ここでは、ポルトガルが「勝ち点6」でリード。それを、イングランドが「勝ち点3」で追っています。この二チームと対戦するのは、ともに「勝ち点1」のドイツとルーマニア。両試合は『同時刻』にスタートします。 ポルトガルはトーナメント進出への「グループ一位」通過を決めています。当該対戦の結果を優先ということで、イングランドが勝ち、ポルトガルが負けても(つまり同勝ち点になっても)、得失点差にかかわらず、イングランドに勝っているポルトガルが「一位」で決勝トーナメントへ進出するということです。
ということで、モティベーションがあまり高くないポルトガルと対戦するドイツ、また、「引き分けでも・・」という(消極的な?!)心理状態のイングランドと対戦するポルトガル。これはいったいどうなるのか・・ワクワクして見ていたのですが・・(ワクワクの意味は、内容に納得できないとしても、また可能性が極端に低いにもかかわらず、ドイツの決勝トーナメント進出を『感情的』に願っている湯浅・・ということなんですがネ)
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さて、まずイングランド対ルーマニア。
試合の構図は、「技術のしっかりした組織プレー」のルーマニア対、パワーと直線的サッカーが目立つイングランドというもの。
素早く、広くボールをつなぎ(ボールをしっかりと動かし)、たまに中盤でのドリブルや「タメ」など織り交ぜながら、最終勝負ではしっかりと個人勝負を仕掛けるなど、創造的に攻めるルーマニアに対し、イングランドの攻めは明らかにパターン化されています。一つひとつのステーション(選手のことです)でボールの動きが停滞気味。そして大きく前線へつないで、最後は、右サイドのベッカムのセンタリングか、オーウェン、シアラーの突破に賭ける・・これだけでは・・
守備にしても、素早くボールを動かされることで「振り回され気味」のイングランドに対し、予測ベースで、これまた創造的、そして忠実・堅実な「実効ディフェンス」を披露するルーマニア・・といった構図です。
試合の「内容」は、完全にルーマニアが席巻しています。考えてみれば、今回大会の地域予選では、ポルトガルと同じグループにおいて、無敗で一位突破したのですからネ。彼らの基本的なチーム力は非常に高いレベルにあるということです(ちょっとルーマニアを侮りすぎていたと反省しきりの湯浅でした・・)。
前半21分。何度かの波状攻撃の後、左サイドでボールを持ったシヴーが、逆サイドへセンタリング。そのボールが、右ポストに当たってそのままゴールインして先制ゴール!
またその後の33分。今度は、右サイドのペトレスクからのセンタリングが、イングランドのゴール前へ、うまくフリーで飛び出したイリエにピタリと合います。イリエがフリーシュート!! 惜しくもGKに防がれてしまう・・
ここまでは、完全にルーマニアペース。ただ、ルーマニア守備の重鎮、ポペスクが、負傷で退場してしまいます。この試合は、ハジが出場停止ということで、精神的な支柱でもあったポペスクの退場・・。そしてルーマニアのプレーペースに少し乱れが・・
そのことが原因なのでしょうか・・、前半39分、シアラーからのパスを受けたインスが(彼に対するマークが曖昧だった)、ペナルティーエリア内へドリブルで入っていったところをルーマニア守備が引っかけてしまい、PKを取られてしまいます。シアラーが、冷静にけり込んで同点ゴール・・
この得点で、イングランドのプレーのペースが急にアップします。彼らのボールの動きが活発になり、ゲームを「内容的」にも支配できるようになってきたのです。逆にペースを乱すルーマニア。イングランドの攻め方はまだぎこちないモノではありますが、それでも、「やっと」ルーマニア最終ラインのウラを狙えるような雰囲気が出てきます。その「ウラ狙い」の先兵がオーウェン。何度も、ルーマニアゴール前の決定的スペースへの「早めの飛び出し」を魅せはじめています。
それが、イングランドの勝ち越しゴールにつながります。前半ロスタイム。一瞬のスキを突いたオーウェンの「ウラ取りフリーランニング」と、スコールズの勝負のタテパスが、ピッタリと「シンクロ」したのです。ルーマニアGKを外し、フリーでゴールを決めるオーウェン!!
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これでイングランドペースになるかと思われた後半3分。一瞬のスキを突いてルーマニアが同点ゴールを決めてしまいます。イングランドGKがはじいたボールを、ムンテアーヌが拾い、そのまま中央から「ドカン!」と中距離シュートを決めてしまったのです。
その後は、またまたルーマニアペース。イングランドは「このままでいい・・」という消極プレー姿勢にもどってしまいます。そしてそのことが墓穴を掘ってしまう・・
後半43分のこと。
右サイドでボールを持ったモルドバンが、意を決してドリブル勝負を仕掛けていきます。相手は、イングランド左サイドバック、フィル・ネヴィル。一度右へボールを出し、そのまま「身体を入れて」スクリーニング気味にドリブルを続けてネヴィルを置き去りにしてしまいます。最後はネヴィルが、(体勢的に)後方から「ボールを狙った」タックルを仕掛けざるを得なくなってしまったのですが、(そのネヴィルのアタックを明確にイメージしていた!!)モルドバンがうまく「足」でブロックしていたために、結局ネヴィルのタックルによって、モルドバンが「きれい」に倒されてしまったのです。PK!!
この時間帯で、それもペナルティーエリア内で・・。置き去りにされてしまったのだから、ネヴィルは、あのままモルドバンを行かさざるを得なかった?! そうすれば、まだ最後に守りきれる可能性はあったのに・・。この、ネヴィルのファールは、たぶん「大スキャンダル」として、「予選敗退で帰国せざるを得なくなった」イングランド国内で大々的なディスカッションが行われるハズです・・
PKですが、あの「極限の心理プレッシャー」のなかで、後半に交代出場した(イリエとの交代)ガネアが、冷静に、キッチリとゴール右隅に決めます・・大したモノだ!!
ルーマニアでは、ムトゥーや先制ゴールを決めた左サイドバック、シヴーなど、「ブランドネーション」に対するコンプレックスなど微塵も感じさせない「若手」が、確実に頭角を現していると感じます。こんな極限のプレッシャーがかかる勝負ゲームにおいて、着実に、そして確実に持てるチカラを発揮しているのです。そのことが、強烈に印象に残りました。それに対して、イングランドやドイツは・・
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さてドイツ対ポルトガル・・
この試合は、本当に、今まで私が書いてきた「ドイツの憂鬱(ヤフースポーツ2002クラブのコラムを参照してください・・)」を象徴する内容でした(ポルトガルは、フィーゴ、ルイ・コスタという二枚看板を休ませているにもかかわらず・・)。それも、ドイツにとっては、とにかく勝たなければならない試合だったのに・・。ちょっとレベルを超えたフラストレーションが・・。ですから、短くコメントをまとめます・・
ドイツの組み立てに「創造性」を感じない(動きのない足元パスばかりで後方からのバックアップもない)・・、ぎこちないヤンカーを中心のトップのプレーからは「パワー」のみしか感じられない・・、目も当てられない(ショルのプレーに少しは創造性を感じるけれど)・・、守備についても、中盤ディフェンスが甘いだけではなく、マテウスのところでもポルトガルの攻撃を止められないから不安定そのもの・・これでは・・
前半33分のセルジオ・コンセイソンの先制ゴールは、内容からすれば、まったく順当。
その後、後半の9分、26分と、セルジオ・コンセイソンがゴールを決め、自身のハットトリックをパーフェクトにしてしまいます。そしてドイツの「落陽」もパーフェクトなものに・・
ドイツで最も大きな問題は、「若手」が育っていないという事実です。このことについては、前述した「ドイツの憂鬱」というタイトルの、「ヤフースポーツ2002クラブ」で発表した私のコラム(J's Voice)を参照してください。来月の半ばにドイツで開催される「サッカーコーチ国際会議(ドイツサッカーコーチ連盟主催・・私もメンバーで毎年招待されます)」で、どのようなことが話し合われるか・・興味が尽きないところではあります・・
私はドイツでサッカーを学んだわけですが、彼らが説く素晴らしい「サッカーのエッセンス」とともに、実践の場(特に子供のサッカー!)における「現実」を観察する中で、自分自身の判断(目)で、自主的に学んだ「反面教師」的な内容も、今の私のコーチとしての糧になっています。機会と脅威は背中合わせ・・。ドイツは、その普遍的な概念を見つめ直し、この「歴史的な敗退」を次の前進のためのステップとして欲しいものです。もちろん、全般的な「体質改善」も含めて・・
とにかく、今回の国際会議がどんな雰囲気になるのか・・、またそこにおいて、どのような内容のディスカッションが行われるのか、現地からレポートしようと思っています。ご期待アレ・・