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再び「黙祷」!・・そしてチャンピオンズリーグについて・・(2001年9月21日、金曜日)

どうも皆さん、ご無沙汰してしまって・・。このところ、どうも創作意欲が殺がれ気味で・・。もちろん「同時テロ」によってです。

 一昨日(9月19日)、スカパーの「ワールドカップ・ウイークリージャーナル」という番組にゲスト出演してきました(いつオンエアかは知りませんが・・もしかしたらライブだったのかも・・聞くのを忘れてしまったもので・・)。その収録前、番組のディレクター、プロデューサーの方々、またパーソナリティー、「えのきど・いちろう」さん等と話していたときのことです。「この頃、モティベーションが殺がれてしまって・・」なんていうことから始まり、サッカーを取り巻く、様々な社会情勢をディスカッションしていくうち、結局、今回の番組では、サッカーのハナシではなく、急遽テーマを「ワールドカップとテロリズム」に変更しよう・・ということになってしまいました。番組の性格上、何でもアリなんだそうで・・

 番組の冒頭、「えのきど」さんが、再開されたメジャーリーグベースボールについて、「今、メジャーリーグを再開することにどれほどの意義があるのか・・」というマグワイヤーのコメント、そして「たしかに野球をやっている状況ではないと思う・・でも僕のできること(ボクが何かできるとしたら・・の意!?)は野球をプレーすることだけだから・・」というイチローの言葉を紹介します。そこから、様々なディスカッションが展開されていったわけですが、私は、彼らのコメントに、二つの発想を見ていました。

 一つは、「政治・経済的に利用されるプロスポーツ」というもの、そしてもう一つが「スポーツ(グラウンド上の現象)が提供する社会的・心理精神的価値は大きい」というものです。

 もちろんプロサッカーも同じ。政治、経済などに利用される側面を否定することなど誰にもできません。私も、そんな側面を、ヨーロッパコネクションを通じて、かなり深いところまで認識していると思っています。特に「ボスマン判決」以降、「経済主導」の傾向に拍車がかかりましたし、政治的・社会的な事象(思惑)に大きく左右されたり、政治的なプロパガンダに利用されるという現実もあります。

 それでも「ナイーブな湯浅」は希望を持っています。サッカーという、「人類史上最大の異文化接点パワーを秘める社会的存在」に対して、年齢、性別、職業(社会的立場)などだけではなく、社会総体(国民国家・何らかの集団などの立場)、宗教・イデオロギー、人種・民族、はたまた「様々な(相対的)要素を包含する歴史的な事実」etc.までをも『超越』した・・もっと言えば、それら「異質同士」をポジティブな意味で結びつける(互いに尊重し合うことができるようにする!)ための「媒介」になれるのでは・・という希望を・・。

 もちろん「ナイーブに過ぎる考え方」であることは重々承知です。でも、そんな「希望」がなければ、今回の「同時多発テロ」によって陥らざるを得ない「無力感」から這い出してくることができない・・。それが、今回の番組での私の結論だったというわけです。

 最後は、前回と同じ文章で締めさせていただきます・・。ドイツ留学やビジネス活動を通じた『体感』をベースに、立場が違う当事者意識だけは常に持っている(・・と思っている)だけに、まだまだ無力感に苛まれている湯浅でした。このような(基本的にスポーツとは別フィールドの社会現象である)「錯綜した社会的・政治的・経済的なファクターを背景にする事件」を書くという「蛮勇」に対して、ご理解いただければ幸いです。

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 さて、チャンピオンズリーグ。ここでは、マンU対リールだけにスポットを当てることにします。

 もちろんこの試合では、中田のパルマのことをまず思い出してしまって(CL予選最終ラウンドのことですよ!)。特に、ホームでの「0-2」の敗戦の後の第二戦(リールのホームでの試合・・パルマが1-0の勝利をおさめたけれど・・結局はそこまで・・)。スポットライトが当てられるのは、当然、リールの「守備」ということになります。

 本当に強い、強い。もちろん、あれだけ「人数」をかけていたらアタリマエ・・!? いやいや、彼らの守備は、「ボールのないところでの守備意識の高さ」など、戦術的にも見所満載だったんですよ。ボールホルダーへの「チェックの仕方」。中盤では、確実に「戻ってくる者」もボールホルダーをチェックする。その後の(マークする相手との間合いも含めた!)「読みポジショニング」。一度決まった後の「忠実」なマークの継続。そして最終の仕掛け段階における「完璧なディフェンスイメージ」。彼らは、守備における「次の勝負所に対するイメージ作り」も主眼にトレーニングを積んでいるに違いない・・。

 たしかにマンUも、前半には、ヴェーロンとのワンツーからファン・ニステルローイが抜け出したシュートチャンス、単独ドリブル勝負から作り出したギグスのシュートチャンス、スコールズの中距離シュートなど、決定機はありました(リールも、カウンターから、またフリーキックからチャンスを作り出しました)。それでも、圧倒的にマンUが支配するというゲームの流れを考えると、マンU得意の「組織プレーをベースにした決定機」が少なすぎた・・、それだけリールの「組織守備」がハイレベルだった・・

 後半は、リールの「ゲームの流れに対する確信レベル」が高まったこと、逆にマンUの不安感が深まったことで、ボールキープ率では凌駕するマンUとはいっても、ほとんどといっていいくらい、チャンスを作り出すことができません。逆に、リールの「カウンター攻撃」が、彼らの「ゲームの流れに対する確信レベル」の高まりに伴って、より危険な臭いを放つようになります。

 これは面白くなった・・、それにしてもマンUは、何とか攻撃に変化をつけなければ・・、ボールのないところでの足も止まり気味になってきているし・・、それには中盤からドリブル突破にチャレンジするようなタイプの選手が必要だな(ギグスに対するマークが巧妙だから、彼のドリブル突破能力がうまく機能していいない!)・・、たしかにヴェーロンは「そこそこ」機能はしているけれど、まだまだ「自己主張」には慎重だし、ファン・ニステルローイにしても、まだ「受け身」だよな・・、そんなことを感じていました。

 それでも・・、「完全に「リールの術中にはまったゲームっちゅうことだな・・、まあこの試合内容じゃ引き分けも仕方ないか・・」なんて思っていたタイムアップ寸前、マンUが、まさに試合の流れからすれば、起死回生の一発とでもいえるような決勝ゴールを挙げてしまいます。

 後半44分。「例によって」足とボールの動きが「止まり気味」の攻撃を簡単にはね返されたマンU。ボールは、GKのバルテーズのところまで戻ってしまいます。そのときバルテーズは、「とにかく急がなきゃ」ってな心境だったに違いありません、ドカン!と、ロングボールを最前線へ飛ばし(もちろん、しっかりと狙いを定めたロングボール!)、ヘディングの競り合いから、スールシャールが、「後方へ」、つまりリールゴール方向へボールを送り込みます。そこに走り込んでいたのは、マンUセンターフォワード、ファン・ニステルローイ。ただ彼がボールをコントロールしようとした瞬間には、例によって、既に「二人」のリール守備者に挟みうち。これで万事休すか・・と思ったのですが、リールのディフェンダーがキックミス(クリアミス)をしたことで、ボールが「こぼれて」しまい、再びファン・ニステルローイが奪ってシュートを放ってしまいます。ただそこでのシュートコースは、完全にふさがれていたために、ファン・ニステルローイのシュートが相手ディフェンダーの足に当たってコースが変わってしまいます。そして、その「こぼれたボール」の先にいたのが、ベッカム・・。シュートされたボールは、正確に、リールゴールの右隅へ転がり込んでいきました。

 この決勝ゴールシーンでは、ベッカムの「前」に入り込んでいた(つまり本来のシュートポジションに入り込んでいた)スコールズには、これまたリールのディフェンダーが、確実にマークしていました(スコールズにボールがわたる前にアタックできるような基本に忠実なマークポジショニング!)。

 このゴールは、最初のリール選手の「空振り」、ファン・ニステルローイのシュートからのこぼれ球が、「確実にマークされていた」スコールズではなく、その後方にいたベッカムにピタリと合った・・という「二つの偶然」が重なったことで生まれました。偶然と必然が交錯する理不尽なボールゲーム・・。まさにそれは、そんなサッカーの面目躍如というシーンだったというわけです。

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 エキサイティングだった、ドルトムント対リバプール(ドルトムントのホームゲーム・・「0-0」で終了)、アーセナル対シャルケ04(アーセナルのホーム・・「3-2」でアーセナルが勝利!)については、また機会を見てレポートすることにします。

 一つだけ・・アーセナルについて。前にも何度かコメントしたことがありますが、アーセナルの攻撃が、「かなり個人の才能寄り」に組み立てられていると「再び」感じたことを報告しておきましょう。

 アンリ、ヴィルトール、ピレス(いわずと知れたフランス代表の中核トリオ)。たしかに素晴らしい才能ですし、何度も「一発タテパスからの個人勝負」で決定的チャンスを作り出していました(ピレスの場合は、中盤の勝負ドリブルからの仕掛け!)。それでも私には、ちょっと「個人に偏りすぎかな・・」と感じられるのです。だから守備側にとっても「ターゲット(アーセナルの次の仕掛けに対するイメージ)を絞り込み易い・・」。ということでアーセナルの試合では、守り切られて、少ないチャンスを決められてしまう(不安定な守備は補強で改善された!?)・・といった展開が多い(多かった)・・!?

 要は「バランス」ということが言いたかったのです。

 根元的な「キーワード」ともいえる『バランス』。もちろん「監督のお仕事」でも、もっとも重要になってくるファクターです。戦術的にだけではなく、心理・精神的にも「バランス感覚に優れたコーチ・・」、そんな表現、聞いたことありますよネ。あっと、ここでは「グラウンド上のプレー」についてでした・・。ということで、アーセナルの攻撃(組み立て)に、ちょっと「組織ファクター」が足りなさ過ぎるのでは・・と、「再び」感じていた湯浅だったのです。これからも「この視点」でアーセナルを観察することにしましょう。

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 これからビジネスミーティングへ出向かなければなりません。ちょっと中途半端ですが、ご容赦アレ。明日(9月22日の土曜日)は、国立競技場でレッズ対アントラーズの試合を観戦し、同日の「夜中」に、テレビ埼玉の「トーク番組」に出演する予定です。では・・

 




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