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コンフェデカップ(7)・・フ〜〜、本当にタフゲームでした・・また「決勝」についてのショートコメントも・・日本代表vsオーストラリア代表(1-0)・・(2001年6月7日、木曜日)


いや、疲れました。もちろん、日本代表守備ブロックの「落ち着き」を見ていれば・・、また、驚くほど「攻撃のアイデア」がないオーストラリアの攻撃を冷静に観察すれば、まあ「ロジック的」には安心ではあったんですが・・。それでも、そこは「サッカー」ですからネ。またオーストラリアも、何本も両サイドからセンタリングを放り込んできましたし・・。たしかに、最終勝負のマークがキッチリしていたことで(ベストタイミングのブレイクからのマンマークですよ!!)、「これは大丈夫だな・・」と感じてはいたのですが、そこは・・

 日本代表は、最後まで集中を切らさず、ステディーに、よく守り切りました。彼ら自身も「このオーストラリアの攻撃だったら大丈夫!」と確信していたに違いありません。一人ひとりの守備プレーに、落ち着きと余裕を感じました(相手の仕掛けに対する読み、ポジショニング&最終勝負のラインコントロール、両サイドと、稲本、戸田の中盤ブロックによる守備コンビネーション、そして最終勝負におけるラインブレイクタイミング等々)。

 後半10分に起きた鈴木の退場劇から数えて、35分と3分。日本代表は、本当に落ち着いたサッカーを展開しました。それも、彼らの成長の証です。もちろん守っているだけではなく、稲本と中田を中心にした「次の攻撃」をしっかりと意識した「攻撃的なディフェンス」も見逃せません(ボールを高い位置で奪い返した状況では、しっかりと守備要員も押し上げてきていました!)。そして中田が、森島が、完璧カウンターの絶対的チャンスを何度も得たのですが・・。「神様の仕業」とはいえ、あの決定的なチャンスを決められなかったは反省材料にはしなければ。

 とにかく良かった・・。まず「感情的」に書きはじめた湯浅でした。さて・・

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 ゲームがはじまって10分くらいから急に雨と風が激しくなってきます。それにしても、激しい雨・・というよりも、シャワーですネ、これは。ものすごい勢いで空から水が降ってくるといった状態。こんな自然環境だったら、フィジカルが強いだけではなく、(ヨーロッパでプレーしている選手が多い関係で)ウェットに慣れているオーストラリアの方が有利!?

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 硬い、硬い・・。日本チームのプレーが硬い。最初の時間帯の印象です。

 立ち上がりの中盤でのせめぎ合い、とくに守備で、日本チームよりもオーストラリアの方が目立ちに目立ってしまって・・。やはり日本代表の選手たちは、決勝を意識しているんでしょう。「とにかく、立ち上がりは固くいこう・・」。でもそれで、全体的なプレーの流れまでも「硬く」なってしまって・・

 硬くなると、どうしても「次の読みアクション」が遅くなります。守備においても、攻撃においても。だから、試合がはじまる時点での「チーム全体のマインド」に対する意思統一がものすごく重要になるんです。「相手は、とにかく最初からガンガンくるから、とにかく勢いに負けないように、中盤での積極的な守備をベースに、そこからとにかく素早くボールを動かしていこう・・」とかネ・・

 オーストラリアは、日本の「一般的なラインコントロール」をしっかりと意識していると感じます。オーストラリアが、ボールを「下げる」のに応じて日本の最終ラインと中盤ラインが「上げ」ます。そして「次の」ロングボールが蹴られる直前、最終ラインが、スッと下げて「先に」ボールに追いくという、いつものラインコントールなんですが、日本の最終ラインが下げるとき、オーストラリアの「トップ選手たち」も、一斉に、ズバッと上げてくるのです。これだと、ロングボールにも「互角」に競り合えますからネ。フム・・彼らも日本の守備戦術をしっかりと研究しているな・・

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 そしてどんどんと雨が激しくなってくるなか、その「自然の猛威」を味方に付けるかのように、オーストラリアがペースを奪いはじめます。

 中盤より前へ進めない日本代表。それに対し、何も失うもののないオーストラリアが、中盤での忠実で激しい守備をベースに、本当にシンプルな攻撃を仕掛けてきます。ボールを奪い返した直後の「正確でシンプル」なボールの動きから、これまたシンプルに(早いタイミングで)タテへつないできます。たしかに日本の最終ラインが「ウラ(決定的スペース)」を突かれるわけではないのですが、それでも「ブロック」になって押し上げてくるオーストラリアに、また激しい雨によって、ボールを奪い返しても、中盤で「次の攻め」を構築できず、簡単にボールを奪い返されて押し込まれる日本代表・・といった展開です。

 それにしてもオーストラリアは、(前半に限っては!?)「やはり」強さを発揮しました。それはそうです。彼らのほとんどは、ヨーロッパ(多くがイングランド)のプロリーグで活躍しているのですからネ。しっかりとボールを止めるだけではなく(少ないボールタッチでのコントロールのことですヨ)、素早く、広くボールを動かすことでも一流です。

 日本が、「読み」プレスを掛けにいこうとしたら、その「前への勢い」を外すように、シンプルに(ロジックに)ボールを動かしてしまいます。ちょっと押し込まれている日本代表ですから、「ヤツらにペースを握られるものか!」と、(心理的に)前掛かりになるところを突かれ、中盤選手が置き去りにされてしまうのです。ということで、逆に、ちょっと落ち着こうと「待ちかまえる」体勢になったら、今度は、どんどんと「攻撃の起点」から危険なアーリークロスやスルーパスを送り込んできます。

 もちろん「パスレシーバー」の方も、日本の最終守備ラインの「守り方」をしっかりとイメージしています。「注意深い」スタートから、タイミング良く決定的スペースへ爆発スタートを切るのです。これでは、日本の最終ラインも「最終勝負のラインコントロール」で対処できるはずがありません。どうしても「ラインをブレイク」して、マンマークで対応せざるを得ないというわけです。また、(セットプレーも含む)単純な「放り込み」からの、強引な競り合いと強引なシュート・・という「チラカワザ」も、もちろん健在。これは大変な試合になるぞ・・

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 そんな展開のなか、最終守備ラインの重鎮、森岡が、ケガのために交代してしまいます。ただ、この森岡のケガが、日本代表に「強烈な刺激」を与えたようです。やっと日本のプレーに「落ち着き」が戻ってきます。それはそうです。もう「やるしかない!」ですからネ。皮肉なことではありますが、森岡のケガによって、日本チームの集中力が、数段、高まったと感じた湯浅でした。

 そして、やっと中盤でのバランスが良くなってきた日本代表。つまり、攻撃と守備のリズムを取り戻した日本代表が、やっと「互角のサッカー」を展開しはじめます。そして28分。鈴木が左サイドから持ち込み、「決定的スペースを横切る」、例のトラバースパスを送り込みます。僅かに触れない西沢。ただその直後の、波戸からのセンタリングの場面では、完璧に合ったセンタリングをヘディングしようとした西沢に、背後からオーストラリアディフェンダーが「肘打ち」を、彼の首筋に食らわしてしまって。あれは完璧なPK! そのファールがなければ、たぶん西沢のヘディングシュートは・・。アッと、「タラレバ」はなしか・・。まあ「レフェリーのミスジャッジもドラマうち」ですからネ。

 その後の37分には、稲本のスーパーインターセプトからのドリブルをキッカケに、最後は、ペナルティーエリア右サイドのタテスペースへ走り抜けた中田へのスルーパスがうまく通される・・というシーンがありました。中田のダイレクトシュートが相手に当たってコースが変わり、中央に走り込んだ西沢の胸に当たって、あわやゴール・・

 でも、その後の、38分、40分と立て続けにオーストラリアが絶対的なチャンスを作り出します。コリカの、ラッキーなドリブルシュート(川口の正面へ飛んでラッキー! また川口も落ち着いていました)、そしてラザリディスのヘディングシュート(波戸がしっかりと身体を寄せていたことで、僅かに日本ゴールを外れる!)。フ〜〜

 そして直後の42分に飛び出した、中田ヒデのスーパーフリーキック。先制ゴ〜〜ル! これについてはコメントなんて必要ないですよネ。彼は、(オーストラリアの壁が飛び上がることを予測し)わざと「足許」を狙ったのですが、それが本当にうまくすり抜けてしまって・・。いや、素晴らしい・・

 でも私は思っていました。「これで後半は、大変な展開になるぞ・・」ってね。でも実際には・・

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 鈴木が退場になった後の日本守備ブロックの落ち着きは前述した通りですが、そこでの、奇異なほどのオーストラリア攻撃の「アイデアのなさ」には、逆に驚かされましたネ。もちろんそれは、相手守備ブロックが「しっかりと組織」された状態では、それを崩していくことは容易なことではない・・ということなのですが(要は、日本対カナダと同じ現象だったということです)、それにしても、オーストラリアの攻撃は本当に単調。「攻撃の変化を演出するアイデア」のかけらさえも感じられなくて・・。

 前半に魅せた「シンプルで危険な攻撃」は、日本の守備ブロックが「まだ整っていないチャンス」を、豪雨を味方に確実に突いてきた、つまり空いたスペースを素早く(ロジカルに)突いてきたということです。逆に、後半の「組織された」日本守備ブロックのウラを突くだけの「才能(アイデア)」には恵まれていなかった・・。でもキューウェルとか、「世界」で活躍する他の数人の才能たちが揃っていたら・・

 「10人」になった状況での、落ち着いた(クレバーな)プレーによって、オーストラリアの「パワー」をしっかりと受け止めた守備、また「一瞬のスキ」を狙った高い位置でのボール奪取からの決定的カウンター攻撃。そんな後半の「確信」に満ちあふれた展開は、確実に彼らの「自信レベル」を引き上げたに違いありません。

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 さて、私が切望したとおり、決勝はフランスと日本の「再戦」になりました。今回のコンフェデレーションズカップは、日本代表にとって価値のある大会になったじゃありませんか。2002年に向け、「この大会は、予想に反して、経験を積み重ねていかなければならない(そのことで世界へ通じる自信を深めていかなければならない)我々にとって、もの凄く重要な展開になった・・。だから中田ヒデも最後まで・・」というフィリップの思いが手に取るように分かるじゃありませんか・・

 ブラジルをも、「内容的」に凌駕したフランス。たしかにブラジルも「個人的にはうまい」ことは確かなのですが、そのうまさが「危険な攻撃を組み立てるエネルギー」につながりません。フランスの中盤でのプレスを「かわす」だけのプレーに終始しているんですよ。それに対し、中盤での組織的、クリエイティブな守備を、確実に「前へのエネルギー」に転換するフランス。この試合からは、「組織プレーと個人プレーのバランス」というポイントで、両チームの明らかな差が見て取れました。

 それにしてもフランスの、流れるようなボールの動きは、美しいだけではなく、本当に危険そのものです。中盤でチームメイトがボールを奪い返しそうになった瞬間から前線の選手たちが「動きだし」ます。そしてそこへ(もちろんそのパスレシーバーが狙うスペースへ)ボールが正確に動いてくるんですからネ。

 また、中盤での「インプロビゼーション」にも非凡な美しさがあります。詰まった状況でボールをもっても、ほとんど全員が、個人のチカラで打開してしまうんです。華麗なフェイントやボールコントロールで・・。そして、その後の「素早いタイミングでの仕掛けのタテパス」。まあ、大したものです。

 そんな強いフランスと決勝を闘う日本代表。シンデレラボーイ、鈴木は退場で出られません。また森岡も、(あの状態では、たぶん・・)決勝に出られるとは思えません。また中田ヒデもどうなるるか分かりません(優勝決定のグラウンドに一緒にいたいという彼の希望は当然ですし、よく理解できます・・私も、彼はナポリへ行くべきだと考えます・・フィリップには、彼の将来も考えて、慎重に話し合って欲しいと思います)。

 ということでフィリップは、世界と闘う上での「現実的な戦術」で臨んでくるでしょう。「まず」人数をかけることで(バランスのとれたポジショニングをベースにした、局所的な数的優位状況の演出!)、守備をステディーなものにし、そこからの機会を見計らった「攻撃的なディフェンス」でワンチャンスを狙う・・

 日本代表の諸君にとって、これほどのチャレンジ機会はありません。「ボール」へ行き過ぎることなく(一つの攻撃ユニットが開始されたときのボールへのチェックは、基本的に「次の守備」のためのファウンデーションと捉える!)、ボールがないところでの相手の動きを確実に封じましょう(特にパスを出した後の動きに要注意!)。絶対に消極的、受け身になることなく、心おきなく「冷静に燃える」プレーを展開して欲しいものです。




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