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レッズが、コンサドーレの「ワンチャンス勝負」に沈んでしまって・・浦和レッズvsコンサドーレ札幌(0−1)・・(2000年6月4日、日曜日)


結局、(時間的に)モロッコまで足をのばせなかったので、本日(6月4日)夜中に行われる日本代表対フランス代表の試合をテレビ観戦する前に、駒場に馳せ参じ、「J2」、浦和レッズ対コンサドーレ札幌のゲームをレポートすることにしました。

 久しぶり(5月3日の対大分トリニータ戦以来)のレッズ観戦なのですが、かなり彼らのサッカーが良い方向へ発展していることを感じ、ハッピーな湯浅でした・・

 トリニータ戦でも、(その前に見た、等々力でのナビスコカップ一回戦、フロンターレとの試合があまりにもひどすぎたから?!)かなり改善されていたとは感じたのですが、この試合では、本当にソリッドな強さを感じたのです。

 「それでも湯浅さん、この試合の内容はかなり良いんですが、相手が弱いと、どうしても手を抜いていると感じちゃうんですよネ・・」

 知り合いの記者の方がそう言っていたのですが、もしそれが本当だとしたら大変な問題です。今のレッズが、「周りのレベルに合わせる」サッカーをやったら、確実に「自分で自分の首を絞める」ことになる・・。それは以前のコラムでも書いたとおりです。

 今の彼らは、とにかく常に、「サッカーの内容」を、相手との実力の差「以上」に開かなければならないのです(少なくとも、そんな気構えで試合に臨まなければならない!)。

 たしかにこのコンサドーレ戦は、当面のライバルとの「ホームでの対決」ですし、満員にふくれあがった観客の期待も大きいことで、「100%(以上の?!)」のチカラを発揮した(最初から気合いが乗った?!)のでしょうが、もしサッカーの内容が対戦相手によって「浮遊」するようでは、「サッカー的な進歩」は望み薄なのです。

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 さてゲーム。コンサドーレが「守備的ゲーム戦術」で臨んだこともあるのでしょうが(またコンサドーレが一瞬のスキをついて先制したこと、エメルソンが二枚目のイエローで退場になったこともあったのでしょうが・・)、とにかく最初から最後まで「内容的・勢い的」にレッズが圧倒しました。

 開始1分。阿部との(大きな)ワンツーで抜け出した永井が、そのままドリブルで突進し、最後はシュートまでいってしまいます(相手ディフェンダーの足に当たってCK)。その後も、左右サイドから大柴が、永井が、どんどんとドリブル突破を仕掛けます。

 8分。今度は、右サイドをドリブルで駆け上がった大柴が、二人に囲まれたことで、サポートに上がってきていた山田へバックパス。すかさず山田は、ファーポスト側にいたクビツァへ正確なセンタリングを上げ、クビツァが、フリーでヘディングシュートを見舞います(惜しくも左へ外れ!)。

 そんな「仕掛けからのチャンスメーク」をどんどんと繰り出すレッズ。小気味よいサッカーではありませんか・・(もちろん『フィニッシュ』という課題は残りますが・・)

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 この試合では、ピクンがいる・・、クビツァがいる。

 ピクンは、本当に世界の超一流です。彼がいるのといないのとでは、まず最終ラインの「落ち着き」が違います。守備においても、攻撃においても・・。

 ピクンがいないときには、最終ラインの全員が「おっかなびっくり」という、受け身で消極的な守備姿勢で、簡単にウラを突かれてしまったものでしたが、この試合では、ピクンを中心に、本当に「自信あふれる予測ディフェンス」を展開していたものです。それはそうです。一人が外されて危ない場面になっても、そこには例外なくピクンが駆けつけているのですからネ。またラインコントロールが乱れても、ピクンが「予測ベース」で(つまり早いタイミングで)ウラスペースのカバーに入ってくれます。

 また攻撃にうつったときでも、とにかくピクンにボールを預けておけば安心・・ってな具合に、ディフェンスラインが、本当に自信をもってボールを回していました。

 もう一人、最前線に入った新加入のクビツァ(ポーランドは良いセンターフォワードを輩出しますよね・・)。最初は、オールドファッションの「センターフォワード」というイメージを持っていましたが、試合がはじまってみたら、その「実効あるプレー」に感激させられてしまって・・。足は速くはありません。それでも、常に「全力」でプレーする姿勢や、常に最高の集中力で「ウラ」を狙う姿勢だけではなく、その、「味方を使うのか、自分で突破するのか」を容易に悟られない「ポストプレー」が秀逸です。

 彼が最前線に張っていることで、レッズの「後方からの球出し」が本当に「活発」になったと実感させられます。最後尾や中盤の「底」でボールをキープしているときでも、ボールホルダーの目は、常にクビツァを探していることを明確に感じ取ることができるのです。とにかく、(クビツァが、実際にウラのスペースへ抜け出るものだから・・)、それまでの「アバウト」なものではなく、本当に「ターゲットを絞ったラストロングパス」が出るようになったことに舌を巻いた湯浅でした。

 もちろんクビツァは、最前線でのポストプレーに本領が発揮されます。後方からのロングパスや、中距離パスを、背後から強烈なプレッシャーをかけらているにもかかわらず、確実にキープし、味方に正確に展開したり、チャンスあらば、自分自身で「振り向いて」突破を図ります。本当に彼は、レッズの「攻撃の幅」を、何倍にも広げたと思います。

 ピクン、クビツァだけではなく、その間をつなぐ「中央の柱」、ボランチの石井(まだ22歳でキャプテン!)、そして二列目の阿部の出来も秀逸でした。とはいっても阿部は、吉野とは相性良いのですが、その吉野と(後半に)交代しし、「ここにパスを出せ!」と止まり気味でパスを要求する福永が入ってからは、完全にプレーのリズムを崩してしまいます。

 吉野は、攻守にわたる「汗かき」を本当に積極的に、そしてクレバーにこなします。だから阿部も、フィールド全体を走り回り(もちろんメリハリをつけた走り!)、攻守で、うまくチーム全体を引っ張ることができていたのですが・・

 福永は、本当にどうしてしまったのでしょう。確かにある程度「つなぎ」の仕事はしていましたが、以前の、積極的な「仕掛けダイナミズム」を、まったくと言っていいほど感じません。パスを受け、それを「安全」につないで「止まって」しまう。自分の前にスペースがあるのに走り込まない(もちろん最前線プレーヤーを追い越すような決定的フリーランニングなど皆無!!)。守備でも、危ない場面で、「ボールがないところ」で走り込む相手に(最初はケアーしていたのに・・)最後までついて戻らないような「ぬるま湯ディフェンス」に終始する。これでは、彼の「才能」が死んでしまいます。もう一度目を覚ませ!! そして「持てる才能」を発展させよ!! 福永・・

 もう一人、永井について。彼の才能は、誰もが認めるところですし、この試合でも(最初の頃だけでしたが・・コンサドーレがうまく戦術的に対処した?!)、彼の最大の強みである「ドリブル突破」が存分に生きていました。また、守備にもしっかりと絡んでいました。

 それでも湯浅は、「メリハリの効いたパスとドリブルの使い分け」に対する判断を、課題とすることにします。必要もないところでドリブルをしたり、「そこはパスをして走れ!」という場面では、逆にボールを止めてドリブル突破にトライしてしまったり・・。ちょっと、「実効レベル」という意味では問題あり・・。もっと彼は、「パスが出そうな状況」になったら、とにかく首を振って「周りの状況」に目をやり「次のプレーのイメージ」を固めておくことが大事なのです・・(もちろん周りの味方と、次のプレーイメージをシンクロさせておくためにも・・)。

 最後にコンサドーレについて・・

 この試合では、アウェーということで(?!)、「しっかりとバランスの取れた守備から、エメルソンの才能を最大限に活用するカウンターを・・」という狙いだったようで、全体としては、あまり目立った「戦術的特性」を見つけることはできませんでした。守備は、「フラット・スリーもどき」・・。それでも基本的には、名塚を「コンベンショナル・スイーパー」にしたスリーバック以外のなのものでもありません。また攻撃における中盤プレーも、「次の守備でのブロックバランス」を気にし過ぎるのでしょうか、あまり目立った「リスクチャレンジ姿勢」を感じることはありませんでした。これでは・・

 確かにエメルソンの才能は認めます。スゴイ選手です。それでも彼がボールを持ったら、周りが足を止めてしまう・・。もちろん、「彼の最初のドリブル勝負」に決着がついたら(それが成功し、相手ディフェンダーを一人でも置き去りできたら)、再び「動き」出しはしますがネ・・。

 これって、少し前までは違っていたと聞きました。彼がボールを持っても、周りのアクションは止まらず、エメルソンの「次の攻撃プレー」の選択肢は多かった・・というのです。それが徐々に、「アイツは、ボールを持ったら常に自分で勝負していくから・・」と足を止めるようになってしまったのでしょうか・・。これは、相手守備をだますための「選択肢」という意味で問題だと感じます。実際にこの試合では、彼が絡んだ攻撃が(彼が孤立してしまうことで)ことごとく止められていましたからネ・・

 効果的なドリブル突破と「持ちすぎ」は、まったく意味が違います。「組織プレーと個人勝負プレーのクレバーなバランス」・・。さて、ここから岡田監督の「調整能力」が問われる・・?!

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 さてこれから、日本代表対フランス代表の試合を、「いろいろな意味」でとことん楽しもうと思っている湯浅です。レポートにご期待アレ・・




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