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コンフェデカップ(6)・・ちょっと、カッタるい試合ではありましたが・・日本代表vsブラジル代表(0-0)・・(2001年6月4日、月曜日)


そろそろロスタイムが過ぎようとしていた時間帯のことです。森島が、右サイドのタッチライン際(ハーフウェイライン付近)でボールをキープし、相手のアタックをスクリーニングしたことでファールを誘います。

 彼の周りには、ブラジル選手による「次のパスを読んだ」プレスの輪が迫っていましたから、もしそこで安易な「逃げ」の横パスでも出そうものなら、すぐにボールを奪われ、ガツン!というカウンターを食らったはずです。

 そんな森島の「素晴らしい判断」に、日本代表の「深い自信」を感じたものです。「ヨ〜〜シ! 森島、ええゾ!!」。そんな声が出てしまって・・。そして一度落ち着いてからリスタートした瞬間にタイムアップのホイッスルが・・。いや素晴らしい。

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 日本チームは、前日にフィリップがアナウンスしたとおり、メンバーをいじってきました。フラットスリーは、右から上村、松田、そして服部。また二人の守備的ハーフも、稲本&戸田のコンビから、明神と伊東に変更です(彼らは、そこそこ安定したコンビプレーを展開しました)。またトップの西沢の代わりに山下を起用しました。フム・・

 立ち上がり、ブラジルが大パワーで押し込みます。それでも、その「押し込み方」には、本物のセレソンのイメージは微塵も感じられません。とにかく、前への勢いだけ・・といった雰囲気なんです。

 そして、松田を中心にした最終ラインの、うまいラインコントロールに、タテパスがことごとくオフサイドにされてしまって・・

 とはいっても湯浅は、その「最終勝負のラインコントロール」に、ちょっと不安な感覚を抱きました。彼らには、ブラジルの「次の仕掛け」の意図やタイミングが、本当に分かっていたんだろうか・・、本当に「確信のラインコントロール」だったんだろうか・・って疑問が残ったんですよ。

 「一般的なラインコントロール」、また「最終勝負でのラインコントロール」については、フィリップのフラットスリーも含めて、「Isize 2002 cLub」で明日にはアップしますので、そちらを参照してください(このコラムは二回シリーズで、先週が一回目です)。

 それでも、何度も、何度も、日本のラインコントールに引っかかりオフサイドになってしまう・・。ブラジルの仕掛けの「起点」になった選手たちやトップ選手たちのアタマのなかには、崩しに関する「シンクロしたイメージ」がまったくなかった!? そんなところも、彼らが「本物のセレソン」ではないということの明確な証明だと思う湯浅なのです。

 前半の半ばあたりから日本も、少しは前へ行く雰囲気を作りはじめます。中田も、二試合を消化して、やっと本来の調子を取り戻しつつありましたしね。また小野も、左サイドで才能を存分に発揮し(自信ベースの)安定&クリエイティブプレーを展開します。

 それでも、両サイドからの突破がないことで、日本の攻撃は、まさに「単発」になってしまって・・

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 攻めでは非凡な落ち着きからのクリエイティブプレーを披露していた小野ですが、前半14分と25分に、右サイドを駆け上がったゼ・マリアに作られた決定的な二つのピンチの場面では、逆に「守備での不徹底さ」を露呈してしまいました。

 最初のシーンでは、「オフサイドかも・・」なんて、ぬるま湯の「戻り」だったから、完全に、ゼ・マリアに走り込まれてしまって(もちろん完璧なタイミングのスルーパスを通されてしまいます)・・。このシーンで小野は、日本の最終ラインを確認できてはいませんでした。それなのに、「たぶん、オフサイドになるんじゃないか・・」と、横を走り上がるゼ・マリアを(自分の前にいるからと!?)「フリーで行かせて」しまったのです。そして、そのゼ・マリアに完璧なチャンスを作り出されてしまって・・(都築のスーパーセーブで助かったシーンですよ)

 次の、これまたゼ・マリアに作られた決定的ピンチでも、小野の「不徹底な戻り」が原因になってしまいます。

 もちろん服部が後方に控えていました。それでも、服部は、(小野が全力で戻らなかったことで)相手ボールホルダーと、完全にフリーで右サイドを上がるゼ・マリアの二人をチェックしなければならない羽目に陥ってしまいましたからネ・・。

 「まだ絡める!! 全力で服部のカバーリングまで戻れ!!」。またまたそんなことを叫んでしまって・・。もちろん全力で戻ったとしても、実際には「無駄」に終わってしまうのかもしれません。ただそんなプレーは、チームのモラルは高く保つという意味で、大いなる「チームプレーの価値」なのです。でも逆にチームメイトが、「アッ、アイツは必死に戻ってこなかった・・」と思ったとしたら・・。互いの信頼も地に落ちてしまいます。そんな「小さな」ところから、チーム全体に貫流する、心理・精神的な「何か」が崩れてしまうものなんですよ。

 この数週間、本当に素晴らしいプレーをつづけている小野(サッカーの本当の楽しさが何なのかを掴みかけている小野)。このシーンについて、ビデオを見返すことで猛省して欲しいものです。

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 後半、小野に代わった中田浩二がフラットスリーの左サイドに入り、服部が左サイドバックに入ります。また、鈴木に代わって森島が登場です。相手が強い場合の現実的なシステムへの変更・・!?

 そして最初の時間帯、日本がペースを握ります。とはいっても、そこはブラジル。守備ブロックだけは堅牢そのものです。日本は、一対一の勝負で勝てないだけではなく、スムーズなボールの動きも、勝負ゾーンでは完璧にスピードダウンさせられてしまって・・(後ろからのサポートが遅れ気味)。もちろんこれでは、決定的なスペースを突けるはずもありません。

 それでも森島と中田に、後方から攻め上がる何人かがタイミング良く絡めれば、「何か」を起こせそうな雰囲気だけは作り出せますが・・。あっ、『あそこ』へパスが出たら(『あそこ』へパスが回されるかもしれない)・・というチャンスの可能性だけは感じさせてくれるのです。でも結局は・・

 最後のブラジルの「猛攻」ですが、それも本当に「力ずく」。ブラジル特有の「攻撃における美しい変化」の兆しさえ感じません。もちろんそれでも、個人的には「サスガ!」と感じさせる局所的なシーンは多々ありましたが・・

 でも最後の数分間は、ブラジルの「怒濤の勢い」が、日本守備ブロックをかなり不安定な状態に陥れます。ガンガンと押し込んでくるブラジル。クリアしても、クリアしても、すぐに(前への勢いが数倍になっている)ブラジルが、ボールを奪って日本ゴールへ迫ってくるのです(猪突猛進ではありますが・・)。

 こんな状況でゲームの流れを落ち着かせることができるのが、本当に価値のある選手なんだけれど・・。もちろん中田ヒデがボールを持ったら、無理な仕掛けへトライするのではなく、しっかりと落ち着いたボールの動きを演出しようとはするのですが・・なんてことを思っていたときに、冒頭の森島の「試合の流れを敏感に感じ取ったクレバーなキーププレー」が飛び出したんですよ。まあ、本当に嬉しくなってしまって・・

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 この試合では、たしかに数度、(力ずくではあったにもかかわらず・・)ブラジルに決定的なカタチを許してしまいました。そのことについては、機会を改めて、ロジックな分析を・・

 さて、二日前に予想したとおりの準決勝カードになりました。

 でもオーストラリアは、チームとして強固にまとまった、もの凄く強いチーム。全員が、自分のタスクを心底理解し、それを全身全霊でこなすのです。この準決勝は、日本代表の「本当の意味での真価」が問われるといってもいいゲームになりました。これまでのような「格上との対戦」という標語は通用しませんし(だから逆に限界の集中力で試合に臨むことができた!?)、相手は、何も失うものはありませんからネ。

 とにかく、何としてでも、どんな苦しい状況に陥ったとしても、決勝での「あの再戦」を目指し、「自分たち自身」が完璧に納得できるように「自分たち主体」で全力を出し尽くして欲しいと思う湯浅です。もちろん、フランスにも準決勝で頑張ってもらわなければ・・




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