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小野の発展にとって本当にいいことなんだろうか・・その(2)・・オランダリーグ、NEC対フェイエノールト(0−3)・・(2001年9月9日、日曜日)

まず、前回のオランダリーグに関するコラムの冒頭部分を・・

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 「オランダのリーグは、上位と下位の「格差」が大き過ぎるからナ・・」。以前、友人のドイツ人コーチたちと、オランダリーグを話題にしたことがあります。今年7月、ドイツのベルリンで開催された「フットボールコーチ国際会議」で再会したオランダのコーチ連中も、「たしかにそうだナ。PSVアイントホーフェンやフェイエノールト、アヤックスなんかと、中堅以下のクラブとの差が大きすぎるから、どうしても上位チームは、安易なサッカーに走りがちになってしまうんだよ。運動量豊富なチームプレーじゃなくて、足許パスばかりで局所的なドリブル勝負を仕掛けていくとか、一発ロングボールを主体にして攻めるとかサ・・」なんて嘆いていたりして・・。

 (ここ数週間で観たゲームも含め)この試合でのフェイエノールトのサッカーも、そんな「近年のオランダリーグの概観」そのものといった内容でした。

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 ホント・・分かりやすいサッカーだよナ・・、そんなことを思っていました。何といっても、どこに誰がいるのか、ゲームが流れているにもかかわらず明確に「見えて」しまうんですからね。

 確かに小野は、「守備からゲームに入っていく」という忠実な姿勢を鮮明にしていました。そして実際に「高い位置」でボールを奪い返し、そこからの決定的パスから(こぼれ球を奪ってのスルーパスも含めて)決定的なチャンスも演出しました。

 また、フェイエノールトの先制ゴールの場面では、タイミングのよい「フェイント」からの爆発ダッシュ(決定的フリーランニング)で左サイドスペースを「えぐり切り」、これぞ才能! という「トラバースパス」を、NECゴール前の決定的スペースを(横方向へ!)貫くように通して、カルーの先制キャノンゴールを演出しただけではなく、何本か、左サイドバックのオーバーラップに合わせた「美しい」タテパスや、最前線のファン・ホーイドンクやトマソンへのスルーパスを通しました。

 それでも結局は、自分のオリジナルポジションである「左サイドのタッチライン際」を、単に上下に動くだけになってしまって・・。そのことは、彼のチームメイト全員に当てはまります。だから「誰が、どこにいるのか・・」ってうことになったわけです(とはいっても、特に右サイドのエマートンだけは、どんどんとオーバーラップしていましたがネ)。

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 彼らは「ポジショニングバランス」に極端にこだわり過ぎている!? まあそういうことなんでしょう。言葉を換えれば、「リスクが少なく効率的な(彼らにとっては、ロジカルでクレバーな)」サッカーを、チームのコンセプト(チーム戦術)にしている・・なんて表現できる!?

 「美しく、強いサッカー」の隠し味は、攻守にわたる、「ボールのないところでの、クリエイティブなムダ走り」なんですがネ。

 だから、極端なほど、縦横のポジションチェンジが見られない・・。エマートンのオーバーラップを除き、守備的ハーフのボスフェルト、パウエ等が、最前線までも追い越していくような「攻撃の変化(相手にとっての驚きフリーランニング)」などは皆無! またボールをもった選手も、(カッタるいボールのこねくり回しから!)できるかぎり自分のオリジナルポジションを離れないように「安全」なパスを回そうとする姿勢がアリアリ。それぞれの「ステーション(パスを受けたボールホルダー)」が、次の「素早く、広いコンビネーション」を意識している気配がまったくといっていいほどないんですヨ。

 そして例によって、それぞれの基本ポジションにいる味方への「足許パス」を繰り返しながら(もちろん、たまには勝負のラストロングパスもあり!)、その「小さな局面」で相手をかわせたときにだけ最終勝負を仕掛けていく・・(たまにはワンツーでのチャレンジプレーも魅せますがネ)。

 小野のプレーですが、(前述した)立ち上がりの「守備でのアクティブな絡み」に代表される積極プレー姿勢も、時間が経つにつれて、チームコンセプトに呑み込まれてしまいます。そして、左タッチライン際「だけ」で、「小さな局面プレー」をくり返す・・。数度でしたかネ、マーク相手を振りきる勝負ドリブルからのワンツーや決定的スルーパスにチャレンジしていったのは・・。

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 冒頭に書いた、相手とのチカラの差が「明確すぎる」から・・というヨーロッパコーチ連中の分析は、本当に正しいんですかネ。ここで、前回の「オランダリーグレポート」で書いた最後の文章をもう一度・・。

 『もし、選手たちが意識しなければならない「決まり事(=チーム戦術=コームコンセプト)」が、今回の試合内容そのものだとしたら大問題。あのサッカー(選手たちの戦術的な発想)は、確実にモダンサッカーに逆行するものです。だとしたら、小野の発展にとっても百害あって一利なし・・!? リーグが進むにつれて、フェイエノールトのサッカーが活性化することを、願って止まない湯浅でした』

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 ちょっと厳しい評価がつづいてしまいましたが、来週水曜日には、現ヨーロッパ王者、バイエルン・ミュンヘンとの、チャンピオンズリーグ初戦があります。「やっと」フェイエノールトの「本物の実力」を測れるシチュエーションが訪れるというわけです。すべての選手が、攻守にわたる全力チームプレーをベースに、チャンスを見計らい、ギリギリのリスキープレーにも自分主体でチャレンジしていかなければならない!

 もし彼らが、リーグ戦とは次元の違うハイレベルサッカーを展開したら、それこそ、フェイエノールトのファンに対する背信行為!?

 とにかく注目しましょう。バイエルンとの「厳しいゲーム」が、彼らにとって、また小野伸二にとっても、サッカーを活性化させるための「究極の刺激」になることを、願って止まない湯浅なのです。

 小野がスターティングラインアップに入る可能性もありますからネ(まあ、少なくともベンチには入るに違いない!)。

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 さてこれから(9月9日、日曜日の夜中)、中田英寿のゲーム(パルマ対インテル)、またブンデスリーガ(バイエルン・ミュンヘン対ドルトムント!!)があります。

 両ゲームについては、当HP、また「Isize 2002 Club」などでレポートすることにします。ご期待アレ・・

 




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