まず立ち上がり。ガンバが積極的に「前」へ出てきます。「あまり出過ぎると、アントラーズのカウンターを食らうぞ・・」なんて思っていたのですが、さにあらず。ガンバは、開始1分に、この試合での最初のシュートを放つところまで、アントラーズの最終守備ブロックを押し込んでしまうのです。
シュートは小島。羽田のマークがちょっとズレたのですが、あわてて羽田がマークへ行こうとしたとき、味方とぶつかってアプローチが遅れてしまったのです。アントラーズの守備システムは、マークする相手を受けわたしながら、相手が最終攻撃段階にはいったら確実に、タイトなマンマークへ移行する・・というもの。このシーンでは、羽田のマークが遅れたことで、小島がまったくフリーになっただけではなく、そのカバーリングも遅れてしまいます。そして小島のフリーシュート!!(惜しくもゴール右に外れる・・)
そんなところにも、アントラーズの「立ち上がりの集中切れ」を感じてしまって・・。彼らも、準々決勝でガンバと当たったジュビロのように、「飛車角落ち」の彼らを甘く見ていた・・?! まあ、そんなことはないとは思いますが・・
それだけではなく、結局ガンバは、立ち上がりの勢いを先制ゴールに結びつけてしまいます。前半11分のこと。それは、最初から仕掛け続けていた小島の「積極性」が実を結んだゴールでした。
一度クリアされたボールを左サイドで拾ったのは片野坂。ただ熊谷のマークを、最後のところで外すことができずにバックパス。受けたフリーの橋本が、タイミング良くタテパスを通し、その決定的スペースには、これまた「小島」が、素晴らしいタイミングで走り込んでいたというわけです。左足、一閃!
それは、アントラーズ、ファビアーノが、小島に対するマークを一瞬はずしてしまった瞬間でした。そして小島が入り込んだのが、羽田の背後に広がる決定的スペース(羽田の視線は、ボールを受けた橋本へ・・)。ファビアーノにとって、痛恨のボールウォッチングの瞬間ではありました(小島の、素晴らしいスタートタイミング、そしてフリーランニングコースに拍手!)。
ここからアントラーズが、「総合的なチーム力の差」を感じさるくらいに盛り返します。それでも、柳本をスイーパーに置いた「スリーバック」を基調にする、堅牢なガンバ守備ブロックが崩れかかるシーンは希。中盤選手たちも含め、一人ひとりの、「もし少しでも集中を切らせたら(マークが甘くなったら)、アントラーズに完璧にやられてしまう・・」という、自分主体の「強烈な闘う意志」を感じます。アントラーズは、「ある程度」フリーでボールを持つ選手(攻撃の起点)を創り出すことにさえ苦労してしまって・・
とはいっても、アントラーズの守備陣も堅牢そのもの。彼らは「あるゾーン」に入ってきたら(または相手の最前線までボールが回ってきたら?!)、確実にマンマークへ移行する・・というチーム内の決まり事を忠実に守ります。小島の先制ゴールの後は、まったくといっていいほど、ガンバに攻めさせないのです。ある瞬間、後方から走り抜けるビタウを、「あの」ビスマルクが最後までマークし続け、最後は、アントラーズ最終守備プレイヤー前戦を「追い越して」しまったシーンがありました。そんなところにもアントラーズ選手たちの高い守備意識を感じます(相手を甘く見ていた最初の10分を除いて?!)。
ただ徐々に、アントラーズの攻撃が「危険な香り」を放ちはじめます。中盤、そして最前線の選手たちが、縦横無尽の「ポジションチェンジ」を魅せはじめたのです。
アントラーズ最前線の鈴木が、ズバッと戻り、その空いたスペースへ、小笠原、中田浩二、はたまた熊谷などが、ワンツーをうまく活用しながら押し上げる・・、そんな「タテのポジションチェンジ」をどんどんと繰り出してくるアントラーズ。その「攻めの変化」に、ガンバの「忠実ディフェンス」も振り回されはじめたのです。
タテに「相手が入れ替わってしまう」ということで「クリエイティブなマークの受けわたし」が難しくなる・・ということです。ずっと一人の選手をマークするのは簡単ですが、相手が「タテに入れ替わる」ような錯綜した状況では、急に「前」へ出てきた相手選手をタイミング良く「つかむ」のは、そんなに簡単なことではないのです。現にガンバの中盤守備を受けもった二川、橋本などが、(戻った相手に付いて行き過ぎたことで)「自分のゴールへ向かって」あわてて戻るようなシーンを何度も目撃しました。
それは、アントラーズが、ゲームを「内容的」にも完全に支配していた時間帯。前半、15分から20分を過ぎたあたりからだったでしょうかネ・・。それは、アントラーズが繰り出す「攻撃の変化」に、ガンバの守備が不安定になり(選手たちが不安に感じ)はじめた時間帯でした。
そんな時間帯にアントラーズの同点ゴールが決まります。ビスマルクのフリーキック(チョンと置くような横パス)・・相馬のロングシュート・・こぼれたところを中田浩二が「ダブルアクション(一度蹴り、GKにはじかれたところを、とどめの一発!)」で決めたゴール。前半23分のことでした。
その後はもう完全にアントラーズペース。何度もガンバの守備を振り回します。「ガンバの選手たちは、本当によく耐えているな・・」。そう思ったものです。
29分、中田浩二が、小笠原とのワンツーから抜け出し、左サイドでのフリーシュートまでいく・・。何度か、崩しかけの場面を創り出した後の42分、右サイドの相馬から、タテに長い距離を走った小笠原へタテパス・・、ダイレクトで落として、それを熊谷が受け、相馬へ・・、そこから次へ展開・・などなど、素晴らしくクリエイティブな「攻撃の変化」を見せつけるようにガンバを押し込んだアントラーズだったのですが・・
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ただ後半は、ガンバが、より積極的な攻め上がりを魅せます。これにはちょっと驚かされたのですが、彼らは、「アントラーズなんて怖くはない! よし、やったる!!」という思いを強くしたのかも・・。さもありなん。後半にはいったところから、アントラーズの攻めが、ポジションチェンジが目立たない「単調なもの」になっていったのですから・・
後半14分。ガンバにビッグチャンスが訪れます。左サイドの片野坂から、タテに抜け出た松波へ素晴らしいタテパスがとおる・・、そのまま松波はセンタリング・・、合わせた小島がヘディングシュートを飛ばす・・、ただボールは、アントラーズGK、高桑の正面に飛んでしまって・・、フ〜〜
アントラーズでは、左サイドの王様、相馬がケガで退場し、代わりに本田が登場します。そしてそれまでボランチだった中田浩二が左サイドへ・・。この交代によって、中田浩二の押し上げの回数がかなり減ったと感じます。もちろん、チーム全体に「単調な(消極的な)プレーの雰囲気」が漂っていたから仕方ないともいえるのですがネ・・
そして後半38分。待ちに待った「変化ファクター」が登場します。右サイドの内田に代わり、ドリブル突破に威力を発揮する本山が登場したのです。そしてその4分後。本山の交代が功を奏し、アントラーズが勝ち越しゴールを挙げます。
その攻撃は、右サイドの熊谷からはじまります。スパッと、前の鈴木の足許へタテパスを通す熊谷。鈴木は、ダイレクトで、右サイドのタッチライン際にいた本山へパスを送ります。しっかりとトラップし、「さあアタックしてみろ! 抜いてやるゾ!」ってな雰囲気を強烈に発散しながら、チェックにきた柳本へ「ボールを押し出しながら」迫る本山。周りにいたガンバディフェンダーたちの視線と意識も、彼の「仕掛けアクション」に釘付けです。
それは、本当に素晴らしい「動的なタメ」ではありました。それも、ガンバの選手たちが、本山のドリブル突破を恐れているからに他なりません。ただ本山は、そんな「タメ」から、中へ移動していた鈴木へ正確なパスを送ります。本山に気をとられていたガンバの選手たちは、もう誰も鈴木をチェックできません。ワンタッチ、ツータッチと、ガンバゴール前へボールを運び、左足、一閃! 素晴らしい勝ち越しゴールではありました。
「まあ、これで決まりだな・・」なんて思っていた湯浅でしたが、サッカーの神様は、「そうは問屋がおろさないんだヨ・・」とでも言うかのように、もう一度「ドラマ」を演出してしまいます。ガンバが、ロスタイムに、同点ゴールを叩き込んだのです。
コーナーキックから、まずビタウがシュートを放ち、こぼれたところを鈴木健仁がボールを叩きます。それがバーを直撃し、混戦になったところを、最後に小島がアタマで押し込んだのです。同点ゴ〜〜〜ル!!
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そして延長戦。「ヨシ! ここからだ・・」と、気合いを入れ直した湯浅でしたが、結局は延長前半の開始2分、アントラーズが、コーナーから決勝ゴールを決めてしまって・・。それは、熊谷の、素晴らしいヘディングゴールでした。
レイソル戦、ジュビロ戦と、苦しい中でも最後まで集中を切らさずに素晴らしい「闘い」を披露したガンバに拍手をおくりましょう。ちなみに、前半のシュート数は、アントラーズの「9本」に対し、ガンバは「4本」。ただ後半は、アントラーズの「4本」に対し、ガンバは「7本」ものシュートを放ったのです。ガンバの諸君、エキサイティングゲームをありがとう・・
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さてこれで、天皇杯の決勝は、アントラーズ対エスパルスということになりました。実力チーム同士の熱い戦い。「素晴らしい内容」が詰め込まれたゲームになること請け合いです。
この試合、湯浅は、ラジオの文化放送(JOQR)で解説します。元旦のスタジアム観戦では、「ラジオ」もお忘れなく・・なんてネ(気恥ずかしくて赤面!)。「短くまとめる・・」ことが不得手な湯浅でした。では・・