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ドイツ便り・・その(2)・・(2001年7月9日、月曜日)

さて、ドイツレポートの第二回目。いま、国際サッカーコーチ会議の第一日目が終了し、ホテルに帰ってきたところです。

 今回も、フェリックス・マガート、フォルカー・フィンケ、クーノ・クロッツァー、ユルゲン・レーバー、エドゥアルド・ガイヤー、ハンス・マイヤー等々、現役の「ブンデスリーガチーム監督」も含め、数多くの「第一線で活躍する(活躍していた)」有名コーチ連中も顔をそろえています。もちろん、国際サッカー連意(FIFA)やヨーロッパサッカー連盟、はたまたヨーロッパサッカーコーチ連盟などからも代表者が参加していることは言うまでもありません。そして多くの、有名な外国人コーチ連中。そんな中で、本当にビックリするような人物が、今回の国際会議に招待されていました。「あの」リヌス・ミケルスです。

 リヌス・ミケルスといえば、1974年ドイツワールドカップで伝説になったスーパーチーム、オランダ代表を率いた・・というか、世界中から賞賛された「トータル・フットボール」を演出したプロコーチです。

 「あの」オランダチームは、サッカーの歴史を動かしたとまで表現された、本当に夢のようなプレーを展開しました。その「グラウンド上の演出家」は、いわずと知れた「ヨハン・クライフ」。結局ファイナルで、地元のドイツに競り負けはしましたが、彼らのサッカーが、世界中に与えた影響は、計り知れないほど大きなモノだったのです。

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 余談になりますが、もうすぐ発売される「文芸春秋ナンバービデオ・・五秒間のドラマ」の最初を飾るのも、この「オレンジ軍団」です。このビデオは、1974年ドイツワールドカップの「オランダ対ブラジル」、1982年スペインワールドカップの「イタリア対ブラジル」「フランス対ドイツ」、そして1986年メキシコワールドカップの「フランス対ブラジル」「アルゼンチン対イングランド」の各ゲームから、これぞ! という「戦術&心理ドラマ」をピックアップし、その「深遠な内容」を、実際の映像のスローモーションやコンピュータグラフィックスなども駆使して「表現」したものです。

 数秒間に凝縮された、戦術的な、また心理的な、血わき肉おどる「ドラマ」。上記の五試合は、フルマッチとして、既に「文春ナンバービデオ」から発売されているのですが、その中から、私が重要なシーンをピックアップし、その「コノテーション(含蓄される意味)」を解説したというわけです。ということで「原作者」は湯浅健二。ご期待ください・・

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 その「五秒間のドラマ」のなかでも、1974年ワールドカップでの「オランダ対ブラジル」には傑出した「意味合い」がありました。その演出家である「リヌス・ミケルス」が参加している・・。私は、彼が1980年前後に「1.FCケルン」の監督をしていた当時を思い出していました。リヌスは、1974年ワールドカップのあと、外国でも(またアメリカでも)仕事をしていたのですが、彼が去った後、徐々にオランダ代表の「カリスマ」が色あせていったものです。

 リヌスは、1988年にドイツで開催された「ヨーロッパ選手権」では、再びオランダ代表を率い、彼らに「初めてのビッグタイトル」をもたらしました(ライカールト、フリット、そしてファン・バステンのコンビ全盛期!・・リヌスによって再びオランダ代表が光り輝いた時代!!)。その後は、オランダサッカー協会の重鎮として、サッカーの発展にとって重要なタスクを担っているというわけです(現在の強いオランダの基盤構築における彼の功績は、本当大きい!)。

 今日この後、2000時から、ホテルの宴会場において、ドイツサッカー界の重鎮や「招待VIP」、はたまた「外国人招待コーチ」らが参加する「クローズド・パーティー」があるのですが(もちろん私も招待されています)、是非そこでリヌスとハナシをしてみたいと思っている湯浅です(ケルン時代は、何度か話をしたことはあったのですが、何せ20年前のことですから・・)。ヘネス・ヴァイスヴァイラーとともに、リヌス・ミケルスは、私の「イメージリーダー」でもありますから・・

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 さて国際コーチ会議ですが、一通り「開会の挨拶」が済んだ後、まず、元のドイツ代表の中核プレーヤーで、今では監督としても「ある程度の成功」を収めているフェリックス・マガートが壇上に立ちました(現在はVfBシュツットガルト監督)。彼は、クリストフ・ダウムの後を受け、ドイツサッカーコーチ連盟の「副会長」に就任しています(クリストフ・ダウムは、『あの事件』のあとトルコのベジクタシュ・イスタンブールの監督に就任!・・またローラント・コッホも、ヘッドコーチとして、彼と再びコンビを組んでいます)。

 まあフェリックスが話している内容・・というか表現は、どちらかといえば「一般的なレベルに集約されたモノ」になってしまっていたのですが(サッカーの内容や現象を言葉に託して表現することほど難しい作業はない!?)、参加者から「これまであなたが率いたチームは、目立った成績を残していないが・・」という質問が飛んだときの彼のリアクションだけは、「素肌感のある言葉」を使っていたので印象に残っています。

 「オレたちはサッカーコーチだ。だから、ここに参加している一人ひとりが、まったく別の考え方、評価をもっているのは当然なんだよ。別な言い方をすれば、みんなが一人ひとり、自分の言葉をもっているということだ。サッカーは、唯一の正解など存在しないボールゲームだからナ。とにかくここでは、時間もないことだから、具体的な評価を議論することは控えようゼ。でもオレが率いたチームのプレー内容に対するディスカッションだったらいつでもオーケーだからナ。オレたちは、内容なんて関係なく、結果だけで評価を変えてしまうジャーナリスト連中とは違うんだから・・」

 そしてそこから、フェリックスの話が、俄然「熱」を帯びてきたモノです。やっぱり、エモーションがなければ、議論は「生きてこない」ものなのです。ロジカルなディスカッションの行間に息づく「エモーション」ってな具合でしょうかネ・・

 その後、ブンデスリーガ一部のフライブルクを率いて既に10年が経った優秀なプロサッカーコーチ、フォルカー・フィンケの講演がつづきます(来年もフライブルクにとどまったら、一つのクラブにおける連続在籍年数で二位にランクされるとか・・)。これについては、またレポートしますが、そのエネルギッシュな話し方、現場のコーチにとってためになる「内容」は、本当にインプレッシブでしたヨ。  さてこれからスーツに着替えて(湯浅がスーツを着るのは、4月に行われたミズノスポーツライター賞の授賞式以来なのです!)、夜のパーティーへ行かなければ。リヌスと話すのが今から楽しみで・・。

 




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