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前半はともかく・・後半は確固たる「自信の深化」を感じさせてくれた(中・名抜きの)日本代表・・日本代表vsスロバキア代表(1−1)・・(2000年6月11日、日曜日の夜)


本当に、一時はどうなることかと思いましたよ。「中田と名波がいなければサッカーにならない日本代表・・?!」なんて、次の日の新聞に踊る見出しが脳裏をかすめたりして・・

 とにかく前半の日本代表のゲーム内容からは、光明が見える気配さえ感じられなかったんですから・・

 スロバキアは、スイーパーが入る従来型のスリーバック。つまり守備に入ったら、基本的にファイブバックになります。そしてその前に(ワントップということで)四人の中盤がスペースをケアーし、ボールが回されてくる日本選手に「正確」にターゲットを絞ってしまうのです。そんな強化守備に対して、前半の日本代表のプレーは「カッタルイ」の一言でした。

 そしてスロバキアは、中盤でボールを奪い返し、危険なカウンターを素早く展開してきます。主に「日本の左サイド」から・・

 三浦淳宏のプレーが、攻守ともに中途半端だったのです。上がっても、途中でボールを奪い返されたら(全力で戻らずに)止まってしまう(様子を見ながらテレテレとジョギングする)。攻撃では、一本だけ、素晴らしい突破からのセンタリングを魅せましたが、それ以外のほとんどが「途中」でダウン! また守備に回っても、左サイドを駆け上がってくる相手に対するマークがいい加減で、「パスコースに入ってさえ入れば、うまくインターセプトできるサ・・」ってなもんだったのです。

 これは危ない・・。案の定、スロバキアは、「(スロバキアから見た)右サイドの穴」を集中して攻め込むようになってしまいます。

 また、中盤の奥と中村の出来もいまひとつ。奧は、ボランチという、中盤での「ファジーな役割」を担います。つまり彼には、「森島」のように、自分主体で積極的に「仕事を探す」ような「姿勢」が求められるのに、どうしても受け身で運動量も少ない。そしてボールを持っても、常に「ムダ」にこねくり回してしまいます。これでは日本チームのボールの動きがカッタるく、スロバキアに「次のパス」を簡単に読まれてアタックされ、簡単にボールを失ってしまうのも当然といった展開なのです。

 また中村にしても、左サイドの三浦が上がってしまってタイミング良く戻ってこないし、奧の傾向も同じようなものだから、どうしても「下がり気味」のカバーリングポジションに入ってしまうことが多くて・・。これでは彼の持ち味を出し切るところまで行けるはずがない!

 たしかにスロバキアは、一瞬の「突き(カウンター)」から、それが外れれば、本当に素早く「基本ポジション」へ戻り、ファイブバックと「四人の中盤守備ブロック」を形成してしまいますから、崩すのはそう簡単ではありません。彼らの「堅牢守備」を崩すための基本中の基本は、何といっても「素早いボールの動き」。それが、前半の日本代表は・・

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 ただ後半は、まったく見違えてしまいます。それも、一人も選手を交代せずに・・

 トルシエの「調整」ですが、まず何といっても「ハーフタイムでのレベルを超えた心理的な刺激」。もちろん「刺激」は、「赤鬼」のように怒鳴るだけではありません。静かに、落ち着いた声で「厳しい内容の指摘」をすることも、表情、声の抑揚、手振り身振りなどなどによって「効果的な刺激」になるものです。実際にフィリップがどうやったのかは知りませんがネ・・。後で仲間の記者に聞いてみましょう。

 次は「戦術的な調整」。もちろん聞いたわけではありませんので確かではありませんが、とにかく、前半の伊東と奧のポジションを変えたこと、三浦に「まずしっかりと左サイドの守備を固める指示」を出したこと(三浦のプレーが大好転・・彼については今週号の「ヤフースポーツ2002クラブを参照してください!)、そして中村俊輔に「もっと前気味ポジションで、最終勝負に積極的に絡むように(変なカタチで戻りすぎないように!)」といった刺激を与えたことだけは確かなようです。

 そして日本代表のサッカーが、素晴らしいボールの動きとともに蘇ります。

 10分、左サイドからの三浦淳宏のフリーキックが、(ニアポストサイドの小さなスペースへ)爆発的に走り込んだ森島にピタッと合う。12分、中村と西澤のワンツーから、フリーで抜け出した中村が、本当に素早く、逆の右サイドに空いた決定的スペースへ走り込む森島へ・・森島にとっては続けざまのチャンスだったのに!! 16分、右サイドから中村のサイドチェンジパス・・、三浦が一人抜いてそのままセンタリング(この個人勝負が彼の素晴らしい才能の証明!!)・・、最後は奧がシュート! やっとサッカーらしくなってきた・・。そんなことを感じ小躍りしそうになったものです。

 そして17分。西澤の素晴らしいダイレクト・ポストプレーから、右サイドを奧が抜け出し、測ったようなセンタリングを、逆サイドのスペースへフリーで走り込んでいた中村へ送り込みます。フリーのヘディングシュート!! エッ?! なんで決まらないんだ?!(最後は相手GKにキャッチされてしまって・・何故??・・後でビデオを見てみよう・・)

 その後も、西澤と交代して出場した柳沢が、26分、33分と、例の「クリエイティブな(自分主体の)フリーランニング」でパスを要求し、何度もドリブル勝負でシュートまでいきます。いや、素晴らしい!! これで久保さえ出てきてくれたら・・なんて思っていた85分。やっと登場しました・・「野人」、久保が・・

 たしかにほんの数回しかボールタッチはありませんでしたが、それ以外の「ボールがないところでの迫力プレー」に、彼の次元を超えた「キャパシティーの高さ」を感じ、これまた幸せな気分になってしまった湯浅だったのです。

 以前に何度か書いたとおり、私は、2002年のツートップは、久保と柳沢のコンビしかいないと思っているもので・・(もちろん西澤、森島のコンビもいいですがネ・・)

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 結局、試合は「1対1」の引き分け。それでも、中盤の王様、中田、中盤のスーパーバランサー、名波を欠いてこの「内容」ですから、湯浅は満足なのです(もちろん前半の出来を除いてですけれどネ・・)。

 この試合は、高さとスピード、ハードディフェンス、そして忠実に攻守にわたるシンプルプレーを続けるという特徴を持つ、今までの対戦相手とは、チョット「タイプの違う相手」との対戦だったのですが、日本代表にとっても、良い勉強になったに違いありません。

 特にスロバキアの「高さ」は脅威でした。FK、CKを取られるたびに「肝を冷やした」ものです(実際に、先制ゴールはCKのこぼれ球を決められた!!)。あっ、そうそう、スロバキアにコーナーキックやフリーキックですが、それを「なるべく」与えないように注意深くプレーするように・・というのも、たぶんフィリップの指示に入っていたと思います。

 日本代表の選手たちは、(怒りなどの人間心理のダークサイドに対する刺激も含む)優れた「心理マネージャー」によって、格段に「リスク・チャレンジ」への積極性が向上しました。そしてそれが、彼らの「自信レベル」をどんどんと深化させているのです。

 とにかく私は、優れたプロコーチ、フィリップ・トルシエが「2002」まで日本代表チームを率いることを支持しますし(もう何度も様々なメディアで発表済み・・また彼は、この一年半で日本文化との融合も進んでいる!!)、協会に対しては、彼に対する「モティベーション」も含む「確かな協力サポート態勢」を組んでもらいたいと思います。それがなければ、フィリップ自身が「やる気」をなくしてしまうかも・・とにかくもっとしっかりとした「コミュニケーション」を・・

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 今、帰りの東北新幹線の中でコラムを書き終えました。

 本当に睡眠不足ですから、本日(6月11日、日曜日)の深夜からの「ヨーロッパ選手権」を見られるかどうかはまだ定かではありません。でも遅くても、明日(6月12日、月曜日)の午前中までには、ある程度の内容のコラムはアップするつもりです。ご期待アレ・・




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