリーについて短く。この試合では、「フラットだからこその崩れ」は、ほとんどありませんでした。それはサウジの攻めがあまりにも単純だったからです。たしかに彼らも「ラインの間」を抜いたり、空いたサイドを突いていこうとする意識あるのですが、いかんせんそこに至るまでの「プロセス」がカッタるい。ダイレクトを何本かミックスするなかでスルーパスを狙うだけではなく、決定的スペースを狙う最前線の誰かが、常に決定的なフリーランニングを仕掛けていかなければ(クリエイティブなムダ走りをしなければ)、フラットラインを崩せるはずがありません。
また日本代表には、パスの出所を効果的に抑え続ける、稲本という頼りになるボランチがいますし、名波(中村)も、(ボールがないところでも)忠実に(最後まで)守備に参加してきますからネ。頼もしい・・
もちろん、進展する「フラットラインの安定度」に、オリンピックという本物の舞台でのギリギリの経験が生きていないハズがありません。
日本は本当に強くなりました。湯浅は、この大会で日本代表と対等にわたりあえるとしたら、それはイランと韓国だけだと断言します(他チームの試合を一通り見た評価です)。ではまた・・