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「内容」に納得できない!・・日本代表vsボリビア代表(2−0)・・(2000年6月18日、日曜日)


湯浅は、ちょっと憤っています。勝つには勝ったけれど、内容にまったく不満なのです。

 相手のボリビアは、明らかに日本よりもチカラが劣ります。だから守備を強化してきました。また、雨上がりで蒸し暑くもあります。ただ、だからといって足が止まり気味の「リアクションサッカー」になってしまう理由にはなりません。どのようなサッカーをやるかに関する「基本的な共通理解」が出来ていなかったのか・・

 私がいっているのは、「ファイナルの仕掛けに対する姿勢」のことです。日本代表が、ホンモノの仕掛けを魅せたのは、ほんの二〜三度だけ。攻撃の最終段階における仕掛けには、常に二列目、三列目がタイミングよく積極的に絡んでいかなければなりません。それが、日本代表の最前線プレーヤーたちが後方からボールを受けたにもかかわらず、結局は「孤立」してしまうシーンを何度目撃したことか。

 蒸し暑いのですから、無計画に動き回れなどといっているのではありません。もっと「メリハリの効いた」リズムの変化が必要だったといっているのです。それが見えてこない。だから、ボリビア最終守備ラインの「ウラ」が取れない。相手守備ブロックを振り回した(ボール&プレーウォッチャーにしてしまった)プレーは、柳沢の二点目のシーンと、後半に森島がシュートまでいったシーンくらいでした。

 柳沢の二点目のシーンですが、ダイレクトパスが三回つながって柳沢へラストパスが出たとき(三角形を描いた素晴らしいパスワーク)、柳沢の周りを、爆発的なフリーランニングで回り込んだ選手がいました。森島です。そのためにボリビア守備陣の「意識」が引きつけられ、最終的に柳沢がフリーで抜け出せた・・という見方もできるのです。

 それなのです。私は、「仕掛けのワンプレー」と呼びますが、組み立て段階では(ファウンデーションでは)、素早く、広くボールを動かして「起点(ある程度フリーでボールを持つ選手)」を作りだし、瞬間的にペースアップし、組織的に、または個人勝負で、最終チャレンジを仕掛けていくプレーのことです。

 個人的な勝負でも、組織的な仕掛けでも、その「起点(ある程度フリーでボールをもつ選手)」は、常に「オレを中心にフィニッシュまで行ってやる!」という、強い意志を持たなければなりません。もちろん、その起点が「タメ」になってラストスルーパスが出るという場面もあるでしょうが、基本は、あくまでも常に起点を「コア」にしたフィニッシュなのです。

 それが、まったくといっていいほど出てきません。もちろん森島のプレー姿勢には、素晴らしい「仕掛けマインド」が込められているわけですが、いかんせん「周り」がそれに付いてこなければ・・

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 試合最初の時間帯、日本代表のプレーは、カッタルいの一言でした。フラストレーションのたまること・・。私は、中盤の「ジェネレーター(発電器)たち」の中でも、単なる「つなぎプレー」に終始していた奧に不満をつのらせていました。もちろん中村も、稲本も良い出来ではありません。ただ、「自分主体の仕掛けプレー」という意味では、「才能のある」奧に、もっとも不満だったのです。

 ところが、フィリップ・トルシエ監督が交代させたのは、中村俊輔。これには「レベルを超えた刺激」という意味が込められていたんでしょう。「機軸」となるべき選手の交代・・。「あっ、トルシエが怒っている・・!」。選手たちが、そう意識しないはずがありません。実際、森島が入ってから、急にボールの動きが活発になり、追加ゴールが決まりましたからネ。

 それでも、中村が抜けて、日本代表の中盤に「仕掛けのコア」がいなくなってしまったことも事実。奧は、相変わらず「つなぎプレー」に終始するだけ。たまに魅せるボールがないところでのアクションも、「確実」にパスが回される状況でしかありません。組み立て段階での「クリエイティブなムダ走り」をベースに、「仕掛けユニット」の機軸(起点)になってやる! という強い意志を感じないのです。

 あれほどの「才能」なのですし、中村がいなくなったことで、彼には、代表チームでのポジションを確固たるモノにする大きな「チャンス」が訪れたというのに・・。私は、惜しくて仕方ありませんでした。

 私は、中村の交代は「違う!」と思っていました。もし中村が残っていたら、森島という働き蜂パートナーによって、水を得た魚のように「動き」が良くなり、彼を中心に、中盤のダイナミズムが倍加したに違いないと確信していたのです。もちろんこれは、監督の判断ですから、同業者として「尊重」はしますがネ・・。・・

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 代表チームの試合は、そう多くはありません。ですから、どんな相手とでも、どんな状況でも、全力で(もちろん自然環境に応じてではありますが・・)仕掛け続けなければならないと思うのです。彼らには「消化試合」などなく、常にチャレンジあるのみ・・なのです。ホンモノの「自信」を深めることで世界へのステップを昇り続けるために・・

 モロッコでのフランス戦では、(もちろん名波・中田がいたこともあるんでしょうが・・)選手全員が「素早く、広くボールを動かすこと」で、意志が統一されていたと聞きます。そして実際に、世界チャンピオンに勝るとも劣らない内容のあるゲームを「ヨーロッパ・エキスパートたち」に披露しました。

 私が言いたいことは、基本的な「姿勢(意志の高さ)」についてです。もしそれが、「モロッコ」とはいかないまでも、確固たるレベルにあれば、必ず、個々のプレーに現れてきます。それが、見えなかった・・。寂しい限りではありました。




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