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立ち上がりの劣勢をはね返し、全体的にはゲームをコントロールしたドイツ・・WCヨーロッパ予選プレーオフ・・ウクライナ対ドイツ(1-1)・・(2001年11月11日、日曜日の早朝!)

いや、リキが入りました。こんな(心理的)ハイテンションの観戦は、本当に久しぶり。そして思いました。やはり私にとって、「反面教師」としてのドイツは第二の故郷なんだ・・ってネ。

 試合前、ハーフタイム、そして試合後。もう何度も、ドイツの友人たちと「心理ステージを共有」するために電話でしゃべりまくりました。現在のドイツ代表を批判しつづけるヤツらですが、それでも、「やっぱり」ドイツ代表を「心」から応援してしまうんですよ。だからこそ、「期待とのギャップ」が、「怒り」となって口をついて出てくる・・。

 とにかく、私も含め、「当事者意識」が強烈だということなんです。もう「まったく」美しくはないドイツ代表。サッカー的な「魅力」では低レベルそのもの。本当に、アタマにきます。それでも・・。

 ドイツの二部リーグの試合に熱狂するファンがいます。「J−2」のクラブを力強くサポートする地元ファンがいます。そこで行われているサッカーの「質」が一流ではなくても(もちろん全力プレーでなければ、フラストレーションだけがたまってしまいますがネ・・)。やはりサッカーは「生活文化」そのものだということです。サポートするサッカーチームは、まさに、人々の「アイデンティティー」の大きな部分を占める存在にだってなり得るということです。もちろん、そのアイデンティティーの「コノテーション(言外に含蓄される深い意味)」は、人それぞれでしょうけれど・・。だからこそサッカーは、「代理戦争」にだってなりうる社会的存在だということです。

 いま、「経済と文化の動的な均衡」というテーマを追い続けています。まだ文章にはしていませんが(かなり前、「2002クラブ」では、何度かコラムを発表しましたが・・)、とにかく今の「経済に主導されるサッカー」という現状が、今後、どのような方向へ展開していくのか・・。そのことを考えているというわけです。

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 ちょっとハナシが逸れてしまいました。では試合レポートを・・。

 ゲッ・・。立ち上がりの時間帯、本当にビビりました。このレポートは、もちろん「ドイツ主体」で書いているわけですが、最初、そのドイツが押し込まれつづけ、何本か決定的なピンチまでも作り出されてしまったのです。

 ウクライナはホームゲームですから、最初から「ガンガン」前へくることは、ゲーム戦術的なイメージに織り込み済み。だから、押し込まれながらも、「コントロール範囲」のなかに収め、ゲームが落ち着いてきたら押し返していく・・。そうあって欲しい(そのくらいは、今のドイツ代表だって出来るだろう・・)と願っていた湯浅だったんですが、コトもあろうにヤツらは、押し込まれるだけではなく、決定的スペースを突かれ、危険なシュートまで打たれてしまったんです。これは大変なことになった・・なんて心配になったモノです。本当にドイツ代表は「壊れて」しまった・・!?

 開始早々のこと。ルズニーのタテパスを、ドイツの守備的ハーフにして「ゲームメイカー」、ハマンが(彼にしては信じられない)クリアミスをし、そのこぼれ球が、ボロベイの眼前スペースへ転がってしまったんです。そんなクリアミスなど、「予測」の範疇に入っているはずがありませんから、ドイツ最終守備ラインのハードストッパー、リンケの反応も遅れ、結局ボロベイに持ち込まれてフリーシュートを打たれてしまったんです。ドイツの守護神、オリバー・カーンも、防ぐことができず、「アッ、ゴールだ!」と誰もが思った瞬間、シュートされたボールが、左ポストに当たって跳ね返ってきます。

 それは、プロにとっては「日常茶飯事」のピンチだったのですが、その後6分にも、アザモアが中盤でボールを奪われてスルーパスを出され、今度はレブロフに、「ドカン!」とフリーシュートを浴びてしまう・・。そのシュートも、僅かに左に外れたことで事なきを得たわけですが、そんなシーンの連続に、これは大変なことになってしまうのでは・・という不安がよぎったのです。

 でもドイツ代表は、「まだ」本当に壊れているわけではありませんでした。このことはプロでは常識なのですが、そのピンチが、ドイツ代表にとっての、願ってもない「ポジティブ刺激」になったのです。そのときの心理は、「決定的なピンチを続けざまに作り出されてしまった・・でもツイていた・・フザケルナよ・・」と、彼らの「心理ダイナミズム」が高揚したのです。もちろんその背景には、長い歴史をもつ「ドイツの自信」があったことは言うまでもありません。その「心理エネルギー」が、中盤での強烈なディフェンスとなって、グラウンド上に現出します。そして徐々に、ドイツが押し返しはじめ、ゲームが落ち着いていきます。

 左サイドのツィーゲからの「サイドチェンジ・ラストパス」を、右サイドのシュナイダーがダイレクトシュートする・・、中盤まで「押し上げて」ボールを奪い返したドイツ最終ラインのストッパー、レーマーが、「そのまま」最前線まで突進して最終勝負まで絡んでいく・・。

 そんな展開のなかで、ウクライナが先制ゴールを入れます。シェフチェンコのフリーキックが、ドイツ選手の足に当たってこぼれ、それがズボフの足許へ転がってしまったのです。ズバッと先制ゴールをたたき込むズボフ。それは、「偶然要素」が主導したゴール。立ち上がりのように、ドイツの最終ラインが「流れのなか」でウラを突かれたわけではありませんからネ。

 そのことは、グラウンド上の選手たちが、もっもと鮮明に感じていること。「やられてしまったけれど、オレたちだってゲームのリズムを取り戻している・・、大丈夫だ、押し戻してゴールを奪うゾ・・」。その後の彼らのプレーからは、そんな「確信」を感じたモノです。やはり「腐っても」トッププロだな・・、世界一流の「体感」を自分たちのモノにしている・・。そんなことを感じたものです。そして、「落ち着いた(冷静な)ダイナミズム」をベースに、どんどんとゲームを支配するようになっていきます。

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 そして26分から27分にかけて、ドイツ代表が、つづけて二度も決定的チャンスを作り出します。起点は「セットプレー」。ここではコーナーキックだったのですが、最初はリンケ、次はレーマーと、続けざまに、直接ヘディングシュートがバーを直撃したり、ほとんどゴールのなかでウクライナ選手がヘディングではね返すなどという決定機を作り出したのです。流れのなかでチャンスを作り出すのは難しいだろうけれど、それでもドイツのセットプレーは怖い・・。これは、戦前に、各国のエキスパートたちも言っていたことです。ゲームの展開が膠着してきても、ドイツには「決定的な武器」がある・・、選手たちは、それを「体感」したに違いありません。ここから、ドイツの「自信レベル」が倍増したと感じました。

 そして、その「確信」が実を結びます。前半31分。シュナイダーの右からのフリーキックを、飛び込んだツィックラーが、(ダイビングヘッドで)ちょっと触ることでコースを変え、それを、ファーサイドのバラックが押し込んだのです。同点ゴール!!

 ドイツの「勝負強さ」は、まだ健在だな・・、そのとき私はそんなことを思っていました。中盤守備でウクライナ席巻するだけではなく、(たしかに美しい組み立ては魅せられないモノの)勝負所での「武器」を強烈に意識した攻めを着実に繰り出していく(セットプレーでのドイツ選手たちの集中した迫力はレベルを超えている!)・・、それです。

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 そこからゲーム全体を支配したのはドイツ。それでも、ウクライナの「カウンター」は怖い。何度か、シェフチェンコ、レブロフ、ボロベイ、ズボフという「超特急」たちが、タテパス一本の攻めから、チャンスの芽を作り出します(特に前半33分の、ズボフからシェフチェンコへのスルーパスは見事! ドイツGK、カーンがスーパーセーブ!)。

 そんなウクライナのスピーディーなカウンターに対し、ドイツ守備ブロックは、敏感に「調整」していきます。ノヴォトニー、リンケ、レーマーが、ウクライナのタテパスの状況になったときに、スッ、スッと、「早め」にポジショニングを下げ、決定的スペースをケアーしてしまうのです。この状態では、ノヴォトニーが、完全に「スイーパー」。例の「鉄壁なドイツ的スリーバック」。もちろんラインコントロールも魅せますが、それでも「安全(安定)志向」の方が強いことは言うまでもありません。何といってもこの試合は「一発勝負」なんですから・・

 そして後半は、ドイツが完全にゲームペースを握るなかでタイムアップを迎えたという次第(例によって、セットプレーや早めのクロスからドイツが何度かチャンスを作り出し、逆にウクライナは、ズボフのチャンス一本だけ・・)。

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 この試合での「MVP」は、何といっても、ドイツの守備的ハーフ、ハマン(イングランドのリヴァプール所属)。彼は、ダイナミックな中盤守備だけではなく、ゲームメイカー、バランサー役としても鬼神の活躍でした。

 また、右サイドに入ったシュナイダー、二列目のバラック、はたまた左サイドのツィーゲ、最前線のアザモアも、目立っていました。

 それにしても、ドイツの「縦横無尽」のポジションチェンジ(特にタテのポジションチェンジ)はインプレッシブ。前述したレーマーやシュナイダー、はたまたツィーゲ等が、どんどんと最前線まで上がっていったり、中央ゾーンへ「絞り込んで」いきます。それでも、全体的な「バランス」が崩れることはありません。この試合では(この前のフィンランド戦では強烈な批判を浴びた)ラメローが、中盤守備ブロックの中心として、またハマンが「クリエイティブなバランサー」として、本当にうまく機能していたということです。

 ドイツの特徴である「タテへの素早いコンビネーション」。その中心メカニズムは、何といっても「タテのポジションチェンジ」ですからネ。中盤での、クリエイティブな「読みディフェンス」で(インターセプトやトラップの瞬間を狙うアタックで)ボールを奪い返した選手が、そのまま最前線へ飛び出していく・・。何度そんなプレーを目撃したことか・・。

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 これで、第二戦(14日の水曜日)をホームで戦うドイツは、かなり「有利」になりました。「0-0」でも勝利ですし、何といっても会場のドルトムント(サッカー専用競技場)は、ホームの雰囲気を「極大化」するのに理想的なスタジアムですからネ。

 とにかく、試合内容を見ていて、ちょっと安心した湯浅でした。とはいっても、そこはサッカー。そういう状況だからこそ活きる、ウクライナの「超特急カウンター」など、危険ファクターは山積み。さて・・

 とにかく、数日後の「第二戦」が楽しみで仕方ありません。もうこれ以上書くのは、身体的に無理。ということで・・オヤスミなさい・・。

 




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