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勝利をおさめはしたけれど・・無念!・・チャンピオンズリーグ予選ラウンド三回戦、リール対パルマ(0−1)・・(2001年8月23日、木曜日)

フ〜〜〜! 肉を切らせて骨を断つ「ギリギリの闘い」。私は、そんな極限テンションで強者たちが繰り広げる勝負を、心から堪能し、だからこそ、落胆の奈落に落ち込んでしまいました・・。ということで、このコラムは、チョット寝てから書くことにしたというわけです。ご容赦アレ・・

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 中田英寿のパルマが、チャンピオンズリーグの「予選ラウンド」で敗退してしまいました。「まさかの敗退」というわけではありません。まだパルマの「チーム力」が、全員の(戦術)イメージが高次元でシンクロするようなレベルまで高まっていないことは一目瞭然でしたから・・。

 そんなチーム事情だから、ウリヴィエリ監督の「立ち上がりのゲーム戦術」には納得していました。もちろん、この、もの凄く大事なゲーム「まで」に、チームを最高の状態に仕上げられなかった監督の責任を問う声は「強烈」に上がってくるでしょうが、相手のホームゲームを前提にした、また「チームの現状を考えた」ゲーム戦術自体は、妥当だったと考える湯浅です。

 第一戦のホームゲームで負けたパルマ。それも「0-2」という屈辱的なスコアで・・。

 だから多くの人たちは、この「勝負の試合」では、彼らは「最初」から吹っ切れた攻撃サッカーを展開するに違いない・・と考えていたことでしょう。でもパルマは「冷静」でした。

 攻撃を過度に意識しすぎている(それもドリブル突破を「自らのプレーイメージ」とする)左サイドのジュニオールを外し、堅実タイプのグレンコを先発させる・・、トップでは、ミロシェビッチを外し、ユーティリティータイプのマルキオンニを先発させる・・、はたまた中盤では、前へ重心がかかり過ぎる(!?)ラムシではなく、ベテランの「バランサー」、ボゴシアンを先発させる・・。

 ジュニオールの場合、上がりすぎのケースが目立つことで(彼の左サイドを空けてしまうから・・)、守備的ミッドフィールダーの負担が大きくなります。要は、そのスペースを意識しなければならないアルメイダの守備での負担が大きくなり過ぎ(第一戦では、パートナーのラムシも、どんどんと上がっていってしまいましたからネ)、攻撃の組み立て段階において目立った「絡み」を魅せることができない・・ということです。

 またミロシェビッチは、最前線でのディフェンス、スペースへの飛び出しに課題をかかえています(彼に代わって先発したマルキオンニは、攻守にわたってバランスしている)。

 そしてゲームは、「意図したとおり」の降着状態ではじまります。互いに守備を意識していますから、「流れるような攻撃」など皆無。足許パスばかりが目立ってしまって。もちろん中田英寿には、「お友達」にはなりたくない、リールのダミーコが、第一戦と同様に「トイレの中まで付いていく」というオールコートのハードマンマークです。

 それでも、パルマの守備ブロックは、完璧に「安定」していました。第一戦のように、押し込まれる時間帯が(それによって、チーム全体のバランス感覚が崩れた時間帯が!)ほとんどといっていいほど出てこないのです。もちろんそれには、リールが「例によって」守備的なゲーム戦術で試合に臨んできたこともあったわけですが・・。

 とにかく、ウリヴィエリ監督の「ゲーム戦術」は大正解だゾ!と考えていた湯浅だったのです。

 慎重に、慎重に・・。とにかく「まず一点」さえ取れば、リールの心理プレッシャーは極大化する・・、逆に「失点」は、その時点で(リールの守備力を考えれば)マッチは終わってしまう・・。いまのパルマには、三点ビハインドをはね返すだけの「吹っ切れたチカラ」を発揮できるだけの、物理的・心理的な「バックボーン」は備わっていませんから。

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 そして、そんな「チームの意図」が実を結びはじめます。まず前半18分。

 右サイドのトップで、マルキオンニがボールを持った瞬間、中田が、右サイドのタテスペースへ向けて爆発ダッシュ。例の、「相手のマーク視線から消える」フリーランニングです。中田は、彼をマークするダミーコの視線が、一瞬、ボールを持つマルキオンニへ向いた瞬間を逃さなかったというわけです。いや、素晴らしい。

 そしてマルキオンニからのタテパスを「まったくフリー」で受けた彼は、そのまま「最終勝負イメージが詰め込まれた」センタリングを、ファーサイドへ送ります。最後の「勝負所」になったディ・バイオは、相手との競り合いに負け、ヘディングでクリアされてコーナーキックになってしまいますが、それは、「選手全員がアタマに描く試合展開イメージ」を、そのまま投影したようなチャンスだったのです。

 そこから、「よし! これでいいぞ!!」という確信が出てきたパルマが、試合ペースを握り、今度は、ボゴシアンというパートナーを得たアルゼンチンの英雄、アルメイダが、爆発的な攻撃参加を魅せます。

 これまたマルキオンニからのバックパスを受け、タテに空いたスペースへ爆発的なドリブルを仕掛けたのです。最後は、アルメイダに抜き去られたリールのストッパーに引っかけられてしまいましたが、ゴール正面からのFKを勝ち取ったアルメイダの、「ここぞ!」というチャンスを嗅ぎ分けるドリブル突破チャレンジに溜飲を下げた次第。

 もちろん、そのフリーキックを、しっかりと先制ゴールに結びつけた(これまたアルゼンチンの英雄)センシーニにも大拍手。これで、クレバーなゲーム戦術を「徹底」したパルマが、リールに「極限の心理プレッシャー」を与えるような、(選手全員がイメージした通りの!)ゴールを決めました。

 さて、ここからが「本物の勝負」・・。

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 後半、当然の成りゆきとして、左サイドのジュニオールが登場(グレンコと交代)。そして、立ち上がり早々に、彼のドリブルを起点にチャンスが生まれます。ウリヴィエリ監督がイメージする「理想的な展開!」・・なんて思ったモノです。

 ただその後は、ホームのサポーターに後押しされるリールが、ディフェンスで、極限の集中力を発揮します。攻め込みながらも、守備ブロックを崩しきれないパルマ。

 でも私は確信していました。「いや、今までのケース同様、リールの守備での集中は20分を過ぎたあたりからダウンしはじめる」と・・。

 ここで、ミロシェビッチが、右サイドのサルトルに交代し(それまでトップに張っていたマルキオンニが、右サイドバックへ! 彼のユーティリティー性能の証明!)、ボゴシアンに代わってラムシが登場します。そのこともあり、(まあ、私が思ったとおり)後半20分を過ぎたあたりから、パルマが怒濤の攻撃を仕掛けはじめたというわけです。

 そして何度も、「えっ!? 何であれがゴールにならないの??」というチャンスを作り出し・・。でも結局、豊穣な果実をほおばることができずに・・、フ〜〜!

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 ここで、プロとしては「タブー」の「タラレバ発言」を少しだけ・・。お許しください。なんといっても悔しくてネ。

 それは、流れの中でのパルマの決定的チャンスのことです。第一戦では、中田が演出した前半の二本(バキーニのセンタリングから、ニアポスト勝負したミロシェビッチ、そして中田のサイドチェンジパス、中央でのダイレクトでのラストパスから生まれた、ラムシの完璧なフリーシュートチャンス!)、また後半の二本(ファーサイドからの折り返しヘディングを、中田が完璧なファウンデーションパスを送り、ラムシが、ゴール前12メートルからフリーでシュートしたシーンと、センシーニの完璧なフリーヘディングシュート!)。

 そしてこの試合では、後半36分からの、続けざまの四本の「決定的チャンス」。

 まず後半36分。ジュニオールから、左サイドのタテスペースへ爆発フリーランニングをした中田へ(この試合で何度も魅せた、労を惜しまない中田の「消えるフリーランニング」に拍手!!)・・、トラップした中田が、ちょっと「下がる」ミロシェビッチをオトリに、後方から上がるラムシへラストパス(ミロシェビッチがスルー!)・・、まったくフリーでシュートするラムシ・・、ただシュートは、リールGKの「正面」へ・・。

 直後のコーナーキック。ファーサイドから、センシーニのフリーヘディングシュート・・、最後はミロシェビッチの振り向きながらの左足シュート・・、でも惜しくもゴールを外れる・・。

 後半38分。左サイドからジュニオールがドリブル突破・・、素晴らしいコースとタイミングのセンタリングをファーサイドスペースへ・・、そこからの折り返しヘディングを、押し上げてきていたセンシーニがフリーでボレーシュート・・、またまた相手GKの「正面」へ・・。

 後半41分。右サイドでボールを持った中田・・、二人をかわし、中央のミロシェビッチへ・・、そのパスをヒールで「延長」するミロシェビッチ・・、最後はディ・バイオの、フリーでのヘディングシュート・・、またGK「正面」へ・・。「もういい加減にしろ!」ってな声が出そうになってしまって・・。

 「ツキ」がなかったパルマ・・!? いやこのケースでは、それも「実力のうち」だとするのが妥当な評価でしょう。アンロジカルな「感覚的表現」ですが、何といっても、あれほどの「決定的チャンス」を、ことごとく「惜しくも外してしまったり」、「惜しくも相手GKの正面へ飛ばしてしまったり」では・・。

 決定力・・。またまた「迷路のようなテーマ」に入りそうですが、これについては、また別の機会に・・

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 最後に、中田英寿。良かったですヨ、本当に。

 あれほどのハードマークをされていたにもかかわらず(ファールされたり、自らのミスも誘発されたりはしましたが)、忠実に動き回ることで、またシンプルにプレーすることで(我慢づよく)、何度も、組み立て段階における「攻撃の起点(ステーション)」になっていました。そして、数少ない「勝負所」では、キッチリとしたクリエイティブな仕事を魅せます。ホント、大したモノだ。

 欲を言えば、もっともっと、自分からシュートを打つことにチャレンジする姿勢を前面に押し出して欲しかったことはありますがネ(そんな攻撃イメージの幅によって、相手ディフェンスも守りにくくなる!)。

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 さて、これでパルマは、シーズンにおける「大きな目標の一つ」を失ってしまいました。

 彼らは、色々なところで報道されているように、主力選手たちが出ていってしまうことでチームが崩壊の危機に立たされるのでしょうか。このような逆境に陥ったときこそ、ウリヴィエリ監督、ジェネラルマネージャーたちの「ウデ」の見せ所ではあるのですが・・。何といっても勝負の世界だから、こんなことは日常茶飯事ですし、これから・・というタイミングですからネ。

 とはいっても、今のフットボールネーションでは、選手たちの目標イメージの「時間的スパン」が、本当に短くなっていますから・・。今シーズンは我慢して、確固たるチームづくりとリーグ優勝をめざし、来年の欧州ステージで輝こう・・なんていう「長期スパンの目標イメージ」を抱きにくくなっているんですよ。選手たちは、優秀であればあるほど「短期イメージ」しか描けず、自分の才能をもっと輝かせるために、「強いチーム(ベースとなる、選手や監督の才能が揃っているチーム)」へ行きたがるものですから・・

 そこがチョット心配ではあります。とにかく、今後の彼らの動向に注目しましょう。

 




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