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「内容」では昨シーズンチャンピオンにまったく見劣りしなかったヴィッセル・・ジュビロ磐田vsヴィッセル神戸(1−0)・・(2000年5月24日、水曜日)


前節のFC東京戦でもそうだったのですが、ヴィッセルの選手たちは、「どのようなサッカーをやるのか・・」ということについて明確なイメージをもっていると感じます。

 前線、中盤でのチェイシング、「次のパスレシーバー」への予測チェックなど、忠実なプレッシャーをかけ(正確なパスを前線へ供給させない等)、ボールを奪い返したら、とにかく素早く相手ゴールに迫る・・、そんなイメージですが、一人でもサボったら機能しないこのチーム戦術が、最後までうまく回るのですから、「ベンチ」の(心理マネージメントなどの)優れた仕事を感じている湯浅です。

 そんな積極的で小気味よいサッカーを展開するヴィッセルが、『全体的』にはゲームをコントロールしているという展開で試合がはじまったわけですが、そう簡単には、百戦錬磨のジュビロ守備陣を崩すことができません。どんどんと「前へ」突っかけていくヴィッセル選手たち。それでも「最後の瞬間」で、ボールホルダーとパスレシーバーとの「イメージ」が、うまくシンクロさせることができません。決定的な攻撃の起点(勝負シーンで、フリーでボールを持つ選手)ができた瞬間での、周りの選手たちとの「決定的スペースへの飛び出し」が、うまくタイミングが合わないのです。もちろんそれには、ジュビロ守備陣の、明確な「イメージ(読み)」をもった守備能力の高さ(スパッと、ヴィッセルが狙う決定的スペースを潰してしまう!)も挙げなければなりませんネ・・

 対するジュビロですが、押し込まれていた前半の20分までの間に、前線でボールを奪い返したラドチェンコのスルーパスを受けた中山が、またカウンターから西が、決定的なカタチでシュートまでいってしまいます。ゲーム全体ではヴィッセル優勢。それでも簡単にはシュートチャンスを作り出せないヴィッセル神戸に対し、効率的にシュートチャンスを作り出してしまうジュビロ。

 ジュビロ最終守備ラインの選手がボールを奪い返した瞬間(そこに、タイミング良くプレスを掛けるのは難しい!!)、最前線の中山とラドチェンコが、「例外なく」ヴィッセル最終守備ラインのウラに広がる「決定的スペース」へ向けて超速のダッシュを仕掛けるのです。

 そんなところにも「勝負所に対するイメージレベル」の差を感じる湯浅です。ヴィッセルのサッカーは、全体的には(攻守にわたる組み立てという意味では)うまく機能しているのですが、決定的な仕掛けに危険性が感じられない・・

 そんな展開が、「内容的にもまったく互角」になったのは、後半に、ヴィッセルのハ・ソッチュが登場してからでした。彼の「勝負所」での爆発的な仕掛け(爆発的なフリーランニング、早いタイミングのリスキーなスルーパス、そして決定的なドリブル勝負など)が、周りの選手たちの「確信レベル」を深めた・・といえるかもしれません。やはりヴィッセルにとっての「ハ・ソッチュ」は、物理的にだけではなく、精神的にも「ダイナモ(発電器=刺激)」なのです。

 ヴィッセルのゲーム内容は、前半の「大パワーで攻め立てるが、肝心なところでの仕掛けが稚拙・・」というものから、「ハイレベルで本物の危険性を感じさせるサッカー」に変身したのです。長谷部が、和多田が、布部が、チェが・・、前半には鈍かった「決定的な勝負所での自分主体のリスクチャレンジ」を、爆発的に仕掛けはじめたのです。

 たしかに、攻守にわたる勝負所の「おさえ方」では、まだジュビロに一日の長を感じます。守備では、「ボールがないところでの(相手の仕掛けポイントを読んだ)うまいポジショニング・カバーリング」など。また攻撃では、勝負パス、勝負ドリブルの状況における、周りの(ボールがないところでの)選手たちの「わき目をふらない全力の仕掛け」など・・。

 それでも、後半に魅せた、組織された機能美に溢れる、「美しく強いダイナミックサッカー」は、ヴィッセルのサッカーが正しい方向へ進んでいることを如実に証明したとすることができるでしょう。彼らのセカンドステージでの活躍に大期待する湯浅でした。




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