トピックス


レッズは苦労するぞ・・浦和レッズ対LAギャラクシー(2-1)・・(2001年2月25日、日曜日)


この試合のレポートを書こうか、どうしようか・・

 前半を見ていて、本当にそんなことを思ってしまいました。何か書こうにも、あまりにも内容がないんですよ(もちろんネガティブな現象も大いなる話題ではありますがネ)。そんなことをいったらレッズファンの方々からブーイングされるかもしれませんが、そのことは、観ていた観客の方々が一番よく分かっていたはずです。スタンドからバンバン飛び出すヤジも、試合の「内容」に沿ったものでしたしね。とにかくスタンドが沸くようなエキサイティングシーンが出てこないから、「何だ、もっと走れよ!」とか、「もっと一生懸命にやれよ!」なんていうヤジばかりが耳についてしまって・・

 内容の悪さに呆れ、前半の15分くらいでパソコンをバックパックにしまい込んでしまったのですが、「湯浅さん、パソコンをしまわないで下さいよ!」なんて、後ろに座っていた増島みどりさんから声がかかってしまったりして・・アハハッ・・

-----------------

 レッズは「フラットフォー」にしました。そして、それに対する私の正直な印象が、「これじゃ、リーグがはじまったら苦労するぞ・・」だったというわけです。

 問題の本質は、フラットラインを構成する選手たちが、「ラインを作って維持することばかり」を意識していることを如実に伺えるところにあります。「おいおい、守備の目的は、ラインを作ることなんかじゃなく、相手からボールを奪い返すことだろうが・・」なんて、思わず声に出してしまって・・。

 相手のロスエンジェル・ギャラクシーは、世界の一流ではありませんから、ラインを完全に崩されて「ウラ」を取られるようなシーンは、あまり目立ちはしませんでした。それでも、ラインを形成する選手たちの「意識」そのもの自体に、大きな問題がある・・と思った湯浅だったのです。

 「フラットライン守備システム」は、互いのポジショニングバランスを保つ「ライン」を形成し、動き回る相手選手のマークを受けわたすところからはじまります。そして自らが「オフサイドライン」だという強い意識をもってラインをコントロールし(積極的に押し上げて)、中盤守備をサポートする・・、「予測」をベースに、勝負局面では「自分主体」でブレイクし(ラインを崩し)、守備の勝負へ向かう・・。そこでは、下がってタテパスを受けようとする相手トップ選手や、ライン周辺でパスを受けようとする相手に対するアタック、決定的スペースへフリーランニングしようとする相手に対するマーク(インターセプト狙いが発想の原点!)、そして(ブレイク後の)ボールがないところでの忠実マーク等など、状況に応じた「素早いアクション(判断・決断・実行)」が決定的に大事なファクターになります。それが・・

 一発ロングパスや、カウンターの状況は除き、組み立てて攻め上がる相手に対処するシチュエーションで、「ラインを維持すること」にこだわり過ぎ。それも、意思統一ができていないから、いつもラインが「デコボコ」になってしまいます。要は、今は「維持」、ここで「ブレイク」・・という、守備プレーに対するイメージを互いにシンクロ(同期)させようという意識が希薄すぎるのです。だから、(お互いに疑心暗鬼にかかってしまうことで!?)一人が後方や前方にに残ってしまうなど、ラインが「デコボコ」・・。これでは・・

 そんなですから、タイミングの良いスルーパスが出れば(出れば・・のハナシですよ、あくまでも・・)完璧に「ウラ取り(決定的スペースへパスを通される!)」されてしまう「状況」を何度も目撃してしまいました。

 また、「ボールサイドへの集中」にしても、そこからの、逆サイドや「ウラスペース」への勝負の展開を阻止できなければ全く意味がありません。にもかかわらず、ボールに対する「予測ベース」のプレッシャーが甘いことで、何度も、簡単に逆サイドへのサイドチェンジパスを決められてしまって・・。それも、完璧に「サイドチェンジ」だと分かっているのに、「ライン」は、サイドチェンジパスが出てから、「(デコボコの!?)一体」になって逆サイドへ移動するんですよ。完全な「ブレイク状況」であるにもかかわらず・・。もう何をかいわんや・・じゃありませんか。

 そんな状況こそ、守備ラインのリーダーが(私はリベロという表現は使いません・・これについては、今週号の「ヤフー・スポーツ・2002クラブ」を参照してください)、適切な判断で(要は、サイドチェンジパスが出される前のタイミングで)ブレイクして、危険ゾーンに急行しなければならないのです。

 とはいっても、「フラットフォー」は、本当に難しいんです。ベンゲル当時のグランパスだって、「あの」スーパー・リーダー、トーレスがいたにもかかわらず、浸透させるまでに半年もかかったんです(それまでザル守備で、失点を重ねていました・・ただ、95年のサントリーシリーズ後半からだったと思いますが、前半では最下位だった失点数が、急にトップに躍り出てしまったんです!!)。

 私は、現実的な「フラットラインの導入」は、どちらかといえば「スリー」の方が御しやすいと思っています。「スリー」だったら、もし機能しなくても、一人が「従来型のリベロ」になればいいんですからネ。

 とにかく、ちょっと・・いや、大変心配になった湯浅でした。

---------------

 とはいっても、後半、(攻守にわたって中途半端なプレーが目立ちに目立っていた!)アドリアーノに代わって田中達也が入ってから、やっとサッカーらしくなりました。田中の、攻守にわたる積極的なプレーによって、やっとレッズのサッカーがダイナミズムを発揮しだしたのです(また、田中が入ったことで、レッズの左サイドの守備もかなり安定しましたしネ)。

 田中がお膳立てした後半36分の決勝ゴールは秀逸でした。左サイドでボールをもった田中が、相手のプレッシャーなどものともせず、どんどんと中央へ向けドリブルします。もちろんそれは「動的なタメ」。二人を引きつけ、そして決定的スペースへ走り抜けるトゥットへ、絶妙のラストパスを送り込んだのです。そのパスは、ディフェンダーの正面に向かいます。そのことで、そのディフェンダーの足が止まります(視線と意識を釘付けにしてしまった!)。そしてその眼前を、赤い影がよぎった・・というわけです。それにしてもトゥットはスゴイ。レッズは大変な「戦力」を手に入れました。

 とにかくこの試合では、攻守ともに(特に、最終守備ラインと中盤守備ラインによる『有機的な連鎖プレー』に対して!)、大きな、本当に大きな課題が「明確」に見えていました。さて、チッタ監督は、リーグ開幕までの短い時間で、チームをどこまで仕上げられるのか・・お手並み拝見ではあります。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]