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コンフェデカップ(3)・・まさに「粘り強く」試合中に進歩したオーストラリア・・フランスvsオーストラリア(0-1)・・そして死闘を制した大韓民国・・韓国vsメキシコ(2-1)・・(2001年6月1日、金曜日)


いや〜〜、オーストラリアがやりました。試合がはじまった当初は、さて、どうしたものか・・、これではオーストラリアがチンチンにやられてしまう・・、それも「セカンドチョイス」のフランス代表に対して・・なんて思ったものなんですが・・

 前半の立ち上がりでは、とにかくボールの動きに「格段」ともいえる差が見えていたのです。要は、サッカーの「質の差」っていうことなんですが、フランスは、ハイクオリティーな技術をベースに、とにかく球ばなれが早い。パスレシーバーが相手に「意識的にマーク」されていることなど関係なく、「正確で速いパスだったら相手は何もできないさ・・」ってな具合で、クルクルとパスをつないでしまうのです。対するオーストラリア守備は、その早さに対応し切れない。

 対するオーストラリアは、それぞれの「ステーション」でのプレーが迷い気味で遅いだけではなく、完璧にフリーでなければパスを回さない(自信がないから回せない!?)・・。また詰まった状態で「仕方なく」ドリブル突破にチャレンジする・・。だから簡単に「次のパスやプレー」を読まれ、正確に、そしてクリエイティブにアタックされて(ディフェンダーに集中されて)ボールを失ってしまうのです。

 これでは・・なんて思っていたのですが、そんな試合展開が、前半の中盤を過ぎる頃から少しずつ変化していきます。徐々に「これだったらやれるゾ!」と、自信をみなぎらせはじめたことで、オーストラリア選手たちのプレー姿勢がポジティブに発展しはじめたのです。それに対し、中盤でのボールの動きには目を見張るものがありながら、(押し込み過ぎていることで・・またオーストラリア守備ブロックが忠実・堅実なことで)最終勝負のシーンでは、決定的スペースを攻略できないフランス。

 最終勝負シーンでの、「イメージシンクロレベル」が低いことで、決定的フリーランニングが出てこない・・、最終勝負の起点になったパサーの意識も低い・・。もちろん何本か、素晴らしいロングシュートは魅せましたし、フリーキックからのルブーフの「100パーセント」ヘディングチャンスなどはありましたがネ・・。やはり、セカンドチームということで(いくらチームコンセプトを理解しているとはいえ、一緒にプレーする時間が少ないから)、「実戦でのコンビネーションイメージ」には時間がかかるということなんでしょう。

 それに対して、全体的にはゲームを支配されてはいるものの、決定的シーンは作られなかったことで、「オレたちのサッカーは十分に通用する・・」と確信レベルを高めるオーストラリア。そして後半は、完全にガップリ四つの試合展開になってしまいます。

 オーストラリアのボールの動きも、立ち上がりとは見違えるほど活性化してきていると感じます。忠実なサッカーでチャレンジをつづけるオーストラリア。そんな彼らのプレー姿勢が、フリーキックのこぼれ球をゼインが蹴り込むという、この試合唯一のゴールとなって結実するのです。素晴らしかったのは、その後のオーストラリアが、決して守りに入ることなく、それまでのサッカーを維持しつづけたということです。リードされ、怒濤の勢いで攻め込むフランスが、二度ほど決定的チャンスを作り出しますが、それでもオーストラリアの攻守にわたる「積極姿勢」に陰りが見えることはありませんでした。

 初戦のメキシコ戦同様(2-0でオーストラリアが勝利!)、全員の意志・意識が、「ロジックベースの忠実&堅実サッカー(だからこそ、ココゾ!のドリブル突破トライが威力を発揮!)」というコンセプトに見事に統一されたオーストラリア。そんなに美しいわけではないシンプルサッカーですが、かなりのシンパシーを感じた湯浅でした。

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 さて、韓国対メキシコ。

 ものすごい死闘になりました。試合を通じて韓国の「勢い」が上回ってはいましたが、韓国のファン・ソンホンが先制ゴールを入れた後、今度はメキシコが、それまでの内容からすれば本当に「大変身」という(やっと本来のチカラを発揮した!?)リスクチャレンジを仕掛けてきます。それが、何度かのチャンスを逃した後に得たフリーキックからの直接同点ゴールにつながってしまって・・

 そしてロスタイムに入る直前に飛び出した、チーム全体の「闘うソウル」をぶつけるような、ユー・サンチョルの勝ち越しゴール。もうこれほどのエキサイティングドラマはありません。

 この試合での韓国は、フランス戦で特に不安定だったフォーバックから、やり慣れたスリーバックにもどしまた(守備的ハーフも二人・・見方によれば三人・・)。スイーパーは、もちろんホン・ミョンボ。そして最終守備ラインから中盤までの守備ブロックが安定したことで、フランス戦では中途半端だった「リスクチャレンジ姿勢」が、彼ら本来のダイナミックなものに変身します。もちろんそこには、調子の上がらないメキシコが相手だったということもありますが、それでも、実力を出し切れずに(プレーが縮こまってしまって!?)心理的な悪魔のサイクルに入ってしまい、チカラの差が、現状以上に広がってしまったというフランス戦から、中一日で「リカバー」したことは評価しなければ・・

 また、この試合で韓国が、フォーバックから、コンベンショナルなスリーバックに戻したことはディスカッションの対象にはなるでしょう。何といっても、それを試した第一戦の相手は、世界トップのフランスだったんですからネ・・。とはいっても、絶対に勝たなければならない韓国ですから、ヒディンク監督も「現実的な戦術(やり慣れ安定した戦術)」を選択したということなんでしょう。

 この試合で特筆だったのは、韓国本来のダイナミックな攻撃が、かなりハイレベルな「バランス」を保ちながら実行されていたこと。両サイドバックや守備的ハーフがどんどんと押し上げても、前後のバランスが大きく崩れることがないのです。だから、人数をかけて積極的に攻め上がった後のメキシコの攻めを、高い位置から効果的に「遅らせる」という重要な守備コンセプトも、効果的に機能させることが出来ていました。もちろんメキシコのボールの動きが緩慢だったという事実を差し引いても・・のハナシですよ。

 「途上」とはいえ、戦術的な発想というポイントで「ポジティブ変化」が見えはじめた韓国。とにかく、そんな彼らが勝利をおさめることができて本当に良かった・・と心から喜んでいる湯浅でした。

 とはいっても、オーストラリアがフランスに勝利をおさめたことで、韓国は、決勝トーナメントへ向けて非常に厳しい状況に陥ってしまいました。もちろんフランスがメキシコに勝利をおさめ、韓国がオーストラリアに勝つことを前提にしてハナシをしているわけですが(それでフランス、オーストラリア、韓国が勝ち点「6」で並ぶ!)、それでも韓国は、オーストラリアに「4点差」以上で勝たなければならない・・。そんなハンディーを背負って、なおかつ、攻守にわたる「バランス」をうまくとりながら攻め込むのは、オーストラリアの安定した守備ブロックを考えれば至難の業だというのは、誰の目にも明白な事実ですからネ。それでも・・

 とにかく期待しましょう。




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