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ワールドユース選手権(1)・・ファウンデーションのボールの動きに明らかな差が・・日本代表vsオーストラリア代表(0-2)・・(2001年6月19日、火曜日)


ダイナミックな膠着状態・・。両チームともに、「まず」強い守備意識からゲームに入っていることを感じます。特に中盤。その「寄せ(プレス)」の早さ、堅実さ・・。まあ、若い世代ですから、そんな「戦術的な忠実さ」は当然のことなのですが、その忠実なディフェンスを崩していくだけの「アイデア」が、両チームともに欠けている・・

 双方、「プレーのリズムと展開」に変化がなく単調なのです。もちろん、全体的にはものすごくダイナミックでスピーディーな動きの連続なんですがネ・・。とにかく、ボールをもったら、すぐに「前への仕掛け」をつづける・・。だから、守備にとっては、「次の展開(プレーのリズム)が読みやすい」というわけです。

 相手がボールをもったら、常に「ここにくる!」と、明確に感じることができる・・、だから中盤での潰しあいになってしまう・・。

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 ただ後半になって、オーストラリアの、組み立てでのボールの動きに「変化」が見えはじめました。しゃにむに「前へ仕掛けていく」のではなく、前後左右にボールが動きはじめたのです。それに対し日本は、前半同様、ボールをもったら「前へ! 前へ!」。もちろんサイドチェンジやドリブルなど、「変化を演出しようという意図」は感じます。ただそれにしても、次の最終的な仕掛けを意識し「過ぎた」もの。だからオーストラリア守備ブロックも事前に「守備の網」を張ってしまう・・

 ボールを奪い返したら、なるべく時間をかけずに相手ゴール前へ迫る・・。その意図は分かりますし、もちろん意図としては正解です。ただ、オーストラリア守備ブロックは、自チームの攻撃でも、ブロックバランスを崩さずにまとまっていますから、「直線的」に突っかけていくのではなく、もっと「変化」を演出することの方が重要だと感じました。日本のダイナミックな仕掛けには、本当に迫力を感じるのですが、それが「単調」だから、受ける方にとっては逆に守りやすい・・ということです。

 フリーな選手はもっと「落ち着いたボールキープ」をしてもいいし、一度「ショート&ショート」のパスをつないで「息抜き」をしてもいい・・、とにかくもっと、『ファウンデーションのボールの動き』を演出しなければ・・。そしてたまにはロングシュートなんかにもトライしてみる。それがなければ、変化を作り出すことで相手の「発想のウラ」を突くことはできません。サッカーは「だまし合い」のボールゲームですからネ。

 そのためには、ボールのないところでの動きが大事になります。もちろん日本の選手たちはしっかりと、また爆発的なフリーランニングを繰り返します。ただそれは「最終の仕掛けを意図した」ものばかり。中盤での「アクティブなボールの動き」をイメージしたボールのないところでの動きがあまり見られないのです。

 その意味では、オーストラリアのボールの動きの方が、より洗練されていると感じました。特に後半は、その傾向が顕著になります。どんどんと前へ(猪突猛進に!?)突っかけていく日本チーム。それに対し、縦横に「素早く、広く、長短おり混ぜた」ボールの展開を見せつづけるオーストラリア。

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 そして後半14分、オーストラリアが、「落ち着いた」左右へのボールの動き(最終の仕掛けに入っていく前の、ファウンデーションの展開!)から、先制ゴールを奪ってしまいます。まず左サイドで、ドリブル、バックパス、横パスなどでボールを動かし、今度は、右サイドへボールを展開します。ただそこで勝負を仕掛けるのではなく、また中央へ「戻り気味」のパスを出すのです。最後は、右サイド後方から送り込まれたラストスルーパスを、羽田が、クリアキックをミスし、そのボールが直接日本ゴールへ飛び込んでしまいます。自殺点・・

 このシーンでは、しっかりとしたラインを作っていた(自分の背後の相手トップ選手をしっかりとイメージしていた)羽田の「眼前のスペース」へラストパスが送り込まれます(まあ、コース的にはオーストラリア選手のミスパス!)。完全に羽田のボール・・。ただ、それが逆に不運なミスキックにつながってしまう・・。それもサッカーです。

 ただ後半25分に飛び出した、オーストラリア追加ゴールのシーンでは、日本の守備ブロックは完全に振り回されてしまいました。

 まず右サイドの後方から、中央を経由して左サイドへボールを「動かす」オーストラリア。そこでオーストラリアのボールホルダーは、日本の守備ブロックが安定したバランスをとっていたこと、また後方からプレッシャーをかけられたことで、一度切り返してキープし、落ち着きます。

 そこからの展開が秀逸。スッと、中央の「狭いスペース」へ移動した味方へショートパスが送られます。そこへ寄ってくる日本の守備的ハーフ(森崎だったでしょうか)。その動きを察知していたかのように、ダイレクトで、「ショート」の横パスを出すオーストラリア選手。そこから、ダイレクトでトップ選手へボール出し、それが、またまたダイレクトで、バックパスされ、そこから今度は、右サイドをフリーで上がってきていた右サイドバックへ(これまたダイレクトで!)ボールが動かされる。フ〜〜

 この瞬間、日本の中盤選手たちは、完全にボールウォッチャーになってしまい、誰一人として最終ラインへ戻る動きをみせませんでした。そして右サイドで、完璧にフリーでボールを持ったオーストラリアのサイドバックが、ワントラップから、逆のファーポストへ走り込んだ『二人の』オーストラリア選手へ、「一山越える」センタリングを送り込んだのです。この場面で、日本の「ファーサイド」では、完璧な「1対2」の状況が(日本にとっての数的不利な状況が)演出されてしまって・・。まあ、これだけ「左右」にボールを動かされたらネ・・

 正確なセンタリングでした。たぶん、そのオーストラリア選手は、直接ヘディングシュートも打てたでしょう。でも彼は、直接ヘディングシュートを放つのではなく、日本の最終ライン全員がゴール方向へ動いてしまったことで(全員がボールウォッチャーになってしまったことで!)、後方でまったくフリーになった味方へ、正確に「ラストバックパス」を返したのです。

 その「キーポイント」になったフリーのオーストラリア選手は、最前線のポジションから、センタリングが上げられるときには、少し後方へポジションを移動していました。たぶん、「ヘディングでの折り返し」に対する明確なイメージがあったのでしょう。そんな「勝負所のクリエイティブな動き」に対し、まったく反応できず、ただ見守るだけの日本の中盤選手たち・・。フム・・

 そして、ワントラップし、落ち着いて日本ゴールへボールを流し込むオーストラリア。いや、素晴らしいゴールではありました。

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 日本の次の相手は、アフリカチャンピオンのアンゴラ。引きつづき、厳しい試合になるでしょう。

 ボールを奪い返した直後の、素早く相手ゴールへ迫るという「共通イメージ」をベースにした仕掛けは、もちろんオーケーです。でももし相手守備ブロックが整っていたら、最終の仕掛けに入っていく前段階では、もう少し「落ち着いて」ボールを動かせれば、日本代表攻撃陣の「個人的な才能」を、より有効に活かすことができる・・。その「ファウンデーションのボールの動き」を演出するために、しっかりと周りが動く・・(もちろんボールホルダーもそのことをしっかりとイメージしながら、冷静にボールをキープする!)。そんな「落ち着き(攻撃での変化)」さえ演出することができれば、彼らのサッカーは、もう一つ、レベルアップするに違いありません。

 とにかく「冷静に燃えて」ガンバレ、我らが若武者たち!




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