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イラクの「勝ちたいという意欲」に負けた・・U19アジアカップ決勝・・日本代表vsイラク代表(1−2・・延長Vゴール)・・(2000年11月27日、月曜日)


あっ、羽田、見ちゃダメだ!

 思わず、そう叫んでいました。イラクのVゴールのシーン・・。自らのヘディングが、はね返すのではなく、日本ゴールへ向けて飛んでしまった後、足を止める羽田。その前には、イラクの選手がいる・・。ボールへは、一人のイラク選手、日本の池田とGKの藤ヶ谷が集まってきます。結局、藤ヶ谷が「ヘディング」ではね返したのですが、それが、イラク選手の目の前へ飛んでしまって・・。そうです、羽田の「前」にポジショニングしていたイラク選手の足許へ・・

 この「Vゴール」は、ついていかなった・・ということなのかもしれません。それでも、「ツキ」は、最後まで集中を切らさない「ロジック・プレー」によって、自ら「引き寄せる」ことができるもの・・。自分のヘディングしたボールを、「一瞬」見てしまった羽田。その「一瞬のボールウォッチング」が勝負を分けてしまいました。

 羽田は、日本守備陣の「コア」。大会を通じて素晴らしい活躍を魅せました。だから責めているのではなく、ここで体感した「世界の勝負の厳しさ」を、これからのプロ選手としての「血と肉」にして欲しい・・そう思うのです。

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 イラクにとって、「地元」での決勝ともいえる試合は、彼らの「絶対に勝ちたいという意欲」が前面に押し出された展開になります。

 守備ブロックを固めるイラク。ただその「固め方」は、守備的な姿勢とはまったく違います。日本がボールをもったら、全員が、「次の攻撃を意図した攻撃的な守備」へ向かっていく・・というものなのです。

 とにかく彼らの、レベルを超えた中盤からのプレッシャーからは、「勝ちたい!」という意欲がガンガンと伝わってきます。そしてボールを奪い返したら、誰もが、最後のシュートを強烈に意識した「仕掛けプレー」に挑んでいく・・

 攻撃の目的は「シュートを打つこと」。イラク選手たちの攻撃プレーからは、それに対する意欲が、ビンビンと伝わってくるのです。それに対して日本チームは、まずしっかりとボールを動かして・・。もちろんそれも重要ですが、この試合のように、グラウンド状態が悪いなかで「スマートな展開からの最終勝負」を意図しても・・

 たしかに個人突破トライも見せる日本チームでしたが、それも「次の勝負パス」を意図したもの。「まず自分が・・」という意欲では完全にイラクに軍配が上がります。イラク選手たちは、「オレがシュートまでいってやる! オレがゴールを挙げてやる!」という強い意志を前面に押し出した「ギリギリの仕掛け」を続けるのです。

 戦術的なチカラ(意図のレベル)では、たしかに日本チームの方が上。でも「最終勝負」へ向かっていく姿勢では・・

 後半は、日本チームが持ち直し、セットプレーから、田原のスーパーヘディング同点ゴールも飛び出します。そして中盤を支配します。それでも支配するのは「中盤」まで・・といった展開が続いてしまって・・

 「良いカタチ」にこだわり過ぎる日本チーム・・という(心理的な)構図なのでしょうか。こんなグラウンド状態なのだから、もっと、どんどんと最前線へ放り込んでもいい! そのためにヘディングの強い田原がいるんじゃないか! なぜもっとロングシュートにトライしないんだ! なぜもっと、中盤からのドリブル突破にトライしないんだ! それがないからイラク守備陣を前へ引き出すことができない・・

 イラク選手たちとの、「ゴールへ向かう姿勢」の差が如実に出たのが、延長にはいってすぐの時間帯。一点入れれば、その時点で試合を決めることができる・・。イラク選手たちが「再び」大攻勢をかけてきたのです。2分には、24番の選手が、日本守備陣を三人振り切るドリブルで決定的なシュートを放ち(日本選手の体に当たってコーナーへ・・ラッキー!)、その一分後には、再び、まさに「シンプル」という表現がぴったりな放り込みと、中央で待ちかまえていた選手の、ゴールへの強烈な意志を感じさせる「レベルを超えた粘り」から、決定的なシュートを打たれてしまいます。そして延長前半も、もう終わろうかという時間帯で・・

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 日本チームは、「アジアの強豪」として、立派な戦いを続けました。それは賞賛に値しますし、彼らには輝ける未来があります。グラウンド状態、相手の強力な心理パワーなど(何といってもイラクは本当の戦争を経験していますしネ・・)、「世界での肉を切らせて骨を断つ勝負という現実」に対峙した今回の「アウェーゲーム」が、彼らの今後の進歩にとっての「(彼らが心底意識する)貴重な学習機会」だったことを願わずにはいられません。




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