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「トーナメント」でも安定した強さを発揮・・素晴らしい・・日本代表対イラク(4-1)・・(2000年10月25日、水曜日)


さて「トーナメント」。一発ノックアウトの試合です・・

 相手は、「個人的なチカラ」では日本に優るとも劣らないイラク。ドーハのことなどはもう忘れましたが、彼らは、今でも中東の強豪なのです。

 そのイラクが、試合早々から仕掛けてきました。どんどんとプレッシャーをかけ、前へ、前へと押し上げてきたのです。それに対して日本の守備ブロックの動きは「まだ」鈍い。そして、日本の左サイドを何度も突破され、そして最後は、そこからのセンタリングがこぼれたところを(森岡のヘディングクリアがピタリと相手の足許へ飛んでしまう!)、10番のジャシムに豪快に先制ゴールを決められてしまいました。

 でも私は、その瞬間「よし、これでチャレンジへの心理ベースができた・・」と、とっさに思ったものです。私は、いまの日本代表の選手たちが、どんな逆境からでもはい上がるチカラを備えていると確信しているのです。

 そして案の定、それ以降は「目を覚ました(?!)」日本代表が、試合を牛耳ります。もちろん、一点ビハインドの日本が積極的に攻め上がりはじめたということもあるし、一点先行したイラクの勢いがちょっと落ち着いたということもあったのでしょうが・・

 それにしても、7分に挙げた同点ゴールの見事だったこと・・。中村からの正確なフリーキックもそうだったのですが、それを「左足サイドキック」でズバッとゴールへたたき込んだ名波のシュート。本当に「目の覚めるような・・」という表現がピッタリとくる豪快なゴールではありました。

 そして、続く11分には、森島が「0.8点」、高原が「0.2点」という追加ゴールが決まります(もちろん高原のダイレクトでの「流し込みシュート」は見事でしたが・・)。

 このゴールでは、森島の「新しい面」を見る気がしたものです。相手のミスパスを奪った森島。そこでの彼は、「迷わず」勝負の超速ドリブルをスタートします。以前の彼ならば、(少し、キープ的なドリブルで待ってから)まず誰かにボールを預けて、自身は決定的スペースへ走り抜けて「リターンパス」をもらう・・というのが典型だったのに、このプレーでは、本当に、ごく当然のようにドリブル勝負に入り、そしてシュートまでいってしまうのです(シュートが相手に当たって跳ね返ったところを高原へラストパス!)。

 その後も森島は、例によっての『攻守にわたる』ダイナミックなプレー姿勢を基盤に、どんどんと決定的スペースへ抜け出たり、起点になったら(ある程度フリーでボールを持ったら)、ドリブル勝負や、タメからのラストパスを狙うなど、それまでとはひと味もふた味も違う「幅広い」プレーを展開します。彼も、勝負のトーナメントを通じ、また若手の大きな成果に刺激されることで、確実に「発展」していることを肌で感じます。

 オリンピックでは、高原が、明神が、はたまた中澤が「レベルを超えたブレイクスルー」を成し遂げただけではなく、選手全員が、各人各様に、何らかの「キッカケ」を掴みました。それが、彼らの「自信に満ちたプレー」のベースになっているのです。そして「中堅」にとっての大いなる刺激にも・・。そう、名波、森島、西澤などの中堅選手たちです。

 スポーツサイト、「スポーツナビゲーション」での今回のテーマは、「挑戦し続ける(挑戦マインドを発展させ続ける)選手たち」、そしてその挑戦マインドを「挑発」し続けるフィリップ(選手たちの挑戦マインドはフィリップにも向けられている!!)・・というものでした。

 試合ですが、その後も、前半28分の、これまた名波のスーパー「技あり」ゴール、後半17分に明神が放ったスーパーロングシュート(これが四点目・・彼自身にとっての代表初ゴール!)など、日本代表がどんどんと点差を広げていくだけではなく、何度も、本当に何度もイラク守備ブロックを完全に崩した決定的チャンスを作り続けます。

 点差だけではなく、内容でもイラクを圧倒した日本代表。本当に頼もしい限りではありませんか・・

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 決勝トーナメントは、それまでとは全く違った戦いになる・・それは当たり前です。一発勝負ですからネ。そして相手は、アジアではトップレベルのイラク。そんな「試合の背景」、「相手」という厳しい要素をふまえれば、「異様」とまでも感じられる、日本の若武者たちが披露する高質なサッカーではありました。

 これまでの(オリンピックやワールドカップ)アジア予選、アジア大会などの内容とは、明らかに次元の違う「アジアでの戦い」を日本は披露しているのです。

 日本は強くなった・・?! もちろん選手たちの実力(身体的、技術的、戦術的なチカラ)はアップしています。でも私は、それにも増して、彼らが「やっと」自分たちの実力を、どんな相手に対してでも余すところなく発揮できるくらいに「心理・精神的」にも成長した・・と思うのです。もちろん、(どんどんと僅差になっているとはいえ)実力に差がある世界トップネーションとの試合では、勝つことは容易ではないでしょうが・・

 組織プレー(ボールの動き)も、よりクリエイティブに、素早く、広くなったことで、相手守備ブロックに、「予測されるスキ」を与えない・・、そしてそれにも増して、ココゾ! というチャンスでの「個人勝負」にも格段の冴えが見えるようになっている・・。

 フィリップの言う「7割の組織と3割の個人」のバランス・・ということですかネ。

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 個人的には、もう全員が良いプレーを披露しました。最後の20分くらいに登場した中盤の選手たちを除いて・・

 これは前回のコラムでも書いたことなのですが、とにかく才能あふれる「彼ら」には、「うまい選手」と「良い選手」の違いを心の底から自覚して欲しいと願って止まない湯浅なのです。彼らほどの才能が発展を止めてしまう・・それは、彼ら自身にとっての大きなマイナスというだけではなく、日本サッカー全体にとっても大きな損失なのです。

 簡単に言えば、「もっと積極的に走ろう(積極的に攻守のシーンに絡んでいこう)!」、「サッカーが走るボールゲームであることを心底自覚しよう!」、もっと言えば、「走ることが自然な心理環境になるくらい(オートマティゼーション・・といいます)の質の高いランニングトレーニングを根気強く繰りかえそう!」、ということです。

 私は、フットボールネーションにおいて、それこそ何百人という「天才」たちの「自滅」を目の当たりにしてきました。また逆に、死にかけた天才たちの「再生」も見てきました。要は、良いコーチとの巡り会いということなのですが・・、まあそれも人生ですから・・

 ちょっとハナシが前後してしまったようにも感じますが、とにかく今は、このままアップデートすることにします。後で読み直して、追加のコラムを書くかもしれませんが・・。では、この辺で・・




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