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静かな、静かな試合でした・・日本代表vsUAE代表(3−1)・・(2000年8月16日、水曜日)


前回の日本代表レポートは、6月18日のボリビア戦。全体的な印象は、そのときとあまり変わりません。静かな(納得するには厳しい)内容だった・・それです。

 たしかにUAEは、ガチガチに守備を固めています。そして、組織的な攻めではなく、一発カウンターを主体に攻め上がります。ボールを奪いかえした瞬間から、数人のアクションで日本ゴールへ「素早く」迫ることにトライし、失敗したら、すぐに中盤からの強固な守備ブロックを組織してしまうのです。守備ブロックを安易に「開けない」し(しっかりとバランスをとりながら攻め上がる!)、そこそこのチカラのある相手ですから、日本代表が、自由で活発な攻めを展開できないのも道理。「穴」がほとんど出来ないのですからネ・・でも・・

 日本代表は、スローインとFKから得点しました。ただそれ以外の「流れの中での決定的なチャンスメイク」は、前半、中盤の小野から最前線に出されたタテパスを久保がヘディングで流し、そこに、二列目から最前線を追い越して上がった中村が放ったフリーシュート、そして後半の、(セットプレーのこぼれ球から)左サイド後方にバックアップしていた望月からのサイドチェンジパスを、フリーで受けた高原のチャンス「だけ」なんですから・・

 ・・なんて書いていたら、86分に、素晴らしい「流れの中でのゴール」が生まれてしまいました。仕掛け人は、後半に中村と交代した本山。ドリブルで突っかける中で、最前線の柳沢の「足許」目がけて「ワン」のパスを出し、自身はそのままダッシュで走り抜けて「ツー」のリターンパスを受けようとします。ただ柳沢は、ダイレクトで、左サイドの決定的スペースを狙っていた高原の前へ・・。そして彼が、一瞬タテへドリブルするなかで中央へ折り返し、そのラストパスを、ジュビロの奥が冷静にゴール右サイドへ決めたというわけです。素晴らしいゴールではありましたが、全体的には、納得が・・

 あっ、そうそう。私が熱烈に支持する、サンフレッチェの久保が先発出場したことをまず書かなければ・・

 全体的な出来は「そこそこ」なのですが、何故もっと必死にチェイシングしないんだ! 何故もっと、クリエイティブなムダ走り(決定的フリーランニング)にチャレンジしないんだ! 何故もっと、まず自分のところでボールをキープしたり、強引でもいいから、中盤からのドリブル突破にトライしないんだ!・・なんて心の中で何度叫んだことか・・

 彼は、もっともっとアピールすることの重要さを認識しなければ。能力は十分。いや、ストライカーとして、他の選手とは比べものにならないほどの「ハイレベルの才能」に恵まれているのに・・

 たぶんこのプレー内容では、久保が、予想を覆してオリンピックの「オーバーエイジ代表」に選ばれることはないでしょう。「楢崎、服部、森岡、西沢のなかからオーバーエイジを選ぶ・・」、フィリップは、そう公言しているのですが、私は、「それでも、この試合で久保が、彼本来のチカラを十二分に発揮しさえすれば・・」なんて思っていたんですヨ。ただ「極限の積極性」という意味で、彼が抱える心理的な課題が見え隠れてしてしまって・・。まあ仕方ないか・・

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 久しぶりに登場した小野についても、短く・・。彼の、できるかぎり全てのプレーに絡んでやる・・という姿勢は評価しましょう。その意識を高め、「まず」忠実に、攻守にわたる組織プレーから入っていけば、必ずや、良い結果に結びつくに違いありません。ただこの試合では、「姿勢」は合格、でも「実効レベル」では・・、という結果に終わってしまいました。

 中村と、右サイド、中盤下がり目のポジションをチェンジしながら、広い視野からの正確なロングパス、タイミングの良いラストパスにトライするなど、かなり積極的にプレーはしていたのですが・・。

 守備では、彼のところで(インターセプトを狙った状態で)ボールを奪うことができたシーンはほとんどなく(相手が抜きにかかった時の競り合いの場面だけ)、攻撃でも、彼が中心になった(コアになった)勝負の「仕掛けユニット」は、右サイド、望月への何度かのサイドチェンジパス、また前述した、久保へのタテパスくらい。中盤からのドリブル突破チャレンジや「タメ」など、本当の意味での「リスクチャレンジ」は、まったくといっていいほど見られませんでした。

 ケガ?! まあ、それもあるのでしょうが・・。彼には、今の「基本的なプレー姿勢」を維持しながら、もっともっと、「最終勝負の仕掛け人」として、エゴイストに徹したリスクチャレンジを要求したいと思う湯浅なのです。ガンバレ、小野!!

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 この試合において、「戦術的な部分」でもっとも気になったのは、特に二列目からの勝負が、あまりにも「淡泊」だったということです。前半では、西沢、久保、森島、小野、中村が、ボールを動かすことだけに気を取られ、それをベースにした「攻撃の変化の演出」というイメージが希薄だ・・という印象を持ったのです(とはいっても、森島はクリエイティブなバスの受け手、小野、中村はパサータイプだから仕方ないか・・)。もちろん、相手が守備を強化している・・ということを前提にしてもです。

 要は、中盤でのキープや「タメ」、またドリブル突破トライなどの「リスクチャレンジ」があまりにも少なすぎた・・ということです。たしかに後半になって、柳沢、高原、そして三浦、本山が登場してきてからは、少しは攻撃に「変化」が出てくる兆しはありましが・・

 (ドリブル突破やフリーランニングでパスを受けて・・)スペースで、ある程度フリーでボールを持ち、そこから「勇気をもって」リスキーな勝負を仕掛けていく・・、そんな、「攻撃における当面の目標」を達成するためにしっかりとボールを動かす・・。そのことをもっと意識(イメージ)しなければ・・と強く感じた湯浅でした。

 決して私は、「攻撃のカタチ」などということに言及しようとしているわけではありません。選手たちそれぞれがアタマの中に描く「次の攻撃のイメージ」が、互いにシンクロすることが「カタチなんだ!」と言われれば、まあ、否定はしませんがネ。それでも私は、自由にならざるを得ないサッカーの攻撃については、「カタチ」などという表現は、あまりにも「誤解」を招きすぎると思うんですヨ。だから、まあ、「イメージ」とか、目指す方向性とか・・そんなソフトでファジーな表現の方が、馴染むような気がするのです。

 急に「カタチ論議」に奔ってしまって失礼しました。あまりにも日本代表の攻撃が「消化不良」だったモノで・・

 そのことについて、「中田」を引き合いに出すのは、あまりにも安易だと感じている湯浅でした。ではまた・・




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