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「色々な視点」から、見所豊富な一発勝負マッチでした・・ガンバ大阪vs柏レイソル(1−1、PK戦10-9!!)・・(2000年12月17日、日曜日)


オッ!! 思わず、そんな声が出てしまって・・。PK戦、ガンバの二人が外した後の、レイソルの技術的、戦術的、そして精神的な「支柱」、ホン・ミョンボが失敗したときが一回目。そしてガンバの小島が決めた後の、レイソルの平山が外したとき(これで失敗数がイーブンになった!)が二回目。その後は、もう「オッ!」の連発。いや、壮絶な「一発勝負」ではありました。

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 この試合。両チームともに、「トラディショナルなスリーバック」で臨んできます(レイソルでは、それが通常の守備システムですが・・)。

 レイソルでは、FWのファン・ソンホンを除いて、ほぼベストメンバー。対するガンバは、守備ラインのコアである宮本、ダンブリーだけではなく、セカンドステージで大活躍したFW、ニーノ・ブーレも欠いています。ということで、柳本を「典型的スイーパー」にした急造スリーバックも仕方ない布陣ではあります。

 前半は、両チームともに典型的な「守備チーム」同士の戦いになります。互いに中盤でつぶし合い、うまくシュートチャンスを作り出すことができないのです。そして「これは、セットプレーでしかチャンスは生まれないな・・」なんて思っていたら、案の定レイソルが、前半20分に、スローインから先制ゴールを挙げてしまいます。

 スローインが、最前線まで上がっていた萩村へ正確に飛びます。萩村の意図は、ファーストタッチで、ガンバゴール前へ「流す」ヘディングか、バックパスをして後方からのロングシュートを狙わせるか・・。この「意図」を、周りの味方が「共有」していることが大事なのですが、後ろからプレッシャーをかけられていた萩村は、結局は、「触るだけ」になってしまったようで・・。ただそのボールが、正確に、後方の大野へ飛んでいってしまいます。

 ここが勝負の瞬間でした。ガンバゴール前で待つレイソルの「影武者」、加藤。彼には、ピタリと木場がマークしている「はず」でした。ただ萩村のボールが、後方へ飛び、大野へわたってしまったことで、彼のマークに付いていた木場が、一瞬ボールを見てしまいます。この瞬間の加藤の「小さな動き」が秀逸でした。加藤は、木場がボールを見てしまった「一瞬のスキ」を逃さず、ススッと、バックステップ(後退)したのです。これで加藤と木場の間隔は、一瞬のうちに5メートルは広がってしまいます。

 もう誰も加藤をマークするガンバのディフェンダーはいない?! いや、その後方にはビタウがいました。ただ彼のアタマにも、「加藤へ正確なパスが来るなんて・・」と、一瞬の「イージーな考え」がよぎったに違いありません。ビタウには完璧に見えていました。もう木場が加藤をマークすることなど不可能なことを・・、そして自分の前の加藤が完璧にフリーになっていることを・・。もちろんビタウの後方には、彼がマークすべきレイソルの選手がいたわけですが、この状況では、一瞬早いタイミングで「決断」できていたかもしれない・・

 そして、まったくフリーになってしまった加藤のアタマに、大野のヘディングパスがピタリと合ってしまう・・

 ゴール前での「ほんのチョットしたこと・・」。私には、この先制ゴールのシーンが、それを象徴していたと思えてなりません。この「ちょっとしたこと」を、人は、「決定力のシークレットポイント」なんていう表現することがあるんですヨ。

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 後半は、失うものがなくなったガンバが、積極的に「リスクにチャレンジ」して押し上げ続け、ゲーム内容が、エキサイティングに変身します。ガンガンと「前からのダイナミック守備」をベースに押し上げるガンバ・・、しっかりとその攻勢を受け止めながら必殺のカウンターを仕掛けるレイソル(ホン・ミョンボと、中盤守備のコアである明神の、実効ある読みベース守備が目立ってしまって・・)・・

 でも、こんな「イケイケ!」の状況では、ガンバの「次の守備の組織づくり」が不安定になるのも道理(そこらあたりがトップチームとの差?!)。中盤の底だけではなく(もちろん稲本がいるゾーンは、ある程度は抑えられはしますがネ・・)、最終守備ラインの組織にも「ほころび」が見えはじめます。

 何度、ガンバ最終守備ラインの「マーキング&カバーリング・バランス」が崩れたシーンを目撃したことか。それでもレイソルは、そんな「ガンバの穴」をうまく突くことができません。例えば右サイドでボールを動かしている状況で、逆サイドには「完璧な数的優位な状況」が出来上がっている・・。また、中盤でのマークを外してレイソルの選手がフリーになった状況(決定的な仕掛けの起点ができた状況)でも、最前線の誰も「決定的スペース」への爆発スタートを敢行しようとしない(決定的フリーランニングがない!!)。

 押し込んでいても(全体的にはゲームを支配していても)、最後の瞬間では決定的チャンスをうまく作り出すことができなかった(攻め切れなかった)ガンバも含め、「スペース感覚」が稚拙というか・・、決定的スペースを狙う「意図レベル」に大きな課題を見た湯浅でした(まあ、もう何度も触れましたがネ・・)。

 それは、選手たちの「イメージのシンクロ(同期)レベル」が、まだまだ・・ということなのですが、例えば、後方からパスを受けて「決定的な仕掛け人(ラストパスの出し手)」になれる選手の「(ボールを持つ前の!)アクション」に、ボールを持った「次の瞬間」における「連続的なプレー意図」を感じないんですよ。これでは、「パスレシーバー(パスの受け手)」に行動を起こせ! というのも酷ではあります。

 それでも、どんな状況でも、とにかく最前線のパスレシーバーたちは、決定的なパスを『呼び込む動き』に対する「強い意志」を持ち続けるべきです。それがなければ、決して、自分たちのサッカーのレベルをアップさせること(レベルアップのイメージ的なキッカケを掴み取ること)はできないのです。

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 さて、後半35分に飛び出した、ビタウのロングシュートが決まったことでもつれ込んでしまった延長戦。その前半に、ビタウが、「演技」ということで二枚目のイエローを食らって退場させられてしまいます。

 たしにか、「転んだ瞬間」は、半分は故意だったのかも・・なんて感じられはしましたが、リプレイを見てみると、平山の「体勢」が遅れ気味だったこともあって、そのぶつかり合いが、平山の「ファール気味」のショルダーチャージだったと言えないこともない・・そして「自分の身体が先に出ていること」で、ビタウが、単に「(転ばないように)踏ん張らなかった」だけ・・なんて考えられないこともない・・フム・・

 来シーズンからは「トトカルチョ」もはじまるということで、ホント、レフェリーの「お仕事」は大変になりますよ。「レフェリーのミスジャッジもドラマのうち・・」なんていう普遍的なコンセプトが社会的なコンセンサスを得るためには、まだまだ時間が必要でしょうからネ・・

 また、このビタウの退場劇のすぐ後のことですが、素晴らしいコンビネーションから、最後は松波が「アタマ」でボールを運び、(体勢的に)完璧に、マークする薩川を抜き去って決定的なシュートまで行こうとするシーンがありました。完璧に置いていかれた薩川は、まず「手」をつかって抑えにかかり、次は後方から「肩」を入れ、最後は「身体が触れ合って」いる状況だからこそ出来る「自然なもつれ合い」を演出して、松波を倒してしまいます。完璧な「PK」のシーンでしたが、ここでもノーホイッスル・・。フ〜〜

 本当に、「J」のレフェリーの方々には、これから「決断するホンモノの勇気」が求められます。「流して」しまうことで「何となく逃げようと」すれば、その「(様々な重大ファクターを包含する)反動」は、確実に自分自身に跳ね返ってくるのです。

 レフェリーは「ハード・ジョブ」。だからフットボールネーションでは、優秀なレフェリー(ゲームコントロールがうまく、確固たる決断ができるレフェリー!)本当に「尊敬される」存在です。でも日本では・・。

 「体質」的なところ、つまり「文化的なベース」も含め、「心理・精神的」な部分もメインメニューにしてトレーニングを積まなければ、レフェリー諸氏の「メンタル」が耐えられなくなる危険性が本当に大きいと感じます。もちろんサッカー協会は、そのことも含めて周到な準備を進めているものとは思いますが・・

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 さてこれで、準々決勝のペアが決定しました。マリノス対アントラーズ(必見!!)、ジュビロ対ガンバ、エスパルス対ジェフ、そしてヴィッセル対セレッソ。

 一発勝負の試合・・それを前提に「見所」をご自分で考えてみるのも一興です。ではまた・・




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