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いや、見所満載の、素晴らしいエキサイティングゲームでした・・準決勝、フランス対ポルトガル(2-1)・・(2000年6月29日、木曜日)


やっぱりというか・・、フランスの先発メンバーからジョルカエフが外れ、代わりにビエラが入りました(この「やっぱり」の意味については、準々決勝レポートを参照!)。準々決勝のスペイン戦では、プティーが出場停止ということで、苦肉の策としてビエラを彼のポジションに置き、ジョルカエフが先発したというわけです。

 また、デュガリーに代えて、この試合ではアネルカが先発。この試合のフランスは、私が考える彼らのベストメンバーです(このことについても前のレポートを参照してください)。対するポルトガルも、ジョアン・ピントがいないことを除いてほぼベストメンバー。さて勝負だ・・

 試合は、素晴らしい中盤でのせめぎ合いから入っていきます。両チームともに、中盤での忠実な守備がキーポイントだとよく理解している・・。まったく、時間的な余裕や、ボールをコントロールするスペースがない、両チームの素晴らしい中盤でのプレッシャー合戦。見応え十分とはまさにこのこと。これはスーパーマッチになる!!

 ただ全体的には、やはり・・というか、フランスに一日の長があるように感じます。デシャン、プティー、ビエラ、そしてジダンたちが繰り広げる「正確なコントロールからの素早く広いボールの動き」には感動さえ覚えます。

 フランスの「システム」・・というか、選手たちの基本的なポジションバランスは、最終ラインが「例の堅実な」四人、その前にデシャン、プティー、ビエラ、ジダンのミッドフィールドが構成されます。まあ、「システム」なんていう言葉を使ったら、またまた、それだけが「数字的」に一人歩きしてしまう危険性がありますから、ここでは深く入りませんがネ・・

 とにかく両チームの「中盤」が、極限の積極性(覚醒レベル)で「攻守にわたって自ら仕事を探す」という姿勢でプレーしていることが、まず目についたということだけは言っておきたくて・・。これなんですよ。攻守にわたって、「自ら仕事を探す姿勢」。これが、世界に通ずる「唯一のドア」なんです。ではレポートを続けます。

 全体的な展開では、もう完全にフランスペース。守備力、展開力、チャンスを嗅ぎ分ける力、突破力などなど、様々なサッカー的要素で、フランスに「少しずつ」アドバンテージがあるのです。

 でも先制ゴールはポルトガル。前半18分のことでした。

 右サイドのセルジオ・コンセイソンが、ドリブルで中央へ切れ込んでいこうとしますが、プティーのタックルに阻まれてしまいます。ただその直後にボールを支配下に置いたデシャンに、しつこくプレッシャーをかけ、結局「ルーズボール」にしてしまったコンセイソン。そのルーズボールを最初に「触った」のはヌーノ・ゴメスでした。ただ、その最初のタッチが「シュート」になってしまって。ボールはフランスゴールの左上角に飛び込んでいきます。フランス守備の一瞬のスキを突いた先制ゴールではありました。

 この後は、例によっての「中盤でのせめぎ合い」が続きます。ポルトガルの「固いディフェンス」の目立つこと。たしかに全体的にはフランスがペースを握ってはいますが、最後の勝負所での崩し、突破がままならないのです。

 右からアンリが突破するが、最後のセンタリングが通らない。ジダンが、二列目からドリブル勝負をかけるが、後方から戻ってきたダ・コスタ、ビジガル、ルイ・コスタなどに取り囲まれてしまう。最前線から戻ったアネルカが、二列目からシュートを放つが、大きくポルトガルゴールを外れてしまう・・

 全体的にはフランスがゲームを支配しているが、ポルトガルの必死の守備によって、どうしても決定的な場面を作り出すことができない・・。逆にポルトガルが、ルイ・コスタ、フィーゴ、コンセイソン、そして「ウラ取りの達人」ヌーノ・ゴメスたちが、鋭いカウンターを仕掛ける・・。そんな展開が続きます。

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 後半も同じような展開。どうしてもポルトガル守備ブロックの「ウラ」を突けないフランス。そして、徐々に「個人プレー」が目立つようになってきます。これはいけない・・

 どうしてもウラを取れないでフラストレーションがたまった彼らは、組織プレーに対する高い意識を失いがちになり、ヨシ! オレが行ったる! という心理状態で、ドリブル勝負に奔るようになってしまって・・。これは、本当にいけない。それではポルトガルの思うつぼではないか・・

 そんなことを心配し始めていた後半5分。やってくれました。アンリが・・

 中盤でジダンが、「素早く!」右サイドのチュラムへパスを出します。その瞬間、最前線のアネルカが爆発アクションをスタートします。本当に猫の額のようなタテのスペースへ走り抜けたのです。マークし切れないポルトガルのビジガル。そしてそこへ、測ったようなタテパスがチュラムから送り込まれます。そんなふうにウラが取れたシーンは久しぶり・・なんて思っていたら、ボールをコントロールしたアネルカが、素早く、本当に素早く、これまた「ネコの額のような」狭いゴール前スペースへ入り込んだアンリへ、糸を引くようなラストセンタリングを通してしまいます。そしてアンリの、夢のような素早いトラップからのシュート。同点ゴ〜〜ル!!!

 その後は、またまた膠着状態。それでもボールの動きは、確実にフランスの方がいい。ポルトガルは、各ステーションで時間が少しかかり過ぎる・・つまり各ステーション(選手のことですよ)での「次の展開」までのタイミングが遅い・・と感じます。

 フランスでは、再びジダンを中心としたクリエイティブで危険な攻めが出てくる雰囲気が・・。もちろんそれには、ポルトガルの「守備ブロック」が、同点にされたことで少し「開き気味」になったことも挙げなければなりませんがネ。そして、アネルカ、アンリの「ウラ取りの動き」にも危険な雰囲気が・・

 ・・なんて思っていた、後半26分、最前線の仕掛け人の一人、アネルカが、ヴィルトールと交代になってしまいます。さて、フランスのルメール監督の采配が、吉と出るか凶と出るか・・

 またポルトガルも動きます。攻撃の核、ルイ・コスタに代わってジョアン・ピントを入れてきたのです・・さて・・

 緊迫した仕掛け合い。ポルトガルの勢いも増してきます。また交代したフランスのヴィルトールも、攻守にわたって活発な動きを魅せていることで、チームとして、組織的な攻撃をくり返します。フ〜〜

 後半41分、フランスのルメール監督が勝負をかけてきます。ボランチのプティーに代えて、攻撃的なミッドフィールダー、ピレスを入れてきたのです。これで前気味だったビエラがボランチの位置へ下がることになります。さて勝負だ・・

 そしてロスタイムに入ってすぐに、ポルトガルが、右サイドからのフリーキックを得ます。キッカーは、フィーゴ・・。思い出しませんか?? 予選ラウンドでのルーマニア戦。同じようなケースで、ポルトガルが決勝ゴールを決めたシーンを・・

 そして蹴られたボールは、正確に、上がっていた右サイドバック、ザビエルの頭に合います。スバッ!! ヘディングされたボールが、矢のようなスピードで、フランスゴールを襲う・・。アッ、ゴールだ! そのとき、私の脳裏には、ルーマニア戦のドラマチックな決勝ゴールが浮かんでいました。

 ただボールは、フランスGK、バルテズが、ギリギリのところではじき出してしまいます。奇跡としか言いようのないバルテズのセービング。まだフランスにはツキがある・・、その瞬間、心からそう思ったものです。

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 そして今大会初の延長戦。

 展開は、もうエキサイティングそのもの。例によっての中盤のせめぎ合いから、互いにチャンスを作り出します。ジョアン・ピントがロングシュート・・僅かに右に外れる。アンリが股抜きで持ち込むが、最後の瞬間にザビエルのタックルでコーナーに逃げられる等々・・

 それにしても、フランスのジダンの運動量の多さ。感動的ではありませんか。あの「才能」に、この「高い意識の(ボールがないところでの)活動量」と実効ある守備参加。これこそが、世界トップのチャンスメーカーの証明だ・・と感動することしきりの湯浅なのです。また、プティーの代わりに前線から下がってボランチに入ったビエラ。彼は、完全なデシャンの後継者です。素晴らしい「穴埋め感覚」、しつこいボールがないところでのマーク、予測ベースでのインターセプト能力、そしてボールを奪い返した後の展開力、素晴らしい・・

 フランスには、全ポジションに穴がないように感じます。「2002」でも、有力な優勝候補だな・・、でもこの試合は、このままPKになってしまいそうだから、勝負はどうなるか分からないけれど・・、なんて感じていた延長後半12分、フランスがやってくれました。

 右サイドで、チュラムから、最前線のヴィルトールへタテパス一本。軽くコントロールして、中央のスペースへ入り込んできた(交代出場の)トレゼゲへパスを送り込むヴィルトール。トレゼゲは、そのままの勢いを落とすことなく、ドリブルシュートまでいきます。弾くポルトガルGK。そこに、アネルカに勝るとも劣らない活躍を魅せていたヴィルトールが走り込み、そのバックアップしていた勢いを、そのままルーズボールに叩きつけます。シュート!!

 そのボールが、何と、GKのバックアップに入っていたザビエルの手に当たって外へはじき出されてしまったのです。PK!! そしてジダンが、冷静に、本当にクールに、ゴール左上へ「ゴールデンゴール」を叩き込み、試合に決着をつけました。

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 何というエキサイティングゲーム。何というドラマチックな幕切れ。湯浅の興奮も最高潮i 達してしまって「キーボード」を打つ手が止まらない・・

 ポルトガルの右サイドバック、ザビエル。レギュラー時間、ロスタイムでの決定的なヘディングシュート。アンリの突破を、ギリギリのスーパータックルで阻止したディフェンスプレー。そして最後の最後での、素晴らしい守備プレーの末のハンド・・。誰も彼を責めたりすることはできませんが、攻守にわたる決定的シーンで、彼の目立っていたこと・・。神様の今日のスクリプトでは、ザビエルが「カゲの主役」だったりして・・

 敗れたポルトガルですが、彼らも立派な戦いを披露しました。そして完全に、華麗な中盤だけ・・という固定イメージを払拭しました。彼らも、「2002」の主役の一人です。

 最後は、「僅差の実力」通りの結果にはなりましたが、私は最期まで、こんな展開だったら、神様スクリプトの結末は「ポルトガルのワンチャンス決勝ゴール」・・になるに違いないと感覚的に思っていたのですがネ・・

 さてこれでフランスが、前人未踏の「ワールドカップ優勝後のヨーロッパ選手権制覇」に王手をかけました。さてどうなるか・・。明日は、もう一つの準決勝、オランダ対イタリア戦をレポートします。ご期待アレ・・




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