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ハイレベルに拮抗したナイスゲームでした・・ナビスコ準決勝第1戦、ジュビロ対アントラーズ(1−0)・・(2001年9月26日、水曜日)

ハイレベルなサッカー・・。両チームともに・・。まず感じたことです。特にアントラーズ。数日前のレッズ戦で、前半の早いタイミング(4分)に先制ゴールを奪った後は、サッカーが停滞気味になってしまっていましたからネ(もちろん同点ゴールを奪われた後は、再びアクティブなリスクチャレンジが見られるようにはなりましたが・・)。

 とはいっても、両チームの「仕掛けの流れ」は、ちょっとタイプが違います。あくまでも(攻撃の最終段階まで)、素早く、大きなボールの動きをベースに、「決定的スペースでのポイント攻撃」を仕掛けようとするジュビロに対し(もちろん名波や奥などの中盤からの単独勝負はありますが・・)、どちらかというと「個人的な仕掛けアクション」の方が目立つアントラーズ。まあアントラーズには、ビスマルクという絶対的なチャンスメーカーが君臨していますし、柳沢、鈴木というツートップにしても、また左サイドのアウグストにしても、チャンスを見計らった「積極個人勝負」が持ち味の一つですからネ。

 ここでいう「仕掛けタイプの違い」とは、あくまでも「傾向」ですからネ。念のため・・

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 ということで試合は、両チームの特徴が前面に押し出された「ハイレベルな一進一退」という展開になります。

 前半で目立っていたのは、アントラーズが、ジュビロの「ボールの動きのリズム」をしっかりとイメージした守備プレーを展開していということです。ボールのチェックにいく選手は「深追い」せずに、あくまでも「守備の最初の起点」としてプレーし(ボールホルダーに対する複数選手のプレスというシーンも希!)、その周りで、うまく「ポジショニング・バランス」を維持しつづけるチームメイトたちが、「次の勝負ゾーン」にターゲットを絞るのです。だから、ボールのないところで「フリーランニング」を仕掛けるジュビロの選手たちが、いいカタチでフリーになるシーンがほとんど出てこない・・。

 さすがに試合巧者のアントラーズ。そして、そんな強固で忠実な守備ブロックをベースに、比較的「少ない人数」で、カウンター気味に攻め上がっていきます(個人を前面に押し出した攻撃!)。

 全体的にはジュビロの「ポゼッション(ボールキープ)」が目立ちます。それでも、「攻撃の実効性」という視点では、互角。これは面白いゲームになる・・

 とはいっても、アントラーズが人数をかけて攻め上がるような状況では(残っているアントラーズ守備ブロックが整っていない状況では)、今度はジュビロが、抜群のスピードでボールを「走らせ」て最終勝負チャンスを作り出してしまいます(前半では二本ほどありました)。

 ジュビロの「ボールの動き」を封じ、彼らに有効な攻めを展開させないことで自信を深めていったアントラーズが、今度は自分たちが主体になって攻勢を掛ける・・、でも逆に、ジュビロの素早い(カウンター気味の)攻撃を食らってしまう・・、そんな危険なカウンターに、ちょっと受け身の心理状態になって、再び守備ブロックを固める・・、そして再びジュビロのボールポゼッションが目立つようになる・・そんな展開ですかネ。

 前半でのチャンスは、何といってもアントラーズに軍配が上がります。最前線の鈴木、柳沢を「おとり」に、熊谷、中田浩二等がスペースを活用し、かなり確率の高いシュートチャンスを作り出したのです。その「蜂の一刺し攻撃」を操っていたのがビスマルク。それに対してジュビロは、決定的スペースをうまく突くことができず、詰まった状態でのロングシュートを放つだけ。フムフム・・

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 相手の「良さを消す」ゲーム戦術で戦うアントラーズ。アウェーですし、相手が、ハイレベルな「自分たちのサッカー」を確立しているジュビロですから、当然の試合プランなわけですが、それが、こんなにうまく機能するとは・・、なんてことを思っていた湯浅でした。

 後半も、同様のペースで試合がはじまります。やっぱり「勝負という視点」でのゲームの流れは、「少し」だけアントラーズに傾いて進行するんだろうな・・なんて思っていた矢先の後半1分。そんな「ゲーム展開」を示唆するような「一発チャンス」をアントラーズが作り出してしまいます。

 左サイドで、アウグストがドリブル突破にチャレンジする・・、ただ藤田の上手いディフェンスに止められてしまう・・、でも、そのこぼれ球が、中田浩二の足許に転がってしまって・・、すかさず、ジュビロのゴール前に入り込んだ鈴木へ、素晴らしく正確なラストパスをダイレクトで通す中田浩二・・、パスを受けた鈴木が、ワントラップから、振り向きざまに強烈なシュートを放つ・・、マークしていた田中は、鈴木の、絶妙な「スクリーニング・ボールコントロール」に、シュートをブロックすることができない・・、誰もが「アッ、ゴールだ!」と思った瞬間、ジュビロGK、ヴァン・ズワムが、足でボールをはじき出していた・・という次第。いや、絶対的なチャンスでした。

 その後は、再び「ハイレベル膠着状態」に突入します。でも、前半から比べたら、ジュビロのボールの動きが、相手守備を振り回す(ウラを突く)という意味で、少し再生されてきたかも・・なんて感じられるようになります。いや逆に、それは、アントラーズ守備の「包囲網」が少し甘くなりつつあるからなのかも・・なんてことも思ったりして・・。

 ある「変化」の背景要因を特定するのは難しいものです。何といってもサッカーは、守備と攻撃が「連続的に入れ替わる」相対的なボールゲームですからネ。

 こんなふうに書くと、ジュビロの「決勝ゴール」を表現するときの「導入フレーズ」を意識した文章だろう・・なんて勘ぐられそうですが・・。とにかく私が、ジュビロにとってポジティブな、何らかの「変化」を感じていたことは確かだったんですヨ(それも、前述した、鈴木の絶対的チャンスがあったにもかかわらず・・です!)。

 そして、後半9分。ジュビロの清水が(試合を通じて、彼の出来は秀逸!)決勝ゴールを挙げます。

 ハーフウェイ付近のスローインを「フリー」で受けた服部が、これまた「フリー」で前方スペースへ入り込んだ藤田へタテパスを通す・・、一瞬の「集中ギレ」で藤田をフリーにしたアウグストが「あわてて」マークへ急行する・・、そんな「無理なディフェンスアクション」を藤田が見逃すはずがない・・、一瞬の「タメ」の後、すぐに前方の中山との「ワンツー」で、アウグストを置き去りに・・、これでアントラーズのファビアーノは、左に中山、右にボールを持つ藤田と、二人に対処しなければならなくなってしまって・・、そしてファビアーノの、一瞬の「ためらい」をあざ笑うかのように、そのまま藤田がドリブルで抜け出してシュートを打ったという次第。その後は、GKがファンブルしたボールに「食らいついた」中山によって再びボールが「こほれた」ところを、清水が、倒れ込みながらシュートを決めたというわけです。

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 その後は、余裕の出たジュビロに対し、「ゲーム戦術」を100パーセント機能させるための集中を切らせてしまったアントラーズ・・という展開になります。もちろんアントラーズは、レッズ戦で成功した選手交代で活路を開こうとはします。残り20分弱というタイミングで、本田を外して相馬を投入し、アウグストを中盤に上げたのです。また、本山、長谷川も投入します。でも結局は焼け石に水。自分たちのリズム(良いプレーイメージ)を取り戻したジュビロが、余裕を持って逃げ切ることになりました。

 とにかく、この両チームの対戦は、内容的に「Jの看板ゲーム」とまでいえるレベルにあることは確かな事実。ナビスコ準決勝の第二戦だけではなく、10月13日に、静岡スタジアム「エコパ」で行われる「J」第8節の直接対決が、今から楽しみになってきたではありませんか。

 




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