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吹っ切れた「ねばり強さ」で決勝へ駒を進めたセレッソに拍手!・・天皇杯準決勝・・セレッソ対レッズ(1-0)・・(2001年12月29日、土曜日)

本当に「良い選手だな〜、ユン・ジョンファンは・・」。試合中、何度そんなことを思ったモノか。セレッソの中盤に君臨する「ホンモノの王様」。攻守両面にわたる実効あるリーダー・・ってなところが適切な表現ですかネ。

 覚えていますか、今年のオールスターでの彼の活躍を・・。自分で書いたコラムを読み直してみたのですが、グラウンドでプレーする選手たちが、「今のグラウンド上のチーフは誰なのか・・」ということを一番よく分かっているということです。ウエストチームでは、とにかくユン・ジョンファンにボールが集まってくるんですよ。そして彼を中心に、ボールが軽快に動きつづけるだけではなく、周りも本当によく動く。チームメイトたちの彼に対する信頼の高さを実感させられたモノです。

 そのことは、もちろんセレッソでも同じ。彼がボールを持ったとき、または、次の瞬間にボールをもちそうな状況で、とにかく周りの選手たちがよく動くのです。大柴が、森島が、はたまた杉本や原が、脇目もふらずに「信頼ベースのフリーランニング」をくり返します。そしてその信頼に応えるように、ユン・ジョンファンから、素晴らしいパスが繰り出される・・。

 杉本が決めた決勝ゴールのシーンでも、味方からの横パスを受ける「前の段階」で、杉本がフリーになっていることを明確にイメージしていたに違いありません。トラップ&決定的パスの「リズム」には、レベルを超えた素早さがありました。その後も、大回りでファーポストスペースへ抜け出る大柴へ、これぞ才能!という、ロビングでのラストパスを通したりして・・。いや、素晴らしい。

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 それに対して、ユンと同じポジションで、攻守にわたって「自由にプレーしてよい・・」という立場にいるはずのレッズのアリソン。私は、本当にガッカリしてしまいました。

 たしかにアドリアーノと比べれば、最終勝負の起点としてリスクにチャレンジしますし(もちろんボールを持てばのハナシ!)、クリエイティブなプレーでチャンスの芽を作り出しはします。周りも、彼の才能を「一応は」信頼しているようです。また守備でも、非凡な能力を感じさせる場面もあります。それでも、総合的なパフォーマンスでは・・

 私は、彼がレッズに加入したときから、「ブッフヴァルトやペトロヴィッチのように、すぐにでも、これはスゴイと感じられるようなレベルの選手ではない・・、たしかに基本的な能力には高いモノがある・・、でも彼は、その能力が、チームにとって価値あるものだと、これから証明していかなければならない・・」と書いたことを覚えています。

 たしかに決定的な仕事をできるだけの能力は備えている・・、でも彼もまたマラドーナではない・・ということです。

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 二列目の彼は、ほとんどといっていいほど「パスを呼び込む動き」をしません。それでも、動かないからフリーになる・・という状況も多いわけで、そこでボールを持ったら、うまいキープ(タメ)からのスルーパスやドリブル等、まずまずのプレーをするんですよ。何本か、「これぞ才能!」というダイレクトパスや、ドリブルシュートも魅せましたし、ここしかない!という場面では、決定的フリーランニングもタイミング良くスタートします。

 それでも全体的にみたら、動かない彼が二列目ゾーンを占拠しつづけたことで、阿部や鈴木、はたまた両サイドバックは、「追い越しフリーランニング」を仕掛けにくかったに違いない・・というのが明確な印象です。要は、味方とのタテのポジションチェンジを意識するなど、攻撃の最終シーンでの「組織プレー主体の変化」を演出しようなんて、まったくイメージしていないということです。そして、個人の才能だけで「変化」をつけるプレーに終始する・・。

 また守備もおざなり。ボール奪取チャンスに直接参加するようなシーンでは、高いディフェンス能力も垣間見せるのですが、ボール奪取シーンに積極的に絡んでいこうとする姿勢自体が、まったく低調なんですよ。インターセプトを狙う感覚にはハイレベルなモノを感じはするんですがネ。

 特に、福田が入り、守備的ハーフに下がってからのプレー。ドタン、ドタンという鈍重な動きで、最前線、最後尾で繰り広げられるアクティブプレーゾーンの間に広がる「空白地帯」を行ったり来たりするだけ。「オイ! オマエのチームは負けているんだゾ! そこにいたって何も仕事ができないじゃないか! 前後のバランスを取っている・・!? そんなコトは言わせないぞ! 後ろの人数は合っているんだから、ガンガン押し上げなけりゃ、レッズが一人足りない状態でプレーしているのと同じじゃないか!」なんて、何度叫び出しそうになったことか。

 たしかに能力は高いし、「ボールを持てば」、良いプレーをする・・、でも、なるべく多くボールに触ろうとする能動的な仕掛け姿勢、周りの味方のタイナミズムを引き出そうという「リーダーシップ掌握姿勢」などは最低レベル。持てる能力を、常に100パーセント以上発揮しよう・・とするのがプロの基本的姿勢でなければならないのに・・。まして彼は、助っ人の外国人選手なんですヨ・・。若いというのは言い訳にはなりません。来日してからの数試合目が、彼のベストゲームだった!? フ〜〜

 彼はレッズに残るそうですが、基本的なプレー姿勢を正さなければ、チーム全体の「モラル問題」にまで発展してしまうかも・・。まあ、ピッタ監督の後任、ハンス・オフトの手腕に注目しましょうかネ。

 ということで、「これから10年間は日本でプレーしたい・・」と公言してはばからないアリソンの「変身プロセス」に、コーチとして大いなる興味を抱いている湯浅なのです。

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 あっと、ゲームについても書かなければ・・。

 試合は、両チームが交互にペースを握るという興味深い展開になります。まずレッズが攻め込み、次に、中盤での積極ディフェンスをベースに試合のペースを握るセレッソ。でも、上がり気味の中盤の「ウラ」を突いたレッズのカウンターが決まりだしたことで、セレッソの中盤ブロックが下がり気味になり、再びレッズが主導権を握る・・。後半も同じようなシーソー展開でした。

 それでも、全体的なチーム力では、やはりレッズの方が明らかに上。前半のアリソンのフリーヘディングシュート、永井のフリーシュート、後半にも完璧なフリーシュート場面が続出します。「偶然」も含め、何度レッズが、そんな決定的チャンスを得たことか。それでも決められない・・決まらない・・。

 そんな「チャンス潰し」を見ていて、攻撃の「質」を見れば、たしかにレッズの総合力の方がセレッソを上回っていることは明白だけれど、今日はダメかも・・なんて思っていました。もちろんそれは「感覚的」なモノなんですが、決まらないときは、本当に何をやっても、どんな決定的チャンスを作り出してもダメ・・なんていう日があるものなんですよ。もちろん、セレッソGK、下川のスーパーセーブも含めてネ・・。

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 もう一つの準決勝ゲームでは、やっと調子が上向きになってきたエスパルスが、乗りに乗っていたフロンターレに競り勝ちました。ということで、天皇杯の決勝カードは、エスパルス対セレッソ。

 伸び伸びと、積極的なダイナミックプレーを披露するセレッソが、総合力では分があるに違いないエスパルスに対してどのようなサッカーを展開するか・・。面白いゲームになるに違いありません。私は、ユン・ジョンファン、森島、大柴、戸田、森岡、澤登、バロン、三都主等に注目することにしましょうかネ。

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 湯浅は、12月31日、2300時から2600時まで、テレビ埼玉で放送される「浦和レッズ大討論会」に出席し、ちょっと寝てから、元旦の天皇杯決勝を、ラジオ文化放送で解説する予定。ご期待アレ・・

 




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