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オーストラリア報告(2)・・素晴らしい逆転劇・・そして試合中でも「世界」へつながる成長を続けた日本の若武者たち・・日本vs南アフリカ(2−1)・・(2000年9月14日、木曜日)


嬉しくてたまりません。

 日本の若武者たちが、逆境からはい上がり、自分主体で成長したことが嬉しくてたまらないのです。「2002」の中心である彼らに対する期待の高まりは際限知らずといったところ・・

 今、現地時間で午前2時をまわったところ。ラジオ文化放送でしゃべり、「スポーツナビゲーション」ションの記事を書き終えたところです。どこまでできるか分かりませんが、とにかくファーストインプレッションだけは書き記しておかなければ・・と思い、キーボードに向かっています。

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 この試合を分析するに際し、まずスタートラインを、「世界レベル」の相手と、肉を切らせて骨を断つというホンモノの闘いの場で相まみえた・・という風に設定したいと思います。

 本当に南アフリカは強かった。もちろんそれは「個人的な強さ・速さ」のことです。技術・戦術レベルで日本が劣っているとは思いません。それでも、マッカーシー、ノムベテ、両サイドバックのバックレフ(?)とマトンボ、はたまた、中盤のンテオ等などの突破力は、本当に迫力満点ではありました。

 そんな彼らに、組織プレーが備わったら・・空恐ろしい・・。まあこのことは、アフリカのチーム全体に言えることですがネ。

 また彼らは、トルシエ戦術をしっかりと理解し、それに対抗する攻めを展開してきました。その象徴が、中盤でボールが展開されているポイントから、どんどんと、逆サイド気味のスペースへロングボールを送り込んできたことです。集中プレスとサイドアタッカーの押し上げを標榜するトルシエ戦術ですから、どうしてもサイドにスペースができてしまいます。そこを彼らが有効に突いてきたというわけです。

 それは、マッカーシーとノムベテという素晴らしいツートップを備えているから出来る攻撃戦術ではあるのですが、それにしてもあれだけの突破力をもった選手たちをフリーにし、彼らがボールをしっかりとコントロールしてからチェックしにいくというのでは、問題が出てきて当然のように感じました。中田や中澤なんかも、彼らがボールを持って突っかけてきたときには、本当にビビッていましたからネ。それでも、後半に入った頃には自信を取り戻し、しっかりとギリギリまで身体を張る競り合いが出来るようになってきましたが・・

 また南アフリカは、中盤からどんどんとドリブル突破を仕掛けてきます。中盤での組み立てという発想を「ある程度」放棄し、前が空いた瞬間から、常に「前方へ突っかけていく」・・これも、中盤での「読みベース」の組織プレスでボールを奪いかえし、素早い攻撃を仕掛けるというトルシエ戦術のウラを突く発想なのかもしれません。彼らが、本当にどんどんと前へ突っかけたり、ロングボールを送り込んでくるから、守備での「読みベースの集中」がほとんど機能しないのです。

 それにしても、南アフリカ選手たちの「仕掛け」の迫力は、まさに「世界レベル」ではありました。何度も言うようですが・・

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 そんなことで、最初はナーバスになり過ぎ、どうしてもボールの動きに「大胆さ」が欠けていた日本チームでしたが(そのことでボールの動きがもっと矮小になって相手に簡単にアタックされてしまう!)、特に後半になって、中田を中心にボールの動きに活力が戻ってくるようになりました。それも、前半ロスタイムでの同点ゴールが効いたんでしょうネ。

 こうなったら日本のペース(まあそれでも、南アフリカのカウンターが危険いっぱいだったことを考えると、攻めさせられていた・・なんていう風にも言えるかもしれませんが・・)。組織プレーと個人勝負プレー(中田のドリブルトライやタメからのスルーパスなど・高原のドリブルシュートトライなど)のバランスも、かなり改善してきます。

 南アフリカに何度か決定的なカタチを作られたにもかかわらず、日本の若武者たちの前へ行く勢いに衰えが見えないのです。そこがスゴイ。彼らのプレーからは、(南アフリカ選手たちのチカラを体感しているにもかかわらず!)とにかくギリギリの仕掛けを続けるぞ! という高い意志を感じます。素晴らしい・・

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 そして何といっても、フィリップの「隠しダマ」とでもいえる「戦術チェンジ」に触れないわけにいきません。

 中田を「1.5列目」にして中村を二列目に上げ、ツートップの一人と本山(左サイド)を交代させてワントップにするのです。この試合では、その「戦術的な切り札」は、後半33分まで待たなければなりませんでした。このタイミングについては様々な議論がなされるのでしょうが、とにかく「結果」は素晴らしい方へ転がりました。

 そうです、この「攻撃システムの変更」によって、南アフリカの最終守備ラインと中盤守備が惑わされ、(結晶ゴールの場面で)フリーランニングする高原を誰もマークしないという事態に落とし込めてしまったのです。

 最初、柳沢と交代して入った本山が二列目に入ります。フィリップは、本山と中村の活発なポジションチェンジを意図していたんでしょうが、「見慣れた」中村ではなく、本山という見慣れない選手が中央に座ったことも、南アフリカ選手たちの意識をちょっと振り回したのかもしれません。

 この決勝ゴールの場面では、まず明神と本山が絡み、最後は、左サイドでフリーになっていた中田にパスが通ります。

 そこで慌てて相手ディフェンダーが詰めに行ったのですが、その瞬間に、南アフリカの守備ブロックに微妙な「崩れ」が発生していたのです。だからこそ、(ベストタイミングだったとはいえ)高原の、右サイドへの「斜め」の爆発フリーランニングに、相手ディフェンダーの誰も反応することができなかったと思うのです。

 それにしても、フィリップの「ゲーム中の采配」が冴えた交代ではありました。相手が疲れ、集中が切れかかっている最後の10分間にターゲットを絞って、システム変更という「切り札」を温存しておく・・と、私は理解したのですが・・

 このことについては、9月5日にアップした私のHPコラムを参照してください。

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 とにかく、ホンモノの勝負だからこその「ホンモノの成長」を成し遂げた我らが若武者たちに拍手を贈ろうではありませんか。ホンモノの勝負で、(彼らが最初の時間帯に魅せたビビリがそうであるように)少しでも消極ビールスが頭をもたげたら・・それこそすぐに悪魔のサイクルに陥り、「自ら」ボロボロになってしまいますからネ。

 個人的な評価については、今回はなしにしましょう。みんな、チームのために全力を尽くして仕事をした! 本当に感動をありがとう・・と言いたい湯浅なのです。




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