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20世紀最後の日韓戦・・やはり日本に一日の長がある・・日本代表vs韓国代表(1−1)・・(2000年12月20日、水曜日)


「湯浅さん、小野はうまく機能していませんネ・・」

 ハーフタイムに、知り合いのジャーナリストの方からそんな声を掛けられました。「たしかにうまく機能していませんが、それは、周りの選手ではなく、小野自身の問題だと思いますよ。彼のプレーが、消極的なんです。何度も、プレーの流れのなかで中村や名波に無視されてしまって・・。まあそれも当然ですね。だって、彼らがボールを持っている状況で、オレに横パスを出せよ・・なんていう感じで寄っていくだけなんですから。前にスペースがあるっていうのに・・。まあ、後半は交代させられるでしょう・・」

 そして案の定、小野は交代です。ただ出てきた選手を見て、目を疑いました。交代したのは、中盤における「チーム・ダイナミズムの増幅」という意味では、まったく期待できない(何度も前科のある!)、「あの」奥大介なのです。でも私は、すぐに思い返しました。「イカン!イカン! 先入観で選手を見ちゃイカン! もしかしたら、トレーニングでの彼の出来は素晴らしかったのかもしれない。それに、中盤からの彼の勝負ドリブル能力には、他を寄せつけない特異な趣もあるしナ・・」

 そして事実、数分間くらいでしたが、素晴らしくアクティブなプレーを魅せたのです。ズバッと下がってパスを受け、シンプルにボールを動かし、自らは次のスペースへダッシュする・・、はたまたドリブル突破にチャレンジする・・。フム、彼のプレーイメージは、本当に格段に進歩したのかも・・なんて思ったものです。でも・・

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 ということで、小野伸二と奥大介については、「スポーツ・ナビ」を参照してください。いまその文章を仕上げ、スポナビ編集部へ送ったところですので・・。現在、午前2時をまわったところです。

 まず全体的な印象から入ることにしましょう。

 最初に感じたことは、日本チームが、攻守にわたる「1対1」の競り合いでも、チーム戦術的にも、韓国をかなりリードしている・・ということです。たしかに韓国に押し上げられる場面はありますが、それでも「最後のところ」までは、まったくといっていいほど攻め込ませないのです。もちろん、韓国が、日本の最終ラインのウラに広がる決定的スペースを突いてくるようなシーンも皆無。対する日本の攻撃は、本当に「タイミングを見はからって急所を突く」といった危険なニオイを振りまき続けるのです。

 前半の「良いカタチ」を見てみましょう・・

 9分・・柳沢と伊東のワンツーから、柳沢が抜け出したプレー。10分・・左サイドの名波からのセンタリングを、松田がダイビングヘッド。11分・・高い位置でボールを奪いかえした危険なカウンター(奪い返せることを察知した小野が、早いタイミングで前へ動き出していた! そこら辺りには彼のセンスの良さを感じるんですがネ・・)。17分・・柳沢の「大変身ドリブル勝負」からのPK(自身が蹴って失敗!)。25分・・北嶋と小野のワンツーから、小野がダイレクトでロングラストパス・・柳沢が競り勝ったがファールされる(このファールで、キム・サンシクが退場!)。42分・・素晴らしい守備からボールを奪いかえした中村からのタテパスに反応した柳沢が、またまた『(良い意味での!)エゴイストに徹した勝負』でシュートまで行く。そして44分・・中村のセンタリングを、韓国ディフェンダーがヘッドでクリアし、そのルーズボールを、明神がダイレクトでシュート(ほんの数センチ右へ外れる! それにしてもスーパーシュート!)。

 それに対し、韓国のシュートらしいシュートは、先制ゴールになった、アン・ジョンファンが放ったヤツくらいでしたかネ。後半も、開始早々にアン・ジョンファンが惜しいシュートを放ちましたが、試合を通しても、まあそれくらいといったところ(意図的な、そして組織的な崩しからのシュートチャンスはなかった?!)。シュート数は、前半が、日本の「8本」に対し、韓国が「3本」。後半も、日本の「7本」に対して、韓国は「4本」。正確な内容を表しているわけではありませんが、この「数字」も、全体的な試合内容の傾向を把握するポイントにはなりますよネ。

 とにかく、「内容」で、(韓国が65分間、10人でプレーしたことを差し引いても!)日本が優っていたことだけは事実だと思います。

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 ちょっと、ゲーム中に感じたことを、私の「試合メモ」から拾ってみましょう。まず最初は、何といっても名波の「プレー姿勢」。

 開始早々、名波が、50メートルは全力疾走して相手をチェイシングしたシーン(インターセプト狙いでもあった?!)がありました。また前半5分にも、同じように長い距離を全力で走った名波が、強烈なチェイシングを仕掛けるシーンがありました。それを見ながら感じたものです。「名波は、(積極的に若手を生かすプレー=自己犠牲プレーも含め)本当の意味で日本代表の(心理・精神的な)リーダーになったな・・」。

 次に、これも前半早々のことですが、最後尾の日本選手が(たぶん服部か松田)、上がりつつあった韓国最終守備ラインの「ウラのスペース」へロングパスを送り込んだシーンがありました。その瞬間、柳沢と北嶋はオフサイドポジション。ただ二人とも、そのパスに全く「反応」せず、彼らとは別の二列目の選手(多分、伊東)が、日本と韓国の選手全員を「追い越して」、そのロングパスを追ったのです(結局はモノになりませんでしたが・・)。日本代表には、「最後尾からの決定的ロングパス」と「二列目選手の追い越しフリーランニング」、そして「最前線のオフサイド選手は絶対に反応しない」というチーム内の決まり事があったということです(それを実践できたことは特筆モノなのだ!!)。これも、タイミングさえしっかりとマスターすれば、強力な武器になります。

 また、「例によって」の、名波と中村俊輔のポジションチェンジ。そのコンビネーションは、もう、ホンモノの「あうん」の呼吸レベルまで高まっています。

 伊東と名波のボランチコンビですが、そこそこの・・というか、良い出来だったと思います。ただ韓国の攻めが単調だったことで、あまり難しい状況には陥るくらいにチャレンジされることはありませんでしたがネ。それにしても「復帰組」の伊東は、ハイレベルなパフォーマンスを披露したと思います。私は、全体的には満足レベルでしたが、でもまだ何か「パッション(闘争心的な部分)」で課題が見え隠れ・・(?!)

 次は柳沢。たしかに吹っ切れました。素晴らしいパフォーマンス(後半の最後の方はちょっと息切れ気味ではありましたが・・)。それには、高原、平瀬、中山、北嶋、久保など、ライバルたちとの競争だけではなく、アジアカップ決勝で、交代出場後、8分間で再び交代させられるという「これ以上ない刺激(屈辱)」を経験したことも、少なからず心理的な影響があったに違いないと思う湯浅です。

 さてこれで柳沢は復活しました。後は順調に伸びていくことを熱望するだけ・・。アントラーズには、「ジーコ」というストロングハンドがいますから、あまり心配はしていませんがネ。残るは、サンフレッチェの「久保」。もう何度もくり返していますが、私が推す「2002のツートップ」は、柳沢と久保。湯浅は、ワールドカップでのツートップは、彼らしかいないと確信しているですが・・

 (大)明神の「(ハイレベルに安定の)超ステディー」な出来についてはコメントする必要はありませんよね。また中村俊輔も、攻守にわたって上出来(彼自身は、1.5列目ではなかったことで不満でしょうが・・それもポジティブな刺激=次へのモティベーションになるに違いありません!)。とにかく今は、俊輔の「ケガの程度」が心配で・・。後で、インターネットで情報を引き出してみることにします。

 この試合でも安定感を増したフラットスリーですが、何といっても「柔軟なラインブレイク」がどんどんと発展していることを感じ、安心した湯浅でした。本当に強い相手と戦うときにこそ、彼らの真価が問われるわけですが、そこでの「成功のキーワード」は、とにかく、柔軟でハイレベルな『ラインブレイク感覚』なんですよ。

 何か、アタマがもうろうとしてきてしまって・・。また日を改めて、ビデオを見返しながらでも気づいたところをレポートすることにします。では今日は、この辺りで・・




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