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いや、堪能しました・・2000年トヨタカップ・・レアル・マドリーvsボカ・ジュニアーズ(1−2)・・(2000年11月28日、火曜日)


試合後、打ち合わせがあったため、アップデートがちょっと遅れてしまいました。

 さて・・、戦術的に素晴らしくハイレベルだったこの試合については、あまりカッコつけず、とにかく世界のワザを心底楽しんだ湯浅でした・・というところから入りましょう。

 まず気づいたことは、両チームの「コンセプト(チーム戦術)」に大きな違いがあることです。ボカは、長身でパワーあふれるパレルモ、ものすごく速く、直線的なドリブル突破に威力を発揮するデルガド、そして変幻自在の天才、リケルメ、この三人による「個人ワザ中心の勝負の仕掛けプレー」を、周りのバタグリア、バズアルド、セルナなどがサポートする(もっと言えば、邪魔しない!)ことに徹するという攻め方。対するレアルでは、「組織プレーと個人勝負プレーの優れたバランス」を感じます。

 試合開始三分に飛び出した、ボカの先制ゴールですが、キッカケは、カウンター気味のタテパスでした(さあ攻めるぞ!・・と前へ上がるレアルから高い位置でボールを奪い返した典型的カウンター)。左サイドに入ったマテジャンのタテパスが、本当にギリギリのタイミングで、タテの決定的スペースへ飛び出したデルガドに通ってしまったのです。マークしていたイエロは、「エッ!」と一瞬動きを止めてから全力でカバーポジションへ・・。とはいっても、もうデルガドがゴールへ向かうのを抑えたり、そこからのラストパスのコースを切ることしかできません。

 問題は、「正しいポジション」に入ったイエロの後方スペースをバックアップしていたカンラカ。完全に「ボールウォッチャー」になってしまい、自分の後方から走り込むパレルモの動きを完全に把握していなかった(イメージできていなかった)のです。ゴールを決めたパレルモは、デルガドへのタテパスが通った瞬間から、「大外」を回り込むように、カランカの「視界」から消えます。必死で戻ってきたロベルト・カルロスも、いくら足が速いとはいっても、追いつく(パレルモの前に入り込んでカバーリングする)には難しいタイミング。

 そしてデルガドは、それこそ「ここしかない!」というコースへ、ラストパスを送り込みます。そうです、レアルGK、カシージャスと、イエロとカランカが作る「最終守備ライン」の「間のスペース」を通す、グラウンダーのセンタリングです。そしてそれが見事に決まってしまうのです。

 タイミング的には、もしロベカルが「本当に必死」に戻ってきたら間にあったかも・・とは感じます。それでも、やはり一番の問題は、カランカが、パレルモに「消えられて」しまったこと、そして彼のポジションが、ちょっと「後ろ過ぎた」ことです。

 でもまあこれは、ボカの「一発カウンター能力」を誉めるしかありませんがネ・・。とにかく、デルガドが送り込んだラストパスの「タイミング&コース」に拍手といったところではありました。またその三分後に飛び出したパレルモの、一発カウンター追加ゴールも「見事」の一言。

 でもこの追加ゴールは、レアル右サイドバック、ジェレミ(カメルーン代表)のポジショニングミスが原因だったとも言えます。カメルーンの選手たちは、自分たちの「個人能力」を過信し(?!)、守備や攻撃における「基本中の基本(ここではマークのポジショニング)」を無視する(いい加減に守る)傾向が強いのです。

 このことについては、今回のオーストラリアオリンピックでも、何度も指摘した通りです(とはいっても彼らは優勝を遂げてしまったんですが・・)。とにかく、彼らの「個人的な能力」に、忠実でスマートな「組織プレーの発想」が加わったら、世界でも敵なし!・・なんですが・・

 友人のアフリカ人コーチが、「オマエ・・アフリカに住んだこと、ないよな・・。とにかく一度でも長く住んでアフリカの文化に接したら、どうしてヤツらが組織プレーができないか、忠実な守備プレーができないのかがすぐに分かるよ・・。とにかくオレは、アフリカ諸国が、本当の意味で強いサッカーができるまでには、まだ後100年はかかると確信しているんだ・・」なんて言ったことがあります。まあ「100年」は大げさにしろ、とにかく彼らは、攻守にわたる、「組織プレー(忠実な基本プレー姿勢)と個人勝負プレーのバランス」に大きな課題を抱えているのです・・

 あっ・・ちょっとハナシが逸れてしまいましたが、とにかくジェレミの「いい加減さ」が目立つプレーに、ちょっと憤っていたモノで・・(それでも時間を追って良くなってはきましたが・・)。

 その後のロベカルの「ドカン!」についてはコメントなし。本当は「2-2」になっていてもおかしくないのにネ・・(7分に飛び出した、バー直撃シュートのことですヨ!)。それにしてもロベカル。攻撃でも、守備でも、ほんとうにスゴい選手(本当の意味での良い選手)です。攻撃については、見ていて「ワクワク」させられることこの上なく、また、後方からの「ここぞ!(つまりボール奪取を確信した)」の強烈なチェイシングやカバーリング、はたまた読みベースのインターセプトなどの、『忠実・堅実』な、予測ベースのクリエイティブ守備プレーに、何度感動させられたことか・・

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 試合は、前述したように、美しい「組織プレー(その中に、フィーゴなどの個人勝負が効果的に絡む!)」のレアルに対し、個人能力を最大限に生かす「攻撃戦術」を徹底するボカ・・という構図。二点先行したから・・というよりは、最初からボカの戦い方は、「しっかり守ってカウンターを・・」というものだったと感じます。

 そしてレアルが、「全体的」には押し気味に試合を進め、「比較的」多くのチャンスを作り出します。

 前半の16分には、ドリブルで攻め上がったグティーが、ラウールとの「ワンツー」で抜け出し、決定的なリターンパスを受けようとする状況で、ラウールが(相手守備がグティーに引きつけられていたことで)、ボールを素早く持ち替え、美しい「ロビングシュート」を放ちます(惜しくもバーの上・・天才的なラウールの発想!)。対するボカも、25分には、デルガドが、レアル守備陣5人を「まとめて」抜き去って決定的なシュートまでいってしまいます(飛び込んだレアルGK、カシージャスが、顔に当てて防ぐ!)。

 また前半34分には、レアルが本当に美しいコンビネーションプレーを決めます。ベストタイミングの「ワンツー」トライの場面で、ツーのパスが、「パス&ムーブ」で動いた「予定の選手」ではなく、「その前」で決定的スペースへフリーランニングしていたマケレレへ送られたのです。それこそ「理想的な、三人目フリーランニングの活用」。素晴らしいコンビネーションではありました。

 後半も、2分に飛び出した(ボカの)素晴らしいフリーキックからはじまり(言わずと知れたリケルメのフリーキック!・・レアルGKカシージャスがギリギリのところでパンチングで逃れる!)、3分には(レアルの)グティーのシュート(ロベカルからのタテへのスルーパス・・グティーのタテへのフリーランニングが秀逸!)、11分の、レアルのセットプレーからのチャンス(ヘディングで流れたボールを、まったくフリーだったラウールがヘディングでシュート!)。その後も、マクマナマンと交代したサービオが左サイドを突破して送り込んだ「ラスト」センタリングが、ギリギリで合わなかったり(フィーゴでしたっけ・・)、フィーゴのコーナーキック(フリーキック)が、イエロの頭にギリギリで合わなかったりと、全体的には、レアルが、決定的なチャンスを「より」多く作り出したのです。でも・・

 まあこの試合は、ボカの「堅守」からの、鋭い「個人能力中心の攻め」が、「組織と個人」が秀逸なバランスを見せるレアルの攻めを振り切った・・といったものでした。それにしても、最初のボカの二点が大きかった(レアルにとっては痛かった)・・でもそれも、最初からボカが意図していたことでしょうから、見事!というしかない・・

 最後に、フィーゴの「実効あるプレー」について・・。たしかに、得意のドリブルからのラストパスやシュート・・という場面は作り出すことができませんでしたが(それでも相手にとっては、彼のリスクチャレンジだけでも十分大きな脅威!)、彼の正確なキックが、レアルに多くのチャンスをもたらしたことも事実です。レアル、ロベカルのゴールも、彼のセンタリングからでした。また彼が蹴るセットプレーは、もう危険そのもの。本当に「走り込む味方」にピンポイントに合うのです(もちろん決定的スペースで、パスの受け手にピタリと合う!)。だからチームメイトたちも「確信」をもって飛び込んでいくことができる・・

 フィーゴの「価値」は、チームメイトたちの「勝負イメージ」を大きく拡張したこと・・とも言い表すことができそうです。

 もう一つ、デル・ボスケ監督の手腕について・・。ラウールとグティー、フィーゴとマクマナマンという「異なるタイプの攻撃選手」をうまく組み合わせることで、より「個人の才能」を効果的に生かすことができていましたし(グティー、フィーゴ、マクマナマンの、縦横のポジションチェンジをベースにした攻守にわたる効果的なプレーは秀逸!)、彼が決断した(プレーメージを植え付けた?!)、エルゲラとマケレレの「ボランチコンビ」もうまく機能していました。要はデル・ボスケ監督が、「才能」たちに、「チームプレー」にも徹したプレーをさせることができる優秀なサッカーコーチだということです。とはいっても、マクマナマンとサービオ、またマケレレとモリエンテスの交代は、どちらかといったら「逆効果」ではありましたが・・

 対するビアンキ監督。私はボカのことは詳しくないのですが・・。彼もまた「天才のトップ三人」を生かす、後方バックアップ組織をうまくコントロールしていた(戦術的に、また心理的にうまくマネージしていた)・・という意味で、優秀なサッカーコーチだと思います。チーム全体が、「チーム戦術(チームコンセプト)」をベースに、本当に首尾一貫したプレーに「最初から最後まで」徹していたのです。素晴らしい・・

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 とにかく、気の抜けない(戦術的に高いレベルの)エキサイティングゲーム・・。堪能させてもらいましたヨ・・

 さて次は、「Jのチャンピオンシップ」です。最初は、四日後の土曜日に横浜国際競技場で・・。こちらもレポートする予定。ご期待アレ・・




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