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「若手」が格段に存在感をアップさせていることを確認したゲーム・・JOMOカップ、日本代表対ワールドドリームス(2-0)・・(2000年10月5日、水曜日)


試合のメンバー表を見たとき、「何だこれは! これじゃ中盤のリーダーがいないじゃないか・・」と憤ったものです。ツートップに西澤と高原。その後方に森島。稲本、奥のダブルボランチ。右に望月、そして左が名波・・

 私は、名波に対して大いなる期待を抱いていました。曲がりなりにも「セリエ」でボランチを張っていた名波。技術は折り紙つきだし、世界で揉まれ、心理パワーも格段にアップしたに違いない・・。そして何といっても、今回のオリンピックでの若手代表の「立派な闘い」に刺激を受けなかったハズがありませんからネ。

 それがフタを開けてみたら左サイドバック。私は、稲本、名波のボランチコンビの前でゲームを組み立てる中村俊輔というトリオを見たかったのです。そうなれば、ブラジル戦とは違い、中村には、(中田がいないというケースにおいて・・)名波という心強い「組み立てパートナー」がいることになりますからネ。それが・・

 奥は、仕掛けの中盤リーダーがいて初めて活躍の「芽」が出てくるタイプの選手。私は、一連の仕掛けプレーをリードする選手の「脇」で、(ドリブル勝負やフリーランニングなどの)スキを伺いながら「バランスを取る」というタイプの選手だと思っているのです。また森島は、二列目からの「ボールがないところでの仕掛け」の得意な選手ですから、彼に「中盤での仕掛けのリーディング」を任せるというのも酷です。ということで、この先発メンバーには「本物のチャンスメーカー(ゲームメーカー)」がいないではないか・・と思ったわけです。

 そして案の定、日本代表のサッカーが沈滞気味になっていきます。最初の時間帯、何度か、奥が左サイドに入ることで名波とポジションをチェンジしていたシーンを目撃したのですが、「ナルホド、そういうことだったのか・・」なんて、心躍ったものでした。でも結局それは、名波と奥による、ケースバイケースでの「自主判断」だったようで、基本的に名波は左サイドを担当しながら、仕掛けの起点になろうと、気の毒になるほど七転八倒していました。

 奥と森島は、ボールをもっても、「仕掛けのリーディング」には全くといっていいほどトライしようとせず、奥は横パスを出しては「ジョギング」(たまには、ボールがないところで最前線へ飛び出しては行きましたがネ・・)、そして森島は、ボールを持てばワンツー突破トライか、シンプルにパスを回して大きく動く「だけ」です(もちろんそんなプレーも効果的ではあるのですが・・あまりにも単調で・・)。

 日本代表が、ゲームの流れのなかでチャンスを作り出したのは皆無。たしかに名波のフリーキックからの松田の先制ゴールは見事の一言でしたが、それ以外のところでは・・

 前半のシュート数ですが、信じられないことに「9本」がカウントされていました。それに対して、プレーが格段に改善した後半は「11本」。あまり差がないように思われるでしょうが、その「シュート内容」は、格段に・・と言えるくらい違います。相手守備に詰められ、仕方なくアバウトで放つシュート(打たされたシュート!)・・。それに対し、ある程度相手守備ブロックを振り回して(崩して)自分たちのイメージ通りに放つシュート・・。その違いです。

 前半のシュートは、ゴールを決めた松田が1本。奥と西澤が1本づつ。それに対し「オリンピック組」の稲本と高原が、それぞれ3本づつ打っています。

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 さて後半。川口に代わって高桑が、松田に代わり中澤が出場します。また「前」では、奥と高原に代わって、三浦淳宏と中村俊輔が登場し、やっと私が望むフォーメーションになります。そして日本代表のサッカーも、ガラッと様変わり。やっとアクティブ、ダイナミックなサッカーを展開しはじめたのです。

 そのベースは、もちろん、ボールがないところでの積極的な「仕掛けの動き」をベースにした「素早く、広いボールの動き」、それとボールを持ったときの、タメ・キープ、タメ・ドリブル、勝負のタテパスからのコンビネーション(パス&ムーブ!)などのリスクチャレンジです。

 このことは誰が見ても明らかな変化だったと思います。前半では、日本代表の「次」のボールの動きが明確に見えていたのに、後半になると「変幻自在」に、大きく、そして素早くなったことで、「驚き」が増えていきました。

 それでも、前半で調子を崩した(波に乗れなかった?!)名波がプレーの切れを取り戻すまでには時間を必要でした。必死の守備をくり返すことで「良いプレーに対する感覚」を取り戻そうとする名波。それでも、何となくプレーの流れに取り残されがち。彼自身も、不満だったに違いありません。それでも、稲本に代わって明神が出てきた頃には、かなり感覚を取り戻し、攻守にわたって「キー」になるプレーを魅せてはいましたが・・

 それにしても、明神の「自信あふれる」プレーには目を見張らされました。それも「オリンピック効果」なんでしょう。彼は、中澤とともに、世界の檜舞台において最も伸びた選手の一人でしたからネ。

 また、森岡の自信あふれるラインコントロールだけではなく、危急状況での「ブレイク」と「カバーリング」、大きく伸びた服部の、高い身体能力と自信をベースにした強い守備力、相変わらず安定したプレーを展開した稲本、三浦淳宏の積極的な突破トライなど、ポジティブな発見(・・というか再確認)も多かったゲームではありました。

 後半には、2点のビハインドを追う「ワールドドリームス」も、かなり本気を出していましたから、日本代表にとっても良いトレーニングマッチになったに違いありません。

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 ところで前半のラインアップ。もしかしてあれは、フィリップが「見極める」ためにやったオーダーだったのかも・・。

 だとすると、奥や森島の「使い方」には、今後とも悩むことになる・・?!

 さて、様々な側面で興味が尽きない「アジアカップ」。ア〜〜、楽しみでしかたない・・




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