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「逆境」を跳ね返した日本代表・・これでまた「一皮」むけた・・日本代表VS中国(3-2)・・(2000年10月27日、金曜日)


本日のHPですが、ちょっと体調不良で(こんなことは今までになかったのに・・)、ちょっと書いては(頭痛などのため)目を閉じるようなことを繰りかえしていたのですが、結局、とにかくまず、少しでもいいから眠るのが一番・・と決心しベッドに入ることにしました。ということで、アップが遅くなって申し訳ない。

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 この試合でまず感じたことは、たしにかミルチノヴィッチは、優秀なプロコーチだな・・ということです。

 彼のゲームプランは、中盤を厚く守り、スピードを生かしたカウンターを仕掛けていく(中国は、そのための高い個人能力を備えている)・・簡単にいえばそんなところでしょうが、それにも「細部にわたるクレバーな(選手に対する)意識付け」が光っていました。

 まずなんといっても、中盤でのクレバーな「ポジショニングバランスと追い込み」。人数をかけるだけではなく、守備に入る選手たちのポジショニングを、ボールの位置をベースに、うまくバランスさせるのです。ですから、日本代表の生命線ともいえる、素早く、広いボールの動きが、(スパッ、スパッとパスレシーバーがマークされてしまうことによって)かなり制限されてしまって・・

 そして、その強化守備をベースにした彼らの「攻め方」です。キーワードは、カウンター攻撃・・ロングシュート・・サイドチェンジ・・。

 身体が大きいだけではなく、足も速い彼らの勝負ドリブルは、とにかく迫力満点。カウンターでも、最後の仕掛け段階におけるドリブル突破チャレンジは危険そのものでした。そしてロングシュート。これも、ミルチノヴィッチから「意識付け」されていたに違いありません。「ヤツらの最終ラインは、ドリブルで突っかけてくる選手には、下がり気味に対応するから、絶対に前にスペースができる・・そこを狙って、一発ロングシュートをかませ!」・・ってなもんです。

 そしてサイドチェンジ・・

 このことは、スポーツサイト、「スポーツナビゲーション」でも書いたのですが、両チームともに、守備ブロックがボールサイドに寄ることで(逆サイドにスペースができやすい!)、うまいタイミングのサイドチェンジが「もの凄く」有効だったのです。

 ゴールの経過を見てみましょうか・・。

 まず前半21分の森島のゴール(自殺点ですが、これは森島のゴールです!!)。松田のクレバーなドリブルもあって(相手守備ブロックが中央に寄る)、一瞬、左サイドで、まったくフリーでボールを持った中村から、「間髪を入れないタイミング」のサイドチェンジパスが高原へ・・、ダイレクトボレーで折り返したところを森島が(?!)決めた・・。ということで、これは「サイドチェンジ・ゴール」。

 次の中国の同点ゴールも、まったく同じ展開でのゴール(左サイドからのサイドチェンジをヘディングで折り返し、中央から決められた!)。

 後半3分の中国のゴール(ドリブルシュート)、同7分の、西澤のゴール(中村のワールドクラスフリーキックと、西澤の突っ込みに乾杯!!)はチョット趣は異にしますが、後半15分に挙げた明神の決勝ゴールも、西澤のサイドチェンジ「気味」の、右サイドでフリーになっていた高原へのパスがキッカケになりました。

 ということで、この試合は、「コンパクト・プレス」を標榜するモダンサッカーにおける、攻撃での重要なキーワードの一つが、『サイドチェンジ』ということの証明のようなゲームだったとすることもできそうです(まあ当たり前ではありますが・・)。

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 それにしてもこの試合は、いまの日本代表にとって、「心理・精神的」にもの凄く重要な意味をもっていたと思います。

 先制ゴールは奪った・・、でもその9分後には、守備ブロックが完全に崩されて同点ゴールをブチ込まれてしまう・・、またそのすぐ後には、同じようなカタチでもう一度、決定的なチャンスを作り出されてしまう・・(中国に自信を持たせ、逆に日本の不安が増長した?!)、そして後半3分の、中国の勝ち越しゴール・・。日本代表は、たしかに全体的にボールを支配してはいるが、中国守備ブロックを崩しきるところまではいけない・・。

 そこまでは、明らかに中国のペースでした。日本代表は、ミルチノヴィッチの術中に完璧にはまり込んでいたのです。ただ、この後半3分の勝ち越しゴールが、逆に、日本チームを覚醒させました。

 ちょっと、「仕掛け」にダイナミズムが欠けていた彼らでしたが、このゴールをキッカケに、「吹っ切れたサッカー」を展開しはじめたのです。これは判断が分かれるところでしょうが、私は、日本の「ボールの動き」が一段ギアアップしたことによって、中国、中盤守備の「足」を止めた・・と思っているのです。

 日本のツートップ、二列目の「仕掛け(積極的なリスクチャレンジ)」が、より目立つようになり、そのことで中国の中盤・最終ラインの守備が振り回されはじめたと思うのです。

 逆境に陥ったら、逆に「ギア・アップ」させることができる・・素晴らしいじゃありませんか・・

 西澤も、トップ中央でボールを受けたら、(それまでのように横に展開するのではなく)そこからの反転での単独突破にトライしはじめていた・・。それが、中国のファールを誘ったのです。そして中村の才能を証明する、鳥肌が立つほど美しいフリーキックと、ギリギリの執念を感じさせる西澤の「突っ込み(バーに跳ね返ったボールをヘディングでゴール!)」。素晴らしい・・

 そのゴールの後は、完全に中国守備陣が「振り回され」はじめます。日本の、前へのチャレンジが急になってきたことに加え、リードしたのに、すぐに追いつかれてしまった・・という心理的ショックが重なった結果・・?!

 それでも、後半15分に挙げた、明神の、自分のミスを解消する「スーパーゴール」の後は、「失うものが何もなくなった」中国が、ギリギリの大パワーで日本を押し込んでくるような「雰囲気」だけは醸成されてきていました。ただ実際には・・

 強い相手・・一点しかリードしていない・・。そんな状況では、必ず最後には、「震える」ような時間帯が訪れるものです。私も、「ここから中国が、ガンガンに押し込んでくるんだろうな・・」なんて思っていたものです。ただ、我らが日本代表は、そんな「期待」にも肩すかしを食らわせてしまって・・

 とにかく彼らの「落ち着き」は、本当にレベルを超えていたのです。それも、「世界の舞台」で培った、(アジアの?!)レベルを超えた「自信」の為せるワザ・・。本当に、日本代表のことを頼もしく感じたものです。

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 さて決勝はサウジアラビア。彼らは、監督が交代し、大会でもまれていく中で、かなり調子を上げています。また日本には、中盤守備のリーダーであり「ダイナモ」である稲本が、出場停止です。

 アジアカップ初戦での「屈辱的な敗戦」もあって、サウジは、はじめからガンガンと前へくるかもしれませんし(それは逆に日本の大チャンス!)、この試合での中国の戦術をコピーするかもしれません。それは分かりませんが、まあ、「非常にうまくいった」中国の戦術をコピーする・・というのが妥当なところでしょう。彼らにとっても、それは得意な戦術ですからネ。

 さて、本当に「決勝」が楽しみになってきたじゃありませんか・・




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