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チャンピオンズリーグ準々決勝とナビスコカップ一回戦について、ちょっとだけ・・(2001年4月4日、水曜日)


先週の土曜日(日曜日!?)から、ちょっと体調を崩してしまって・・。調布の東京スタジアムから、駒場スタジアムまで単車で飛ばし、その夜中には、テレビ埼玉のディスカッション番組に出演したのですが、結局自宅に戻ったのは夜中の三時をまわった頃。なにせ、その前日に、今回の海外出張(地球を一周半以上も移動)から帰国したばかりだったので・・

 そして次の日曜日からは、風邪気味になっただけではなく(なんといっても雪の中を単車で飛ばし、駒場に着く頃には、塗れていたレザージャンパーが乾いてしまって・・)、ちょっと昼間に寝てしまったために時差ボケも直らず・・ってな体たらくだったんですよ。やらなければならないことが山積みだっていうのに・・

 まあ、だらしがないわけですが、それでも火曜日の夜中(水曜日の早朝)に、チャンピオンズリーグの準々決勝で、バイエルン・ミュンヘンが、クレバーで忠実なサッカーを展開し、アウェーの「オールド・トラフォード」において、マンチェスター・ユナイテッドに「0-1」の勝利を収めたのを目撃した頃から、再び調子が上向きに・・。まあ、ゲンキンなものです。

 この試合では、とにかくバイエルンのクレバーなゲーム戦術が目立ちに目立っていました。マンチェスター攻撃のキーマンである、ギグスとベッカムに対する「忠実ケアー」はもちろんのこと(特に、ドリブル超特急、ギグスに対するクフォーのディフェンスが秀逸!)、後方から上がってくるキーンやスコールズに対しては、この試合では中盤に入ったイェルミースやリンケ、はたまたエッフェンベルク、ショルなどが、臨機応変にゴール前まで戻ってマークしてしまう・・

 要は、アウェーだから、まずマンチェスターの「キーポイント」を消し、後方を安定させることで、効果的な攻撃を組み立てていこうというわけです。そしてその「思惑」がピタリとはまります。押し込もうとはしますが、最後の勝負どころでは、まったくバイエルン守備ブロックの「ウラ」を突けずに攻めあぐんでしまうマンチェスター(特に中盤でのパス回しが抑えられてしまって・・)。対するバイエルンも、最後のところではマンチェスターの守備ブロックを崩しきるところまではいけないにせよ、ゲームをうまく牛耳り、ボールポゼッション(ボール支配率)でも、マンチェスターを凌駕しています。

 それにしても、両チームの守備は強い。ディフェンダーたちの「次の決定的スペース」に対するイメージが、明確なんです(決定的スペースを使おうとしているボールがないところの相手に対する意識が明確!)。だから、両チームともに、相手守備ブロックのウラを突くことができない。それは、それは「超ハイレベル」なディフェンスではありました。この試合は、両チームの、クリエイティビティーの極みという守備を見ているだけでも鳥肌が立つ・・ってな展開なのです。

 でも、最後のところで、バイエルンが勝負強さを発揮します。後半の終盤にさしかかったところで、バイエルンが、フリーキックから決勝ゴールを挙げてしまったのです。フリーキックを、エッフェンベルクが素早く動かし、すぐにゴール前へ鋭いロビングを上げます。それも、「例によって」マンチェスターディフェンダーへ「まっすぐ」に向かっていくボールを・・。これが勝負の瞬間。このロビングが「まだ」空中を飛んでいるタイミングで、後方の二列目に位置していたパウロ・セルジオが、脱兎のごとく爆発ダッシュをスタートしたのです。目指すは、もちろん決定的スペース。彼は、エッフェンベルクのロビングを、誰かがヘディングで、自分の走り込むスペースへ「流して」くれると確信していたのです。

 マンチェスターのディフェンダーたちは、ロビングの行方を見つめてしまって・・。パウロ・セルジオは、マンチェスター最終ラインの重鎮、シュタムとブラウン、はたまたシルベストルの「間」を見事にすり抜けていき、そこへ「案の定」のヘディングラストパスが送り込まれました。これでは「天才GK」、バルテズも如何ともし難い・・。いや、本当に美しい決勝ゴールではありました。

 このゴールで、私の体調が、格段に好転したっていうわけなんですよ。

 それにしても、バイエルンの、完璧に整合性のとれた守備は素晴らしいの一言でした。ライン気味に組織を組むんですが(ある程度まではマークを受けわたす)、ブレイクのタイミングが早く、そこから、これ以上ないというほどの忠実さでマークをつづけるのです。要は、選手一人ひとりが、「ここが危ない!」というイメージを「自分主体」で描きつづけているということです。だから、ヤンカーとか、ショルとか、エッフェンベルクなんていう「攻撃のコアの選手たち」も、自陣ゴール前で、決定的なタックルをするなんていうシーンを何度も目撃するんですよ。いや、素晴らしい。

 「今は負ける気がしない・・」。バイエルンのヒッツフェルト監督が、試合前のインタビューでそんなことを言っていたそうですが、その「自信と確信」には、明らかな根拠があると感じました。そうです、選手たち一人ひとりの「相手からボールを奪い返す・・そのために、ボールがないところも含めて、とにかく守備のアクションに常に参加しつづける・・という守備意識の高さ」。それです。

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 さて、引き分けに終わったナビスコカップ一回戦、(我らが!)横浜FCが、東京ヴェルディーをホームの三ツ沢に迎えた試合です。そのレポートを短く・・

 一番印象に残ったのは、やはりというか、ヴェルディーの「かったるい」サッカーでした。彼らには「才能」が揃っています。だからなおさら腹が立つ・・。もう何度も、何度も繰り返していることなんですがネ。それにしても、このゲームでも、何人もの「ボールプレイヤー」を中盤で組み合わせてしまって・・

 これでは、中盤でボールがクリエイティブに動くはずがありません。とにかく、各ステーション(ボールホルダー)でのボールのこねくり回しは、もう「病気」としか言いようがない・・!? もちろんその背景には、パスレシーバーの動きが「レベルを超えて」緩慢だという事実もあるのですが・・

 「止まった状態」の前園の足許にパスがまわる・・、もちろん彼が、「次のプレーイメージ」を事前に描く努力なんてするはずもなく・・、コントロールし、さてカッコいいプレーができるかなと、ボールをこねくり回す・・、でも決定的なパスやドリブルは無理のようだ・・、そんなことをしているうちに相手に詰められ、仕方なく「逃げの横パス」を出し、再び、トロトロとジョギングで移動する・・。そんな緩慢なプレーは、他のプレイヤーも同じ。誰か一人でも、「ふざけるなヨッ」ってな姿勢で一生懸命に走りはじめさえすれば、周りも刺激を受けるモノなんですが・・

 それにしてもヴェルディー。これじゃマズイだろ!!

 対する横浜FCのサッカーには、シンパシーを感じました。一人ひとりが、自分のタスクを強烈に意識し、忠実にそれをこなしていると感じるのです。

 守備では、ヴェルディーの攻めがあまりにも鈍重だったから、そんなに危機的なチャレンジを受けることはありませんでした。だからここでは、攻撃にスポットを当てましょう。

 前半では、左サイドの増田と森田のコンビが強烈な印象を残します。そして、そこからの崩しが、横浜選手たちに自信を与え、どんどんと横浜の攻めに活気が出てきたと感じます。だから、前半39分の、左サイドバック、森田の先制ゴールは「勝ち取った順当ゴール」だと思います。

 後半早々に、「やっと」出てきたチームプレイヤー、飯尾に同点ゴールをたたき込まれましたが、それでも横浜の攻勢は止まない。しっかりとした守備から、攻めとなったら、シンプルに、シンプルにボールを動かし、勝負所では、佐藤、増田、森田、はたまた交代した田島、有馬などが単独勝負を仕掛ける。それも、ビビッたりせず、全力でのチャレンジを・・。爽快、爽快・・。彼らは、それは、それは立派な戦いを展開したのです。永井監督の「良い仕事」を感じます。

 守備ですが、何度横浜が、「美しい」インターセプトを成功させたことか。もちろんそれは、ヴェルディーのボールの動きが鈍重だったからに他なりませんが、私は、それだけではなく、横浜の選手たちが、常に「頭のなかをクリア」に、「次の仕掛け」を狙っていたからだとも感じています。そんな、守備における積極姿勢が、攻撃での「前向きな、自分主体の仕掛けの姿勢」の心理的なベースになっていたことは言うまでもありませんよね。

 ちょっとスケジュールを調整し、横浜の試合も定期的に観戦しよう・・。そんな興味を抱かせるに十分な横浜のパフォーマンスではありました。それにしても、この内容だったら(横浜にとって)引き分けは惜し過ぎる!




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