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ゲッ、ホンモノの劇的ドラマが・・オランダ対チェコ(1-0)・・(2000年6月12日、月曜日早朝)


フレンチオープンテニスの男子決勝が長引いてしまい、フランス対デンマークの試合は、早朝の録画放送ということになってしまいました。

 ということで、本日の予選リーグ一回戦レポートは、オランダ対チェコ共和国から。

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 ナッ、ナッ、何という試合。サッカーの神様は何を考えているんだろう・・なんて思っちゃいましたヨ。

 この試合、優勝候補筆頭のオランダが、「チームワーク」に徹するチェコに苦しんだ・・というよりも、「本当は負け試合を、ラッキーに、本当にラッキーに拾った」という内容でした。

 前半は、オランダがゲームを支配します。ただ支配とはいっても、決定的なシーンを作り出せないのですから(肝心なシーンではチェコに抑え込まれている!)、単に「ボールキープの時間が長い・・」という表現の方が正しいように思います。

 オランダは、チームとしてまとまっていないことを実感しました。彼らのプレーは、まだ「個人が強調」され過ぎていると感じるのです。中盤、組み立て段階でのボールの動きが、選手一人ひとりがボールをこねくり回しすぎることから、本当にギクシャクしているのです。これでは、守備を強化し、素早いカウンターを狙うチェコの思うツボ。そして実際にそんな展開になってしまいます。

 前半は、まだチェコの攻めは控えめ(攻撃の参加人数が少ない!)でしたが、グラウンド上でプレーする選手たちは、「オッ、今日のオランダは本当に硬い・・これはいけるゾ!」と感じたに違いありません。たしかに、クライファート、ベルカンプ、はたまたゼンデン、後方から上がってくるダービッツなどの「個人勝負」でチャンスは作り出しますが、「組織プレーが伴っていない」ことで、どうしても「単発」という印象をぬぐえないのです。

 そして後半、チェコが、オランダを、完璧に「悪魔のサイクル」に陥れてしまいます。彼らのボールの動きは、まさに「軽快」そのもの。前半では、攻撃に上がってくるチェコ選手の「絶対数」が足りなかったことで、「次のプレス」で簡単にボールを奪い返せてはいました。ところが後半、チェコの選手たちが、どんどんと前へ「チームの重心」を移してきたのです。そしてゲームの実質的なペースを完全に把握してしまう・・

 後半にチェコが作り出した「決定的チャンス」の数々・・。まず左サイド突破からのセンタリングに、ファーポストにフリーで詰めていたポボルスキーが飛び込む(足に当てたが惜しくも右サイドを外れ!)、次に、ネドヴェドとコラー(素晴らしいセンターフォーワード・・世界レベルのポストプレー!)のワンツーからネドヴェドが右へ抜け出し、ダイレクトで中央へ折り返したところに、ピッタリのタイミングでコラーが走り込んでフリーシュート(オランダGK、ファンデルサールの奇跡のセービング!)、その他でもネドヴェドのフリーシュート(右サイドへ惜しくも外れ)、同じくネドヴェドの、CKのヘディングシュート(右ポストを直撃してゴールラインに『平行』に跳ね返る!!・・そのボールを片手で拾い上げた、オランダGKファンデルサールは、ショックを隠しきれない!)、またコラーの爆発ヘディングシュート(バー直撃!)などなど・・。それに対し、まったく攻撃を仕掛けることが出来ないオランダ。フ〜〜〜

 これが後半30分くらいまでの「実質的な展開」でした。ただ最初に書いたとおり、勝負と「内容」は必ずしも一致しないのがサッカー。神様に感謝したり、恨んだり・・

 調子が出ず、どうしても「中盤のカッタるいボールの動きの元凶の一人」だった、オランダのセードルフに代わって、ロナルド・デブールが入ってきます。それでも、ボールの動きに大きな変化なし・・。オランダは、完全に悪魔のサイクルに陥って、そこから抜け出てこられません。ただここで(後半残り1分!!)「ドラマ」が・・

 右サイドを、ダーヴィッツのタイミング良いタテパスのおかげで「ぶち破った」オーフェルマルス。そこからのセンタリングに合わせ、左サイドから中央へ走り込んだベルカンプが、チェコのディフェンダーに「ユニフォームを引っ張られて」転倒してしまったのです。迷わず、イタリア人(名物)レフェリー、コッリーナ主審(スキンヘッドの人ですよ!)がホイッスルを吹きます。この雰囲気のなかで・・。素晴らしい審判ぶりではありました。

 コッリーナさんは、ヨーロッパのプロ選手たちに非常に「レスベクト」される存在。チェコにもオランダにも、イタリアリーグでプレーする選手が多くいますから、ほとんどのチェコ選手は「コッリーナか・・仕方ないな・・」ってな雰囲気が支配します。これも、コッリーナさんの「素晴らしいパーソナリティー」のなせるワザ?!

 そして「例によって」、フランク・デ・ブールが、PKを、ズバッと左サイドにぶち込み勝負が決してしまいます(この状況で、この落ち着き・・素晴らしい!!・・また試合中の、勝負ロングパス狙いも秀逸!)。

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 オランダは、大きな問題を抱えています。フランスワールドカップのときは、まだ「ノーマークのチャレンジャー」ということで、選手たちの「組織プレー」と「個人勝負プレー」のバランスがうまくとれていました。それが、ほとんどの選手たちがヨーロッパのビッグクラブで活躍する「大スター」になった今、「心理・精神的」に、チームのバランスがかなり崩れている・・と感じるのです。

 とはいっても、まだ「ツキ」にまでは見放されていませんでしたがね・・

 選手たちにとっては、この試合内容は、本当に大きなショックだったに違いないのですが、それを「本来の良いサッカー」を再び繰り広げられるようになるための「強烈な刺激」として活用することが出来ればいいのですが・・。さあ、これからフランク・ライカールト監督の「手腕」が発揮されます・・また逆に、経験のない彼によってチームが崩壊してしまう?!

 いやいや、オランダには、リヌス・ミケルスという「サッカー界の重鎮」がいるから大丈夫! 彼を中心とした「(心理・戦術的)バックアップ環境」によって、必ずやオランダが「戦術的・心理的」に立ち直ると思っている湯浅です。

 それにしてもチェコ。素晴らしいサッカーで、本当は「3-0」で勝ってもおかしくない試合を展開しました。これは「次」もいける?! いやいや、フランス、デンマークは、この試合の内容をしっかりと観察していますから、次に当たるときは、最初から「心理的・戦術的な準備」をしっかりとやるでしょう。そんな風に、大きな大会では、様々な「要素」が、「浮沈のドラマ」を生んでいくのです。

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 さあ次は、フランス対デンマーク、トルコ対イタリアを観戦しましょう。

 まずは、オランダ・チェコ戦だけアップし、後で残りの試合レポートもアップします。ご期待アレ・・




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