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コンフェデカップ(9)・・頑張ったけれど、またチラカの差を明確に感じさせられてしまって・・日本代表代表vsフランス代表(0-1)・・(2001年6月10日、日曜日)


やはりフランスは強かった・・なんていう書き出しは、本意ではないのですが・・

 守備にしても攻撃にしても、やはりチカラの差はアリアリ。その本質は、まず何といっても「個人的な能力の差」。そして「グループ・チーム戦術的な発想の差」。このコラムでは「・・たら・・れば」は絶対にやらないと心に誓ったのですが、それでも、どうしても「誰か」のカゲが膨らんでしまって・・

 結果は「1-0」でしたが、内容的な差はそれ以上。実際に、何度も決定的なカタチを作り出されてしまいました(ツキがあったこと、川口の好セーブ、最終ラインのガンバリに拍手ではあったのですが・・)。またフランスが、(特に後半)ペースを大きく落としたこともありましたしネ。疲れが出た・・!? それは事実。やはり大会の日程に、世界の常識を逸脱した無理があったということです。

 それにしても、(この日本の攻めだったら確実に守りきれるという確信をベースに!?)ペースを落としたフランスとはいっても、ココゾ! の勝負所(攻め上がる日本に対するカウンター!)では、本当に「蜂の一刺し」の鋭さがありました(またデサイーの決定的ヘディングシュートもありました)。それでも日本の守備ブロックは、よく組織的に守り通しました(森岡も完調ではなかったにせよ、よく頑張った!)。

 日本の「戦い方」からは、とにかくまず組織的に、全員が協力して守る・・、(特に中盤での!)自分勝手で安易な「守備での勝負」は、確実に墓穴を掘る・・、そのことについて、選手全員の「合意(イメージの統一)」のあることを感じました。

 ただ逆に、そのことによって、特に前半、日本の中盤守備が「受け身に過ぎる」と感じたものです。チェックの間合いをもっと「詰め」なければ・・、「行ける」タイミングではもっと「激しく」当たらなければ・・、フランスが、ほとんどプレッシャーなしの状態で自由にプレーしてしまう・・、そんなことを思っていたんですよ。実際に何度も、軽いタッチの展開を演出されたことで、中盤から最終ラインまでの守備ブロックが振り回されてしまって・・

 日本の選手たちは、臆することなく向かってはいきました。でも、基本的な「心理的な意識付け」は「注意深く」というものだったのでしょう。そのことで、またグラウンド上でプレーする選手たちが、相手との「現実のチカラの差」を体感しつづけたことで、チームの全体的なプレー姿勢が、徐々に「受け身」になってしまったと感じた湯浅でした。

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 さて、この結果をどのように表現したらよいのか・・。結論としては、「世界トップ」との実力差は、まだまだ大きい・・ということなんですがネ。

 フランスは、この大会で唯一、相手との実力の差を、そのまま「グラウンド上での内容の差」として見せつけることができるチームだったことに異論を唱える方はいないに違いありません。それも、ジダン、アンリ、チュラム、プティーなどの主力が参加していないにもかかわらず・・(ルメール監督は、主力と競り合うライバルを出現させることに腐心しているようですが・・)。

 世界ランクトップの実力を、大会を通じ、「安定して」実感させてくれたフランスに大拍手。それも、彼らの「チーム戦術的な発想」が、レベルを超えて「統一」されているからに他なりません。攻守にわたる、「組織」と「個」のバランス・・。いや、素晴らしい。

 このゲームに関して、もっと日本は攻撃に人数を割けるようなチーム戦術で臨むべきだった・・とか、守備的ハーフを三人にするのは間違いだった・・等々、これから様々な議論が出てくるのでしょうが、まあ、あれほどの実力差があるのだから、全体としては、正解の「現実的ゲーム戦術」だったというのが結論でしょう。

 三人の守備的ハーフですが、入れ替わり立ち替わり「前への押し上げ」をみせていましたから、決して消極的に守るだけ・・というわけではありません(攻撃での押し上げでは、まあ稲本が主役だったんですが・・)。それでも日本の攻撃は、フランスの中盤守備があまりにも上手く、忠実だったことで、(カウンターチャンス以外で)組み立てて攻め上がらなければならなくなったら、もうほとんど「諦め状態」。そのことは、彼らのプレーから明確に感じ取れました。

 カメルーン戦では、本当に「猫の額」のような「前方スペース」へ入り込むチームメイトに対し、スパッ、スバッと、(自信あふれる)パスが出されました。要は、リスキーなパスにもどんどんとチャレンジしていったということです。でもこの試合では、組み立て状況になったら、まさに「受け身パス」ばかりに終始してしまって・・。効果的な「仕掛けのパス」がほとんど見られなくなっていったんですよ。まあ、(フランス守備をレスペクトし過ぎているために!?)パスの正確性を意識しすぎることで、逆に「硬いパス動作」になってしまったということなんでしょうがネ。これでは、フランスに「次」を読まれて簡単に潰されてしまうのも道理・・といったところです。

 (繰り返しになりますが・・)だから、とにかく少しでもチャンスがあれば、時間をかけずに「勝負パスを送り込む・・」とか、そのままロングシュートへいったりという「一発(単発)攻撃プレー」に終始してしまって・・。まあ、「仕掛けの組み立て」を演出しようにも、あまりにもフランス守備ブロックの「ポジショニングバランス」、「読み」、「次のパスレシーバーに対する寄せ」、そして「一対一の勝負」などがレベルを超えていましたから・・

 とはいっても後半は、少しは組織的に攻め上がることはできましたし、左サイドからの三浦の「勇気をもった」単独勝負シーンもありました。でも結局は、フランス守備ブロックを崩し切るというシーンは、まったくといっていいほど演出することはできませんでした。フ〜〜

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 稲本の交代についてですが、私は、どうしてかな・・と思わざるを得ませんでした。

 小野を二列目にするために(より攻撃的にするために)、守備的ハーフの一人を交代するのは分かります。選択肢は三人。そのなかから稲本に決めたフィリップ。まあ、その決断をレスペクトはしますし、何か(外部にははかり知れない)物理的・心理的な原因があったのかもしれません。たしかに前半での彼のプレーは、攻守にわたって、ちょっと中途半端でもありましたしネ(中途半端にならざるを得なかった!?)。でも、守備的ハーフを二人にするというチーム戦術に変更するのならば、(その意味をしっかりと理解する)稲本のプレーもよりメリハリがつくでしょうし、何といっても、この大会における、稲本の「守備的ハーフとして存在感」は突出していましたから・・(中盤におけるダイナミズムの演出では傑出)。まあ、グラウンドに残った伊東、戸田も、(前述したとおり、ちょっと下がり気味・受け身に過ぎてはいましたが・・)前半からのステディーなプレーを維持していましたから・・

 小野ですが、残念ながら、ここ最近の好調プレーを、「二列目」でも維持することはできませんでした。そのことは彼自身が一番よく感じていることでしょう。もっと、もっと「ボールのないところ」で動き回らなければ・・。たしかに「二列目」で、攻守にわたり、自ら積極的に仕事を探すのは、確固たるイメージがなければ難しいことなんですが、その「壁」を超えなければ、次のステップに進めないことも事実です。

 小野は、森島のように、とにかくまず守備から入っていかなければ・・。つまり「前後の動き」を、もっと、もっと激しくしなければならないということです。それがあってはじめて、仲間も、彼に積極的にボールを集めはじめるんですよ。小野は、前へポジションを上げたら、急に「動き」が緩慢になったと感じられましたからね(もちろん守備では、相手ボールホルダーへの寄りは見せますが・・)。とにかく小野は、自分にボールが「集まらなかった」という事実を、しっかりと見つめ直して欲しいと思う湯浅なのです。

 日本のフラットラインですが、前半に二本、(まさに最終勝負のラインコントールの場面において!)スルーパスを通されて決定的なチャンス(日本にとってのピンチ!)を作り出されたシーンがありました。たしかに一本目は本当に微妙でした。でも、スローで見返した限り、少なくとも「二本目」は確実なオフサイド。まあとはいっても、そんな(レフェリーのミスジャッジも含めた)リスクは承知のうえですから・・。

 それ以外では、「二種類のラインコントロール(これについては「ISIZE 2002 CLUB」のコラムを参照してください・・トップページにリンクボタンがあります!)」、ブレイクポイントも含め、日本のフラットラインはうまく機能していました。まあそれでも、両サイドバック、中盤の伊東と戸田が「下がり過ぎる」シーンが頻発したために(中盤の球出しをうまく抑えられない=最終ラインの読みに問題が生じる!)、「最終勝負のラインコントロール」がちょっと不安定になってしまうという場面があったことは事実ですが・・

 最後に、この試合唯一のゴールについて(飛び出した川口のアタマをフワッと越えてゴールへ・・)。これはもう、川口の「飛び出しミス」としか言いようがありません。最終的に、(読みベースのスタートから)チェックにいった松田も、川口が「見えた」ことで、最後の一瞬、スピードを緩めてしまいましたしネ。松田は、もし川口が飛び出さなかったら、(ビエラのスピードが抜群だから)最初にボールに追いつくことはなかったにせよ、最低でも「身体を寄せる」ことはできたに違いないから、事なきを得たでしょうに・・

 ゴールキーパーは、ゴールを飛び出したら、何があっても「誰よりも先」にボールに触る・・というのが絶対的な原則なんですよ。

 その他のプレーでは、スーパーセーブも含めて良いプレーを展開した川口。悔やまれるワンプレーではありました。このミスが、彼にとっての「良い意味での刺激」になることを願って止みません。

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 再び「世界の壁という現実」を突きつけられた日本代表。ただ、それを繰り返し「体感」することでしか「世界との僅差」を縮めていけないことも確かな事実なのですから、こんな短期間のうちに「世界トップとの再戦」を果たせたという、この上ない幸運を、次のステップのために、限りなく実効あるカタチ(イメージトレーニングなど)で活用し尽くして欲しいモノです。

 私も、機会を見て、この試合についてのより詳細な分析を試みたいと思いますので・・

 それにしても、最終節まで「優勝決定」がもつれ込んでしまったローマ(ナポリとは結局2-2の引き分け!)。そして中田も出ず仕舞い。まあそれもこれも、サッカーという理不尽なボールゲームが突きつける「現実」ですから・・




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