ここのところ、色々なプロジェクトが動いていることで十分に時間がとれず、追いかけつづけているレアル・マドリー、中田のパルマや小野のフェイエノールト、はたまたチャンピオンズリーグのゲーム等、フットボールネーションのゲームをしっかりと観ることができずにいます。ということで、「国際」ではレポートも滞り気味。11月に入ったら、少し時間的な余裕もできますので、「内容」に応じて、詳細な追跡レポートをはじめようと思っていますので・・
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あっと・・まず告知から・・
来る「11月4日」。一橋大学の学園祭「一橋祭」で講演します(1300-1500時)。主催は、一橋大学の「サッカーを考える会」。
サッカーを通じて、学生、地域、クラブ間の交流をはかることで、サッカーが地域にとってより身近な存在になり、生活の一部となること(要は、生活文化レベルでサッカーを捉えよう・・ということ)、ひいては人々のより充実した人生に寄与すること・・それがこのグループの目的とのこと。人々の人生にとっては、固有の文化(生活の仕方)がもっとも重要なポジションを占めている・・。だからこそ「生活文化コンテンツ(その可能性に対する情報提供)」をより広範なものに・・という彼らの意図はよく理解でき、また共感します。
ということで講演を引き受けた次第。テーマは「2002W杯を迎えるにあたって何を心がけるべきか」。ちょっと堅い・・アハハッ! 要は、サッカー、W杯を「もっと・存分に」楽しむためには、どうやったらいいか(どんな基本的な発想をもったらいいのか)・・ってなことなんでしょうが、それは、もちろん千差万別。誰にも「ひな形」なんて提示できません。でもまあ、フットボールネーションの人たちは「こんな風」に楽しんでいますよ・・湯浅健二は、こんな風に楽しもうとしているんですよ・・なんてところをお話できれば・・と思っているんですよ。もちろん、サッカーが、基本的には「狩猟民族」のスポーツだという原則を踏まえてネ。興味のある方は、どうぞ・・
「お知らせ」でした・・。ではレアル対ローマの試合で気付いたことを短く・・
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この試合は、内容では、完全にレアルが圧倒していたことは誰の目にも明らか。それでも、そこは「イタリア的リアリズム」。クリエイティブサッカーと「それ」との対峙・・ってな構図ですかネ。
それでも「勝負」という視点では、「リアリズム」の存在感を、またまた、イヤッというほど再認させられてしまって・・。このことは、以前の「2002クラブ」でも、ラツィオ対パルマのゲームレポートで書いたことなんですが、とにかく、ピンポイントの攻撃ダイナミズム(確実に、チャンスの芽を感じている選手が数人はいるということ!)が凄いんですよ。
完全にゲームを支配され、ほとんど「単発」の攻撃しか仕掛けられないローマ・・、それでも「単発」のダイナミズムがレベルを超えている・・。前半、右サイドでボールを持ったカフーからの「アーリークロス」のタイミングが、そのことを如実に現していた!?
カフーが、センターラインをちょっと入ったところでボールを持った瞬間、逆サイドの最前線にいたバティストゥータ(以下バティー)が、「完璧な最終勝負イメージ」に誘われるかのように「あるスポット」へ移動していきます。ファーサイドの決定的スペース。マークしていたミッチェル・サルガドのポジショニングは「完璧」。それでも、カフーからの「アーリークロス」が、サルガドの「眼前」を通過し、(サイドから見たら)本当に「アタマ一つ」しか抜け出していないバティーに「完璧」に合ったんですよ。そして決定的ヘディングシュート!
シュートが、GKの正面に飛んだことで事なきを得たわけですが、ゲームの立ち上がりから「まったく」チャンスの芽を感じさせてくれるような組み立てさえ構築できないといった雰囲気のローマが、「ここ一発」の決定的シュートを放ってしまう・・。いや素晴らしい「ピンポイントの集中力」ではありませんか。
その後は、もう完璧にレアルの攻勢がつづきます。例によっての「天才たちの組織プレー」。いや美しい。ローマ守備ブロックを翻弄し、崩し切ってしまうようなシーンを作り出します(もちろん決定的なシュートシーンでは、完全にローマを圧倒!・・逆にいえば、そこが、イタリア的リアリズムのネバリ強さ!)。
彼らのサッカーは、確実に「理想型」へ突き進んでいると感じます。とはいっても、まだまだ「ショート&ショート」が目立ち過ぎ、「一発の勝負ロングパスや大きなサイドチェンジ」は少ない、少ない(まあ、この試合でボランチに入ったマケレレとセラーデスでは・・)。とにかく、「ショート・ショート・ロング」という変幻自在のボールの動きが、レアルの「理想型へのプロセス」を加速することだけは確かなことだと言いたい湯浅なのです。
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そして前半35分。イタリアのリアリズムが結実します。トッティーから、左サイドをオーバーラップしたカンデラへ・・、カンデラがドリブルで持ち込み「タメ」を作っているタイミングで、最初の「起点」になったトッティーが、レアル守備陣の「背後」から飛び込んできたところへ、カンデラからのラストパスが決まったというわけです。素晴らしい、本当に夢のような「一発勝負ゴール」ではありました。
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後半。「リアリズム」がパワーを増幅します。一点リードしているローマ・・、またレアルは、既に「二次リーグ進出」を決めている・・、またローマも「二次リーグ進出」をほぼ手中にしている・・そんな背景がありますし、ローマにとっては、そのまま逃げ切れば「歴史的な(何十年ぶり!?)」マドリーでの勝利ということになりますからネ。
またレアルでは、ロベルト・カルロスが負傷交代してしまって・・。代わって出場してきたのは、「タイプがまったく違う」アルゼンチン人のソラーリ。たしかに優秀な選手ではありますが、いまのレアルの「イメージシンクロ・メカニズム」に、どうもしっくりと入っていけない・・。
もちろん全体的な流れはレアル。でも、前半のような「決定的スペース」を突くパワーはかなり減退してしまいます。もちろんそれには、ローマ守備陣が、レアルの「ショート&ショート」からのウラ突き(もちろん三人目、四人目の忠実な決定的フリーランニング!)という『仕掛けリズム』に慣れてきていたということもあります。
後半30分。モリエンテスの「オーバーヘッド・シュート」が、カフーの手に当たってPK。それをフィーゴが、例によっての「世界の落ち着き」で決めて同点。そして、タイムアップを迎えます。
最後の10数分間、レアルは「意地」で勝ちにいったのですが、ローマが「より」守備を強化したこともあって、またレアルが、「仕掛けリズム」に「変化」をつけられないこともあって、何事か起きる「気配」が感じられないままに時間が過ぎていったという次第。
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この試合は、レアルが提示する「理想型への期待(可能性)」、イタリアのリアリズム、はたまた、個々の選手による「ゲーム・コンテンツ(組み立てリズム・仕掛けなど)」の変化など、見所は豊富でした。
この二チームが、ノックアウトまで勝ち進み、もう一度「深いコンテンツの闘い」を魅せてくれることを心待ちにしている湯浅でした。