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着実に「世界」へ近づいていることを実感させてくれた日本代表!・・韓国代表vs日本代表(1−0)・・(2000年4月26日、水曜日)


いま、試合後のチョムシル競技場で書いています。韓国の記者連中も、まだ外の記者席で原稿を書いています(このスタジアムの室内設備は貧弱で、とても中で原稿など書けない?!)。とにかく寒さが身に染みて・・

 湯浅も、試合からの「パッション・エネルギー」を落とすことなく、この瞬間に、感情を込めたコメントを書きたくて、インタビュールームへは行かずに書き続けることにしました。インタビューの内容は、後で「2002編集長」の西村氏からでも聞きましょう。

 このゲームで日本代表が披露したサッカーは、本当に素晴らしいの一言に尽きます。結局負けてしまったとはいえ、韓国代表が、まったくといっていいほど日本代表の最終守備ラインを崩す場面を演出できなかったのに対し、日本の勇士たちは、スタジアム全体を敵に回しながら、立派な、本当に立派な戦いを展開しました。彼らのハイレベルなスピリットと、戦術的なクールさに対し、心より大拍手を送りたいと思います。

 また、チームの「モラル」をここまで高め、一人ひとりが、最大限の「自分主体」のプレーを繰り広げられるまでにモティベートしたフィリップ・トルシエにも、同業者として大拍手を送りましょう。

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 後半33分に飛び出した、ハ・ソッチュの「サンデーシュート」。ドイツでは、簡単には決まるはずがないスーパーロングシュートのことを、そう呼びます。この、ハ・ソッチュの決勝ゴールは、まさに「宗教的な安息日にしか生まれない(神様のパワーが乗り移った?!)ゴール」といったところでした。

 ただ私には、そんな「結果」はどうでもいいこと。何よりも、日本代表が、韓国との「戦術的な発想レベルの差」を、どんどんと明確にしていることが嬉しくて・・

 この「差を実感させられる」試合内容は、韓国のサッカー関係者には衝撃だったに違いありません。観客は、「結果」によって満足して家路についたでしょうがネ・・(これが失礼な言い方でしたら・・事後的に『ごめんなさい!!』)。

 戦術的な発想レベルの差・・。それは、中盤でのボールの動きに如実に現れてきます。ボールの動きの速さに変化をつけるだけではなく、素早く、そして広く、常に「決定的スペース」を意識した日本に対し、韓国は、周りの味方が完全にフリーでなければ、例外なく最前線へ蹴り込んでいきます。要は、「単発」の勝負のタテパスばかりという攻め方なのです。タテへの仕掛けにも、周りの選手たちとのイメージ的な準備が必要です。それがなければ、仕掛けが「連動」しないということになりますからネ。

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 試合は、まったく互角の展開ではじまりました。それでも「タテ」へ・・という意識が強すぎる韓国に対し、日本代表は、柳沢、中山の最前線での活発なフリーランニングからの起点プレー(かなり抑え込まれてはいましたが・・)、伊東、稲本のうまい押し上げ、そして(ハードマークされているにもかかわらずの)中田の、シンプルなボールへの絡みとチャンスを見計らった仕掛けなどをベースに、しっかりと組み立てます。そんなふうに、試合がはじまった当初から、戦術的な発想レベルの差を感じていた湯浅だったのです。

 ただ試合は、(全体的な流れとして・・)徐々に韓国ペースになっていきます。韓国の、(前への)大パワーの中盤守備がうまく機能しはじめ、そのパワーに押し込められるように、稲本、伊東を中心にした中盤守備が空回りしはじめただけではなく(勝負所でのアタックタイミングが遅れはじめた・・)、最終守備ラインも下がり気味になってしまって・・

 とはいっても、そんな試合の流れを読んだ中田の守備参加などによって、また日本代表が盛り返してきます。

 中田の積極的な守備参加ですが、それには、彼がハードにオールコートマークされていたことを挙げなければなりません。もちろん彼の守備参加は、いつも実効を伴ってはいますが、この試合での彼は、オールコートでマークされていることから、「より意識して」前線から中盤にかけての守備に積極的に参加していたと思うのです。

 そのことで、彼をマークする(また攻撃にはまったく参加していかない)「チェ・ソンヨン」は、必然的に、自チームの攻撃のまっただ中に入っていくことでドギマギしてしまっていました。そして、中田へのマークがズレたり甘くなってしまって・・。ハードマークされているにもかかわらず、中田を中心とした攻撃が何度も見られたのも、彼の戦術的な理解度の高さの証明?!

 前半は、二度、楢崎のファインプレーに助けられた日本代表でしたが、後半は、もう完全にゲームを掌握してしまいます。前へのパワーだけは衰えない韓国でしたが、日本が、そんな彼らの「タイミング」に慣れ、今度は中盤守備で、完全に韓国を圧倒しはじめたのです。そしてクリエイティブなボールの動き・・

 以前だったら、そんな状況で、韓国のパワー(攻撃的な姿勢)に押し込められ続けるような展開になることが多かったのに、新生日本代表の選手たちは、冷静にゲームのペースを上げていきます。不運な「ロベカル・ゴール」を決められたとはいえ、内容では韓国を圧倒した日本代表。またまた自信レベルを高揚させたに違いありません。

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 前述しましたが、ハードマークされる中田について・・。

 彼は、そんなハードマークには慣れっこなのでしょう、マークを引き連れて爆発的なフリーランニングを敢行し、シンプルにボールを回しながら「次」を狙う・・、また守備の「決定的な勝負場面」に常に顔を出すようにすることで、彼のマーカーをはずし、ボールを奪い返して「フリー」で攻撃に参加する・・。素晴らしい。

 前半38分の、最前線でのインターセプト狙いのダッシュ・・そこからのチャンスメーク。同じく前半40分の、自分のタテパスを奪われた後の、爆発的な守備参加・・そしてボール奪取。はたまた、後半20分くらいの時間帯に連続して魅せた、効果的なボール奪取からのカウンター攻撃。とにかく彼は、際限なくレベルアップしていると感じます。

 日本の最終守備ラインについて。このことは、前にもいろいろなコラムで書きましたが、この試合での松田、森岡、服部による「ラインコントロール」と「自分主体のブレイクプレー」には、円熟味さえ感じたものです。とにかく韓国が、日本代表の最終守備ラインを崩した場面は、日本のミス以外では皆無・・という印象なのです。

 ボランチの伊東と稲本も、(全体的には)鬼神の活躍でした。前半最初の頃は、(前述したように)相手の中盤守備での大パワーにタジタジという場面もありましたが、中田の積極的な守備参加もあって、前半25分過ぎからは、本当に安定した「予測ベースのクリエイティブ守備」が光り輝くようになりました。また攻撃でも、稲本の「スペースをつなぐ超速ドリブル」、伊東の、相手の激しい当たりをかいくぐる技巧的キープ(タメ)からの展開パスや決定的スルーパストライなど、本当に見所満載。彼らの「目立たない穴埋め作業」と「実効ある(自信にあふれた)攻撃プレー」にはワクワクさせられたモノです。

 両サイドの名波と望月の出来も上々。特に名波は、前半の残り15分くらいから、中田と話し合ったのでしょう、中央二列目まで上がり、良い仕事をしていしました(もちろん中田は左サイドバックの位置に入る!・・中田のマーカーに対する陽動作戦という意味合いもあり・・)。

 この「自分主体判断と決断」による、名波と中田のポジションチェンジですが、トルシエにとっても、願ってもない「赤信号でも横断歩道を渡るプレー」だったに違いありません。チームの目的を達成するためのベストプレーを、自分主体で判断して実行できる・・。理想的な選手たちじゃありませんか・・頼もしい・・

 ツートップについては、地元での「心理パワー」に後押しされる韓国ストッパーによる激しいマークに遭っていたこと、またホン・ミョンボがいたことを考えれば、良くやったと思います。もちろん、そんなプレッシャーのなかでも、しっかりとトラップし、審判がホイッスルを吹けるような「明確なカタチでのファール」を受けられるようにしなければなりませんがネ・・。でも、チャンスでの、忠実な「爆発フリーランニング」など、全体的な出来は良かったと思っている湯浅です(コンディション的に厳しかったに違いない中山と、うまく復活ゲームを飾った柳沢に大拍手!!)。

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 まだまだ(試合中にうち続けた)メモ内容を網羅したわけではありませんが、メモの残りと中田については、今週号の「2002」でも書くことにします。

 素晴らしくレベルの高いサッカーを見ることができ、また日本代表がどんどんと世界に近づいていることを実感できて、ものすごく満足している湯浅でした。では今日はこのあたりで・・




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