それにしても「ヤッタ〜〜!!」なんて叫びたくなるくらいのサッカー内容じゃありませんか。スポナビでも書いたのですが、ボールの動きがカッタるいカメルーンに対して、日本代表が効果的な守備を展開できることだけは容易に想像はついたのですが、攻撃でも、あれほど高度なプレーでカメルーン守備ブロックを翻弄できるとは・・
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攻撃についてですが、みなさんもご覧になったとおり、日本選手が、一対一でドリブル勝負を仕掛けていくシーンはほとんどありませんでした(チャレンジしても、ほとんど相手を抜き去ることはできませんでした・・もちろん、次のパスを前提にしたドリブルは効果的でしたがネ・・)。その代わり、とにかくスムーズでクレバーなボールの動きでカメルーン守備ブロックの「足を止め」(目ばかりでボールを追うと、そうなってしまうんですよ・・どんなクラスのチームでもネ・・)、そして守備の薄いところへ素早くボールを運んで最終勝負を仕掛けるのです。最後の最後まで、パスを有効に使ってネ・・。ロジックそのものという攻めではありました。とにかく、日本チームの全員が、最後まで組織プレーで勝負する・・ということで意識が統一され、なおかつそれをやり通したことに大拍手なのです。
それでも、十二分に「美しさ」を備えていたと思います。何といっても、サッカーの美しさの本質は、見ている方の「予測が裏切られる」ところにあるわけですから・・。たしかに、当時のディエゴ・マラドーナやヨハン・クライフが魅せたドリブルによる仕掛けには次元を超えた(サッカー史に残る)美しさがテンコ盛りでした。それでも、彼らの繰り出す勝負パスもまた(もちろん周りとのイメージシンクロをベースにしたパスコンビネーションのことですヨ!)、人々の予想を遙かに超えているということで、十二分に美しかったんですよ。
ということで、日本代表の攻めには、小気味よい爽快感が、そして美しさがあったことについては、皆さんも100パーセント、アグリーだと確信する湯浅なのです。そのことをまず言っておかなければ・・
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さて、次に守備について・・。
これはもう素晴らしいの一言です。もちろんピンチもありました(特にエトーのトリッキーなドリブルからのシュート、エムボマのヘディングシュートやドリブルシュート、はたまた走り込んだジェレミのシュートなど・・)。それでも全員がソリッドなマインドを最後まで持ち続け、クレバーで忠実な守備プレーを展開したことは感動ものでした。その意味の筆頭は、もちろん、一対一の勝負でイージーなアタックをしなかったことです。まず相手の前への勢いを止め、そこから組織的でクレバーなディフェンスを展開する・・それです。
日本チームの守備は、とにくか落ち着いていました。安易なアタックを仕掛けるのではなく、とにかく「粘り強く」チェック&マークをつづけることで、カメルーンの「前へのアクション(意識)の流れ」を止める・・。カメルーンは、一度「仕掛けイメージのフロー」が止まってからのリスタートでは、もう個人勝負というアイデアしか出てこない(一人ひとりがバラバラになった仕掛けしか出てこない)ことをよく知ってる日本チームの、クリエイティブなディフェンスなのです。
スポナビでも書いたのですが、それがアフリカンサッカーの大弱点。個人的なチカラが「高すぎる」ことが原因のネガティブな反動・・ってなところですかネ。もし彼らが、組織プレーを身につけたら、それはもう、世界中の誰もかないませんヨ。そのことが、組織サッカーを標榜するフィリップが、アフリカで成功を収めた要因だった・・!?
ということでカメルーンは、一度ボールの動きが落ち着いたところから、再び活発にボールを動かして(つまり周りもしっかりと動いて)クリエイティブな組織プレーから「一対一の勝負」に挑んでいけるシーンを作り出すことができません。そして、次の単純なパス(仕掛けの意図のない逃げパス)を日本チームに読まれ、簡単にボールを失ってしまうのです。
フラットラインのコントロールもうまく機能していました。「オフサイドトラップ」ではなく、相手にタテパスを出させないという「基本アイデア」によるラインの押し上げ。相手がタテパス(特に後方からのロングパス)を出しそうな展開を「読んで」、スッとラインを下げる「一般的なラインコントロール」。相手が最終勝負の「起点(フリーでボールを持つ選手)」を作り出した状況における、フラット守備システムの神髄ともいえる「最終勝負のラインコントロール」(決定的スペースへ飛び出す相手を、分かっていて行かせたり・・もちろんオフサイドタイミングだから・・はたまた、インターセプトしたり・・)。そして、最終勝負での「ラインブレイク(ラインを崩してマンマークへ移行する瞬間)」。
本当にうまく機能していたと思います。無闇な「オフサイド・トラップ」も見られませんでしたしネ。
とはいっても、それも、カメルーンの最終勝負シーンにおける「攻め方」がワンパターンだったから・・と言えなくもありません。フランスのように、ドリブル突破チャレンジあり、そんな「体勢(ドリブルで行くと見せかけた状態)」からのラストパスあり(もちろんベントタイミングでの決定的フリーランニングとの組み合わせで!)、最終勝負での「縦横のボールの動き」からの複合コンビネーションあり、はたまたロングシュートありと、最終勝負の仕掛けバリエーションが多彩だったら、そう簡単にはいかないに違いありませんが・・
とにかくこの試合における守備ブロックの「組織プレー」に、深い自信と確信を感じた湯浅でした。
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個人についてですが、まず何といっても小野伸二。前半26分にジェレミにフリーシュートを打たれた場面では(戸田がケガで倒れ込んでいたこともあるんでしょうが・・)、完璧に、ジェレミに「行かれて」しまいました。それでも、その後には、しっかりと「意識の調整」をします。
頼もしい存在になったじゃありませんか。グラウンド上でプレーしている選手たちが、そのことを一番実感します。彼の、攻守にわたる「チームプレー貢献度」のことです。本当の意味でチーム全体が、彼のことを認めはじめている(信頼しはじめている)と感じます。中田ヒデも含めてネ・・
彼の、攻守にわたる「冷静で熱く、そして実効ある」プレーには、(長い間心配させられたこともあって)感慨ひとしおだった湯浅でした。
あそこまでアクティブに「ボールのないところ」でも貢献できるようになったら、もう心配はいらないと思います。彼自身も、『(攻守にわたるクリエイティブな無駄走りも含めた)自分主体のアクション』でボールにたくさん触るという、サッカーにおける「本当の楽しさ」を知ったんですからネ。やっと、「世界へ向けた課題」を、一つ一つクリアしていけるスタートラインに立った小野に対し、心から「おめでとう!」と言いたい湯浅でした。何といっても今までは、「クリアするための土俵」にさえも乗っていなかったのですから・・
サイドバックというポジションは、(義務としてのサイド守備も含め)いろいろなプレーを要求されるという意味で、いまの彼にとって非常に有効なポジションになっているようです(レッズでの後ろ気味のハーフというポジションも含めてネ・・)。
さて中田ヒデですが、全体的には、まあまあの出来だったと思います(もちろん彼に対する期待レベルを基準にしての評価ですよ!)。攻守にわたり、しっかりと組織プレーをコーディネイトしていましたしネ。それでも、ドリブルやタメ、はたまた中盤でのインターセプトチャレンジなど、まだ何か「ダイナミズム」が不足しているように感じた湯浅でした。まあそれも、「組織プレー」というチームコンセプトに徹したということなんでしょうがネ・・(あれだけ周りが動いていたら、上記した、中盤でのクリエイティブな勝負プレーが逆にチーム全体のリズムを崩してしまう・・!? そのことを敏感に感じていたということなのかも・・)
彼の交代ですが、それには様々な意味があったように思う湯浅です。まずケガじゃないことは確か。また彼の運動量や攻守にわたる実効レベルが下がり気味になってきていたことも事実です。でも私は、それ以外に、フィリップが「中田抜き」を試したかった・・という面もあったのでは・・なんて思うのですよ(中田は決勝トーナメントには出場しないということですからネ)。
そして日本代表は、「中田抜き」でも、素晴らしくソリッドな(自信をもった)プレーを展開していました。頼もしい限りじゃありませんか・・(まあ、選手交代に失敗し、戦意も喪失気味のカメルーンということもありましたがネ・・)
この試合では、「ホットテンパー」の松田も、非常に安定した「クールに燃える」プレーを展開していました。それでも私は、森岡の「センター」が一番安定する・・と思います。繰り返し、彼の「危急状態での実効あるブレイクプレー」を目撃しましたからネ。やはり最終ラインのリーダーは、森岡がファーストチョイスでしょう。
また中盤の守備的ハーフに就いた戸田も、稲本同様、非常にステディーなプレーを展開したと思います(特に、バランサーとしての稲本の素晴らしいプレーについては、来週号のサッカーマガジンで語りますので・・)右サイドの明神については、「いつものパフォーマンス」ということで・・(彼のような『計算できる』プレーヤーは貴重な存在なのです!)。
そして鈴木。大したもんじゃありませんか・・。たしかに単独ドリブル突破など「個人プレー」の見せ場は作れませんでしたが、とにかくチームコンセプトに則った貢献プレーは、ゴールも含めて大拍手なのです。先発は、その日の夕方に言われたということですが、彼をスターティングメンバーに書き込んだ攻撃的な(リスクチャレンジを恐れない=常に胸に辞表を携えながら仕事をする)指揮官、フィリップ・トルシエの面目躍如!? チーム内の(協会やメディアに対しても!?)「競争関係(緊張関係)」を、絶えず活性化しつづける彼の手腕に大拍手なのです。
また、二試合つづけて素晴らしいゴールキーピングを魅せつづけた川口、どんな状況でピッチに立っても相変わらずの安定したプレーを魅せる森島や中山、そして最前線での「使われ役」として忠実なプレーをつづけた西沢・・いや、素晴らしい。
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たぶんこれで準決勝のペアは、「日本対オーストラリア」、そして「ブラジル対フランス」になる・・、そして決勝は「あの再戦」に・・!? そんなことを書いたら韓国の方々からブーイングされてしまいそうですが、リーグ最終戦で韓国と当たるオーストラリアの堅牢な守備、また日本と当たるブラジルの「実質的なチーム力」を考えれば・・
本当に、決勝が楽しみになってきたじゃありませんか・・
ちょっと疲れ気味の湯浅でした・・