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コンフェデカップ(1)・・イメチェン途上の韓国・・でも、まだまだ時間が必要!?・・韓国代表vsフランス代表(0-5)・・(2001年5月30日、水曜日)


さて、どのように書きはじめましょうか・・

 あっ、と、まず断っておかなければ・・。コンフェデレーションズカップですが、日本サッカー協会に対して申請した私個人の「フリーランス取材申請」が却下されてしまった関係で、テレビ観戦をベースにしたレポートになります。

 たしかに、グラウンド全体を一挙に視野に入れることができないために、どうしてもゲームの流れが見にくくて・・。一方のチームが最終ラインでボールを回しているとき、そのチームの中盤から前線の選手たちがどのようなアクションを起こしているのか・・、またそれに対して相手守備ブロックが、どのような「意図(チーム守備戦術)」で対処しようとしているのか・・、それが見にくいんですよ。私が見たいポイントは、ほとんどが「ボールのないところのドラマ」ですからネ。でもまあ、「読み」で対処することにしましょう。ボールが動いたときには、ほとんど、私が予測した通りの「局所的な展開」になっていますからネ・・

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 さて試合。まず何といっても、韓国が取り組んでいる「チャレンジ」について書かなければ。その本質的な部分は、様々なファクターを含む「バランス」を最重要視してプレーするということのようです。攻撃においても、守備においても・・

 ただ、フース・ヒディンク監督が標榜するそのコンセプトが、この試合に限っては、明確に、選手たちの「マインド・ブレーキ」になってしまっていたと感じます。韓国の特徴である、闘う姿勢を前面に押し出した中盤でのダイナミズムが、まったくといっていいほど見えてこないのです。

 ヒディンク監督は、「個人の闘う姿勢」を前面に押し出し「過ぎる」のではなく、全員での「考えつづけるクレバー」なサッカーを目指すということでしょうから、それはそれで、プロセスと捉えなければなりません。それでも、考えつづけるクレバーな(もちろんこれは私の表現ですがネ)・・というイメージ的な目標が、選手たちの「マインド」に対して、明確にブレーキとなって作用してしまっていたと感じるのです。だからボールのないところでのアクションが沈滞気味になってしまって・・

 そして、とにかくボールを動かさなければ・・という意識が強調され「過ぎて」いることで、逆に韓国のボールの動きが、本当に鈍重なものになってしまったと感じるのです。だから、明確に「次のパスレシーバー」が見えてしまう。これでは、フランスが、ことごとくパスをカット(インターセプト、またトラップの瞬間を狙ったフェアなタックル)してしまうのも道理。

 結果として韓国の攻めが、まさに停滞そのものという状態に陥ってしまって・・。選手たち一人ひとりが、バランスのとれたポジションを取ること、そしてしっかりとボールを動かすこと・・というテーマに縛られ過ぎだと感じました。だから、中盤でのドリブル突破チャレンジとか、「タメ」なんていう、攻撃での「変化」を演出するレベルまでいけない。またボールを動かそうにも、ボールのないところでの「動き」がアクティブではないから、結局は「死にパス」になってしまう。これでは・・

 もっと「ボールのないところでの動き」がアクティブにならなければ、相手守備ブロックを崩すようなボールの動きを演出できるはずがありません。でも、互いのポジショニングバランスを・・という、ある意味では「相反する」発想に捕らわれ「過ぎて」しまって・・。もっと、ボールを動かすという「戦術的な発想」の正しい意味が浸透しなければ・・と感じた湯浅でした。

 もちろんそれも、選手たち同士の「発想(イメージ)のコンビネーション」の課題ですから、時間が解決するとは思いますが、反面、韓国サッカーの伝統的なプレー発想を「否定」するコンセプト転換だから・・という捉え方もあって・・。これから、どのくらいスムーズにチーム作りが進むのか・・。とにかくヒディンク監督の手腕に注目しましょう。

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 対するフランスも、本調子とは言い難い出来ではありました。ジダン、プティー、アンリ、トレゼゲなど、(ルメール監督に言わせれば、今のところの・・)主力メンバーが欠けているということもあるのでしょうが、彼らのダイナミズムレベルは、日本代表と、自らのホームスタジアムで対戦したときと比べれば、2-3割はダウン・・といったところでした。

 そのことは、攻守にわたる「ボールがないところでのアクション」を見ていれば一目瞭然。まあそれには、先制ゴールと追加ゴールを、あまりにも早い時点で奪ってしまったということもあるのでしょうが・・(それでも、足許パスにしても、その素早さには感嘆!)

 それでも、そこはタレント集団のワールドチャンピオン。少なくとも守備は、ソリッドそのものです。その背景には、前述した「沈滞気味の韓国オフェンス」ということもあったわけですが、とにかく、「次のパスレシーバー」が明確に読めるということで、次々と韓国の攻撃の芽を摘んでいきます。でもそこからの攻めは、こちらも沈滞気味・・ってな具合。

 とはいっても、複数の選手たちが「勝負所」だと感じた瞬間の爆発アクションは、サスガ・・。最初の二点はセットプレーを起点にしたものでしたが、前半に挙げた三点目のコンビネーションは、見事! の一言ではありました。それは、韓国が構成する最終フォーバックのウラを見事に突いたゴール。

 韓国の最終守備ラインは、ホン・ミョンボを中心に、ソリッドにまとまってはいます。それでもこのシーンでは、後方から全力ダッシュで「追い越しフリーランニング」をかけたカリエールの動きに、まったく誰も対応できず(後手で追いかけはしましたが・・)、またその後の、カリエールからの「ラスト・センタリング」に飛び込んだアネルカとマルレも、まったくフリーになってしまって・・

 韓国の最終ラインが崩しきられたシーンは、それだけではありませんでした。まあ、「最終勝負でのラインコントロール」が、まだうまく機能していないということなんでしょう。また、最終ラインを「フォー」にしたときの生命線ともいえる中盤守備も、一度振り回されてウラに入り込まれたら足を止めてしまう・・というシーンが続出していましたからネ(これについては、チャンスを感じた瞬間のフランス二列目のタテへの動きが素晴らしすぎたということも言えますが・・)。

 韓国のラインコントロールですが、彼らが、ラインを組んでいる状況で(つまり、フランスが中盤で組み立ててくる状況で)、フランスのトップ選手が「韓国ディフェンダーの間」を抜けて決定的スペースへ飛び出そうとする「最終勝負シーン」において、フランスのボールホルダー(パス出しの起点)の状態と、そのアクションをしっかりと判断することで、そのトップ選手を「行かせる」というシーンが何度もありました。つまり彼らは、「マークを受け渡し」ながら、状況に応じてラインもコントロールしようとする意図をもってプレーしていたということです。でも、まだ実効レベルでは・・

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 フランスのチカラは、すべてのファクターにおいて明らかに韓国よりも上(そのことは日本も同様!)。それでも実際には、この試合での(点差も含む)内容ほどに「差」が開いているとは思いません。

 彼らにとってこの試合が、「世界トップとの僅差」を体感し、それをステップに大きく進展するための「ポジティブな学習機会」になったと確信する湯浅なのです。たぶん彼らは、次のメキシコ戦では、「バランス」をしっかりと確保しながらも、韓国伝統のダイナミズムも前面に押し出すというダイナミックサッカーを魅せてくれるに違いありません。




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